木崎咲季作品の書評/レビュー

天上の音楽

幻想の姉弟
評価:☆☆☆☆★
 元ピアニストの母親を亡くした秋月上総は、母親が亡くなってから三年過ぎて、父親の森川一馬に引き取られることになった。父親は有名な音楽評論家で、一流ピアニストを輩出している音楽教室を経営しており、姉の森川天音と暮らしていた。
 だが、引き取った父親は、社員の三上を通じてしかコミュニケーションを取って来ず、天音も上総を無視するばかり。居場所がない事は分かっていたものの、パーフェクト家政婦の滝さんが家事を済ませてしまうため、本当にやることがない。

 本当にこのまま、家庭内他人のような生活が続くと思っていたのだが、その壁は小さな部分から少しずつ崩れ始める。そして一度穴があいてしまえば、それはたちまち広がり、家族のつながりが取り戻されていくのだった。

 登場人物の多くはクラシック音楽に関わっているのだが、特にクラシック音楽にスポットライトが当たるわけではない。別にそれは何でもよくて、血のつながった家族が十三年ぶりに共に暮らすようになるという状況にスポットがあてられるのだ。
 でも、一緒に暮らして来た姉弟では、こんな関係にはまずならないだろうな。

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