木村百草作品の書評/レビュー

恋に変する魔改上書(オーバーライド)

外的要因により強制されるハーレム
評価:☆☆★★★
 高校に入学した浅間莉子は、BL寄りの文芸部で見つけた薄い本「ラブコメの魔」を手にしてから、幼馴染の山伏諒太を主人公とするハーレムラブコメを執筆するようになった。するとなぜか、現実の山伏諒太の周りにも、幼巨乳の赤城瑠流や、クール美人の榛名響華、天然ボケ委員長の妙義水菜という美少女が集まるようになり、執筆した通りのイベントが起きるようになってしまった。それどころか、浅間莉子自身も山伏諒太に対して変な行動を取るようになってしまう。
 彼女が手に入れた「ラブコメの魔」の化身であるラブ子により、望まずに現実をラブコメに改変してしまう能力を手に入れた浅間莉子はそれを抑えようとするのだが、ラブコメをはき違えているラブ子によって、山伏諒太の周囲は混とんさを増していく。

 だが何とか現実を取り戻したのもつかの間、強制されていた間の記憶が染みつき、実際にラブコメを繰り広げるようになった山伏諒太と3人の美少女は、自分たちの居場所を確保するために生徒会長の三条実由紀が率いる演劇部と、ラブコメ演劇勝負をすることになってしまうのだった。

 イラストのキャラクターデザインが「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(渡航)」と似過ぎているように感じて心配になる。
 ハーレム系ラブコメなのだが、主人公は傍観者的立場にいるつもりの第4のヒロイン候補というところが少しだけひねられている。基本的に一人称の視点で物語が展開されることもあり、文章が独りよがりに感じられる部分も多い。また、今後の展開として、真の主人公がハーレムの中に取り込まれた途端、新味が無くなってしまう構造でもあるので、さらなる工夫が求められることになるだろう。

 第7回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品だ。

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