虎走かける作品の書評/レビュー

ゼロから始める魔法の書 IV 黒竜島の魔姫

生活に根付いた魔法
評価:☆☆☆☆★
 ゼロの書の写本をばらまいた不完全なる数字(セストゥム)を追って船に乗ったゼロと虎の獣堕ちの傭兵は、嵐に巻き込まれ竜に襲われた挙句、竜の棲む島に投げ出されてしまう。ゼロを助けて上陸したはずの傭兵だったが、目が覚めると牢に拘束されていた。
 狩猟と収穫の章の二つの魔法が普及した黒竜島を統治するノーディスのアムニル王女の下僕になるという条件で牢から出してもらった傭兵は、魔法兵団長ゴーダに食って掛かるゼロと合流し、地位を回復する。馬の獣堕ちであるラウルと仲良くなる傭兵だったが、この島は竜によって封鎖されており、脱出は不可能だった。

 そして国中に漂う、どこか不穏な空気。その矛先は王女へと向かっている気がする。その理由とは?そして二人は写本を奪還し、島を脱出することが出来るのか?

ゼロから始める魔法の書 (3) アクディオスの聖女 下

間に合わない現実
評価:☆☆☆☆☆
 聖女暗殺容疑をかけられ、神父と共に殺されかけた傭兵とゼロは、辛くも生き残った。瀕死の神父を救うため、聖女の手の及ばない、反聖女の盗賊団の本拠地へと向かい、彼らのリーダーである鷹の獣堕ちのカルと出会う。彼は、かつて孤児院でフェーリアを助けていた人物だった。
 境界による聖女認定を防ぎ、今回の事態の黒幕を暴き出し、出来ることなら聖女を助けるため、再び聖都アクディオス潜入を試みるのだが…。

ゼロから始める魔法の書 (2) アクディオスの聖女 上

ドジっ娘聖女
評価:☆☆☆☆★
 散逸した魔法指南書「ゼロの書」を回収するために旅に出た魔女ゼロと獣堕ちの傭兵は、盗賊に襲撃されている女性を助ける。彼女はクレイオン共和国の塩湖に浮かぶ聖都アクディオスで聖女と呼ばれているフェーリアだった。
 ドジっ娘聖女に気に入られた傭兵は彼女を治療先へ送り届けるため一緒に旅をすることになるのだが、聖女の真贋を判断するデア・イグニスの裁定官である盲目の神父に嫌われ、放っておかれるゼロは拗ねてしまう。旅路で拾った少年ティーオから叱咤されながら旅をする傭兵だったが、彼はやがて知りたくない事実を知ることになる。それは聖女の癒し手の真相だった。

ゼロから始める魔法の書

革新的技術が生む不幸
評価:☆☆☆☆★
 魔術の影響により半人半獣として生まれ傭兵となるしかなかった男は、魔術師から首を狙われている最中に、ゼロという美少女の姿をした魔術師に出会う。彼女と、人間の姿に戻してもらう代わりに探し物を手伝うという契約を結んだ傭兵は、その探し物である「ゼロの書」を探しに出かけたという十三番なる人物を追いかけることにする。
 「ゼロの書」とは未だ世界に存在しない魔法の使い方を説いた書物だ。これまでは膨大な手順を踏んで魔族を召喚して使用していた魔術を、魔族の召喚なしに容易に使えるようにした技法が魔法だ。この魔法技術が流出したことにより、ウェニアスには魔女狩りに対抗して一般人を虐殺するゼロの魔術師団がはびこり、治安の悪化を招いていたのだ。

 そんな旅の途中、ゼロと傭兵はアルバスという魔術師見習いに遭遇する。アルバスは魔女狩りの最初の犠牲となった詠月の魔女ソーレナの冤罪を説くのだった。

 世界観の構築とストーリーテリングの技術は高いように感じるが、あくまでテクニックの範囲にとどまっているように感じる。つまり、伸び代は小さいのではないだろうか?第20回電撃小説大賞大賞受賞作品だ。

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