木緒なち作品の書評/レビュー

16:00の召喚魔法 (2)

選択と決断
評価:☆☆☆☆★
 澤村ヒロキは現世界(インフラヴァース)から異世界(スープラヴァース)へと召喚され、討伐軍(ビニュティブズ)第三群アリサ・ファルス大佐の魔法(アルス)の魔力(ウィプス)源となることでヴィクティマ(魔塵)を倒し、英雄となった。
 幼馴染の大嶋サイカが待つ現世界(インフラヴァース)と異世界(スープラヴァース)を行ったり来たりする澤村ヒロキは、第三群総監ミラ・レイドシューク中将からセクハラを受けながらも、アリサの研究に協力する日々を送っていた。

 そんなヒロキとアリサの前に、戦災孤児となった幼女エイミを連れた兵士ウェイクが現れる。しばらくの間、エイミを預かることになった二人は、家族のような生活を送り、癒やされる。
 一方、ヒロキを敵視する第二群総監リチャード・セルギア大将は、最近のヴィクティマの動きに疑問を持っていた。そこで、犬猿の仲のはずのミラからクオン・アズガルド大尉を借り受け、調査を行う。

 自体の黒幕であるカイル・ヴァニスターの存在が明らかになり、ヒロキは選択と決断を連続して迫られる事になる。

16:00の召喚魔法 (1)

スマホで呼ばれる救世主
評価:☆☆☆☆★
 中学の頃に何となく野球も辞め、無気力に日々を過ごしている澤村ヒロキは、一人暮らしの家で、幼なじみの大嶋サイカとその家族に気遣われ暮していた。
 そんなある日、スマホに届いたメールからアプリをダウンロードした途端、インフラヴァースから異世界スープラヴァースに召喚された。そして、ヴィクティマ(魔塵)という怪物に襲われている召喚者のアリサ・ファルスを、その師匠であるミラ・レイドシュークの指導の下に助け出す。彼は膨大な魔力(ウィプス)をその身に湛えていたのだ。

 しかし、彼自身が魔法(アルス)を使える訳ではなく、アリサには魔力(ウィプス)がない。互いの短所を補い合うことによって、救世主としての立場になることが出来る。そして研究熱心であるアリサは、ヒロキと接触しながら、彼の秘密を探るのだった。

 インフラヴァースでは幼なじみとのラブコメ、スープラヴァースでは異世界ファンタジーと、舞台を変えて異なる要素を融合させる構成となっている。

妹は僕に手を出すなっ! (3)

またもうひとり
評価:☆☆☆★★
 藤本晶、シズカ・ルビンシュテインという二人の妹、従妹の藤本梓菜から愛をささやかれる高校生の藤本孝美は、何とかそれから逃げ切り、普通の家族としての関係を取り戻したいと考えていた。
 そんな彼の前に、中学一年生から高校三年生に飛び級したエルザ・ロックハートという少女が現れる。あまり藤本孝美とは関わりたくなさそうにしていたエルザ・ロックハートだったが、藤本孝美が得意のお人好しぶりを発揮すると、次第に態度を和らげてくるようになるのだった。

 そして全てが出そろったかと思えたとき、友人の千林都子がとんでもない行動に出てくる。

 シリーズ最終巻。打ち切りだけど、頑張ってまとめました。

妹は僕に手を出すなっ! (2)

新キャラに吹き飛ばされる
評価:☆☆☆☆★
 メイドのサディナ・ハーランを連れて妹のシズカ・ルビンシュテインが帰還したことで、もう一人の妹である藤本晶も、藤本孝美への好意をむき出しにしてくるようになった。毎朝、競い合うように起こしに来る二人は、いかに孝美に間違いを起こさせるかを望んでいるようにしか見えない。
 夏休みに入っても、古書店を営む藤本家にお休みはない。夜になって店を閉めてから、千林都子や野沢葉月、加治木章一も一緒に夏祭りに行ってはみたものの、またもや晶とシズカはバトルになってしまい、満足に楽しめない。そんなある日、実家から新幹線のチケットと共に、奈良に帰省するようにとの手紙が届く。

 3人で奈良に向かうことになるのだったが、そこには孝美を慕う従妹の藤本梓菜が待っていた。

 新キャラである藤本梓菜が全てを持って行ってしまうのが今回の展開であり、前巻で色々争って積み上げてきたものなんて、一瞬で吹き飛ばされてしまうんだなあ、とむなしくなってしまう。いや、積み上げていなかったからあっさりとひっくり返されたのかもしれない。
 次巻も新キャラ登場で、旧キャラはどんどん影が薄くなる運命にあるようだ。

妹は僕に手を出すなっ!

義妹系シチュエーションラブコメ
評価:☆☆☆☆★
 幼少の頃、父親の再婚により双子の妹が出来た藤本孝美は、その後、父親が離婚して、義妹のひとりであるシズカ・ルビンシュテインは母親について家を出て行き、父親が亡くなったことで、もう一人の義妹の藤本晶とふたり、古書店を切り盛りしていた。
 しかしいつの頃からか、晶は孝美を避けるようになり、家でも外でもほとんど口をきかない、形だけの家族になってしまった。

 そんなある日、シズカがメイドのサディナ・ハーランを連れて家へと舞い戻り、孝美に結婚を迫ってきた。晶は静の攻勢を歯がゆく思いつつも、孝美に素直になれず、ストレスをため込むばかり。
 孝美の幼なじみである千林都子は事態が混迷していくのを喜び、孝美のことが好きな後輩の野沢葉月はただ見ているしか出来ず、友人の加治木章一は、渦中にある孝美のことを遠巻きに心配しているのだった。

 二人で暮らしているという事実に対する安心感ゆえに兄に冷たく当たっていた義妹が、兄に積極アプローチするもう一人の義妹の登場で焦りだし、互いに競い合うように、兄を誘惑していくというシチュエーションラブコメだ。
 要するに、簡単な設定とフェチズムを刺激する状況で、同じようなエピソードの繰り返しをすることで読者の興味を引こうという、物語的には何の意味もないのだけれど娯楽的には価値のある作品と言えよう。ライトノベルというジャンルの、特定の層にただ売るためだけという方向性への変質が見える気がする。

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