黒羽朽葉作品の書評/レビュー

魔王と勇者の兄妹カンケイ

日常を愛する超人
評価:☆☆☆☆★
 天木啓は統永学院で甲子園を目指す高校二年生だ。今年から妹の天木杏梨花が入学してくると言うことで、兄妹そろって充実した高校生活を過ごすべく気合いを入れている。天木啓はひどく日常にこだわる。なぜなら、中学時代、彼は不良たちから魔王と呼ばれ、絶えずケンカをふっかけられるものの撃退し、妹も含めて周囲から腫れ物に触れる様な扱いを受けてきたからだ。
 今度こそ、平穏な日常を妹と満喫しよう。そう思っている天木啓と同じクラスになった折原銘子は、最初の自己紹介で世界が魔王アギユレオムに滅ぼされようとしている危機を訴える。そして野球に一身に打ち込んでいる天木啓に、世界の真実を知らないものに対する哀れみを込めながら、まもなく彼に運命の出会いが訪れると告げるのだった。

 人格的には問題があると思いつつも、彼女が校内で恋占いの名手として評判を集めていることを知った天木啓は、女子高生の日常ならば恋だろうと言うことで、天木杏梨花に占ってもらいに行くよう説得する。そして自宅に戻って夕飯の支度をしようとする天木啓は、その帰り道に、不良に魔獣をけしかけている宗久雫に遭遇するのだった。
 至律神アギユレオムによる人類の滅亡を語る宗久雫との再会を約束しつつ、自宅に戻った天木啓は、天木杏梨花から、占いで彼女が勇者と出たと教えられるのだった。

 生徒会長の伊部さつきや持田謙也ら《導かれし者》が《灰の魔女》と呼ぶ宗久雫と非日常のバトルを繰り広げようとするところを、日常を愛する天木啓が妹を巻き込まないように日常的解決を求める話だ。ただ彼の日常はちょっと暴力的。
 描きたいことは何となく分かるのだけれど、構成がいまひとつ整理されておらず、少し分かりにくい。そこがドタバタ感を演出しているという好意的な見方も出来るかも知れないが、非日常キャラたちの前後の落差を見せつけるような構成にするなど、メリハリの利いた演出を求めたいところだ。

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