小岩井蓮二作品の書評/レビュー

キミはぼっちじゃない! (3)

お約束のしっぺ返し?
評価:☆☆☆☆★
 平行世界からやって来た幼女のリリィを育てることになった稲葉悠大と幼なじみの日向しおりは、リリィがもつ改変能力により正式な夫婦となり、リリィを助けに平行世界からやって来たエレナは、悠大の妹となってしまった。
 初めは形の上だけの家族ごっこだったはずが、稲葉悠大は日向しおりに対する気持ちを自覚してしまい、最近はなんだか真っ直ぐに彼女の目を見れない。

 そんな時、リリィが改変で高校生に成長するという事件が起きてしまう。しかし中身は5歳の精神のままなので、悠大はこれまでどおり娘として接するのだが、それを見たしおりは、リリィに嫉妬してしまう。
 そしてその状況をさらに複雑にするように、百瀬ほのかから、学校で成長したリリィにそっくりの幽霊が出没しているという情報がもたらされる。

 ラブコメでは幼馴染かませ犬説というのがあり、なぜか後から出てきたヒロインに主人公を奪われてしまうのが幼なじみの定番だった。ところがこの作品では、初めから幼なじみルートしか存在していない。その弊害と言うわけでもないだろうが…打ち切りです。
 そんなわけで、おそらく本来描いていたゴールまではたどり着けなかったと思われ、なにやら中途半端なエンディングを迎えている感がないでもない。最後のサービスのごとく、水着はいっぱい出てきます。

キミはぼっちじゃない! (2)

近すぎて気づかない気持ち
評価:☆☆☆☆★
 並行世界から流れて来た5歳くらいの幼女・リリィを、両親が迎えに来るまで預かることになった高校生の稲葉悠大とその幼なじみの日向しおりは、リリィが持つという世界改変能力で、役所に届も出された夫婦となっていた。リリィと同じく並行世界から来たエレナも同居させ、彼らは疑似家族を形成していく。
 そんなある日、リリィが突然、自転車を欲しいと言い出した。しかし普通の高校生に簡単に自転車を買ってあげられるほどの蓄えがあるはずもない。それと前後して、ファミレスでバイトをしていたエレナが火傷でバイトを休まなければならなくなってしまう。

 結局、悠大としおりがエレナの代わりにバイトをして、自転車を買うお金を稼ごうということになるのだが、そのファミレスは、コスプレデーもあるファミレスだった!
 普段とは違う衣装を着て、他の男に気を取られているように見えるしおりを見て、何かもやもやしたものを感じる悠大は、同じ学校の百瀬ほのかに相談して罵られてしまう。

 幼なじみの少女ととても友好な関係を築いている少年が、遅ればせながら自分の本当の気持ちに気づいていく過程を描く。周囲の人間はそんなことはとっくに分かっているので、目の前でお預けを食っている様な、微妙な気分を味わうのだ。
 リリィというファンタジックな存在を核に置きつつ、しかし繰り広げられるのは幼なじみをメインヒロインとするラブコメであり、他の相手に目もくれない真っ直ぐな青春ものとなっている。

キミはぼっちじゃない!

知らない間に子供がいたよ
評価:☆☆☆☆★
 高校生の稲葉悠大と幼なじみの日向しおりは、迷子になっていた5歳くらいの幼女・リリィを拾った。リリィの両親を探し回り、最終的には交番に届けて終わったと思ったのだが、その夜、その女性警察官はリリィを悠大の家に連れて来て言った。自分の子供を迷子として届けるなんて親の自覚がない!、と。
 気づけば両親はもちろん、近所の住民までリリィは悠大としおりの子どもだと思っているし、役所にはきちんと二人が夫婦だという届けが出されている。しかし、中途半端なことに、友人たちにはその認識がないので、クラスメイトの鈴木吾郎や百瀬ほのかからは、ロリコン疑惑をかけられる始末。それに、悠大の周囲には、エレナという少女ストーカーが現れ、ずっと彼らのことを監視している。一体何がどうなっているんだ?

 子はかすがいなどと昔から申しますが、突然、人との付き合いが疎遠気味な高校生の前に現れた子どものおかげで、これまでおざなりにしていた人間関係がきちんとつなぎ直されるという青春もの。ラブコメというには悠大が自然にリア充過ぎる。
 この作品の特徴は、人間関係が周囲から先に固められてしまい、その結果として、元々あった自分の思いに気づいていくという、逆順でのつながりが描かれるところだろう。それを実現するため、すこしふしぎな設定と、その体現である幼女リリィが登場する訳だ。

 逆に言えば、すこしふしぎな設定は、本質的には必要ないはずでもある。しかしこれがなければ、初めに関係を無理矢理に固めるということができない。そうすれば、現実によくある様に、何となく気にかけたまま、時間が彼らの関係を疎遠にしていったはずで、必要のないものが必要になるという構図がちょっと面白い。
 子どもが子どもを育てるという展開自体は、「ママは小学4年生」など、ずっと昔からよくあるパターンなので、そこだけに終始しない独自性のある展開になってくれると嬉しいのだが…。

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