製鉄天使(桜庭一樹)の書評/レビュー


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関連作品の書評/レビュー
赤朽葉家の伝説 製鉄天使

製鉄天使

あなたのえいえんの国はどこにある?
評価:☆☆☆☆☆
 「赤朽葉家の伝説」のスピンアウトらしいのだけれど、登場人物の名前が変わっているのはなぜだろう?70年代後半から80年代前半、赤緑豆小豆が中学校に入学し、製鉄天使というグループを立ち上げて四国地方を制圧していく歴史をひも解きながら、少女の変化と成長を、周囲の変化と対比させながら描いている。

 中学生高校生の間にだけ存在する世界に生きながら、そこから出る時の選択にはいくつかタイプがあった様に思う。最後まで役をこなし、大人の世界でも同様の組織にエスカレーションしていった者。あるとき役から覚めてしまって別の道を選択した者。中学生までで引退しながらも、完全燃焼しきれず中途半端に引き戻されてしまった者。そして小豆たちがした選択。
 中国地方を"せかい"と呼び、子供だけに見える世界といいながら大人の世界を模倣し、ある年齢になれば普通の大人になってしまう。自由を叫んで生きながら、最終的には平凡な大人になってしまうのかなあ、と思って読んでいたので、最後の結末はボクとしては希望の持てる展開でよかったと思う。

 章末ごとに謎めいた語り部と聞き手の会話があり、最後にはその正体が明かされるのだが、本当にそれが正しい語り部なのかは作中の記述から考えて疑問が残る。その辺はミステリー的と言えなくもなく、赤朽葉家の伝説のスピンアウト作品としての証明になるのかもしれない。

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