黒狐尾花作品の書評/レビュー

学園陰陽師 安倍春明、高校生。 陰陽師、はじめました。

評価:☆☆☆☆★


逢魔ヶ時あやいと倶楽部―召喚少女の守護人形

持つ者の光と影
評価:☆☆☆☆★
 中学一年生の柴榊銘と小学三年生の柴榊轟の姉弟の父である柴榊甚也は、十年前に失踪した。いまは母の樹と三人で暮らす彼らだが、特に姉の銘は、ある理由で他人と関わらない様に過ごしていた。その理由とは、感情が高ぶると勝手に妖怪を召喚してしまう体質なのだ。そして弟は、その姉を妖怪から守るべく、自己流で様々な術を習得している。
 ある日、二人が家に帰るとそこに母の樹の姿はなく、代わりに、母方の祖父だという左弧五朗と、その従者である猿飛佐助が待っていた。そして、母は彼らの身柄を預けて旅に出たという。もはや頼る相手もなく、抵抗する術もなく左本家の屋敷に連れて行かれ、使用人の道成寺清花に着替えさせられて生活を始めた銘だったが、その屋敷の工房地下で、杜人形と呼ばれる存在と出会う。そして彼女の持っていた鏡によって動く様になったそれは、自らを武蔵坊弁慶と名乗り、銘に抱きついて来たのだ!

 幼稚園の頃から、自分の体質のせいで周囲の人間を傷つけてしまった銘は、大切な人を傷つけないために近づかないという二律背反な思いを抱え続けて生きており、容易に他人に心を開かない。しかし、外からの力によって自身の運命を変えられた銘は、私立三桃学園に転入し、そこに通う特殊な人々と、そして、ロリコン気味ながらも銘を守ることだけを考えている杜人形の弁慶に、心を救われていく。
 挿絵のとても妖艶な女性が中学一年生というのは、実際にいたら詐欺かもしれん。ちょっと昭和っぽい雰囲気で繰り広げられる学園バトルもの、かつ、純愛っぽい青春ものといった感じだ。
 おそらく、真面目に平安ものを描いた前作「平安鬼姫草紙」の売れ行きが微妙だったから、ちょっとショタロリ要素を入れてコスプレなぞさせてみたのかもしれないが、かと言ってそういう層を満足させるレベルには達していないと思われ、若干、どの層に訴求するのかが分かりにくくなった気はしなくもない。

 しかし、望まない能力を持った者の悲哀を、その力に流されるものと潰されるもの、憧れるものという多面的な側面から描きつつ、次巻以降の学園ものへとまとめた手腕は認められて良いと思う。次巻以降の展開によっては、アニメ化に向いているかもしれない。

平安鬼姫草紙 神ながら神さびせすと

届かぬ想いの果てに
評価:☆☆☆☆☆
 平安時代、円融天皇の御代。安倍晴明や源頼光と四天王なども登場する。そんな彼らに庇護されている坂上鈴城と源頼親は、鈴城の従妹、結鹿に着せられた汚名を晴らすため、都に出没する姫殺しという妖を退治しようとする。結鹿は鈴鹿御前の血を色濃く引いており、鬼姫とも呼ばれる力を持っているのだ。
 一度は姫殺しの水蜘蛛を見つけたものの、その力に圧倒され破れた3人は探索の一線から外れる。しかし、とある縁が結ばれ、再び姫殺しとまみえることになるのだった。そして、姫殺しに隠された許されざる愛の物語を知る。

 この物語で登場する人物たちは、代々続く神の力を引いていたり、鬼や霊狐、水神などと人が交わった結果として生まれた人たちであることが多い。本来なら交わることのないものたちが友好的に交わった結果でもある。
 しかし全てが円満に終わる想いばかりではない。相手に伝わらないこともあれば、伝わったとしても受け入れられないこともある。そこで行き場をなくした想いはどうすれば良いのか。姫殺しのものたちは、その無理を押し通そうとしてしまったものたちでもあろう。

 主人公格は少年少女たちなのだけれど、その保護者的立ち位置の青年たちが多く、どこか妖艶で幽かに耽美な雰囲気のある物語という気がする。数多く登場する保護者たちの特徴や役割分担が描き分けられればもっと良いと思う。
 個人的にこういうお話は好きなので、ぜひ続編を出して欲しい。

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