雑賀礼史作品の書評/レビュー

ルースターズ (2) トロンプ・ルイユと幻獣の歌姫

勘違いと偶然が物語の燃料
評価:☆☆☆☆☆
 殺し屋ジャン・デュパンにとりつかれたところを、怪盗ジェスター・ザ・ルースターに助けられた田舎紳士の画学生レミー・ボガートは、《アルフライラの秘宝》の《銀の指》という魔法銃をその身に宿すことになった。
 そんなとき、妹のような存在であるアデライード・ヴィドックが大富豪セザール・ロッシュオーからの招待状を持ってくる。それは、ジェスターと女盗賊ミリアム・リッチーが狙う秘宝・天使の卵を展示するパーティの招待状だった。

 魔法使いのジェスターは、競争相手であるはずのミリアムに懸想し、彼女を追いかけたところで、とてつもない実力の武術家であるガンプと名乗る大男と対戦し、怪我をしてしまう。
 一方、隣人のメルセデス・レイが落としたマッチに導かれ、キャバレー・ソムニウムにて、ミリアム・リッチーと対峙することになるのだった。

 しかし、レミー・ボガートの《銀の指》は、ほとんど創造に近いものがある魔法じゃないだろうか。単純にぶっ放す銃よりも、遥かに応用範囲が広いように見える。
 そして、ミリアム・リッチーはヒロインのような要素も備えつつ、ちょっと抜けた悪役というポジションで、何をやらせても大丈夫なリアクション芸人ぽい役回りをさせられそうな気がする。

ルースターズ (1) 魔法銃とアルフライラの秘宝

怪盗×紳士×魔法
評価:☆☆☆☆★
 十九世紀、アルビオン・ハートフォード領主の次男であるレミー・ボガートは、画学生として留学中のパリで人助けをし、助けた人物ジャン・デュパンに《悪霊》として乗り移られてしまう。そんなお人好しの彼を助けたのは、ジェスター・ザ・ルースターを名乗る青年だった。
 ジェスターは、ボガードが宿したものの正体が《アルフライラの秘宝》の《銀の指》という魔法銃であることを教える。四百年ほど前にパリの場所にあったことになっているガルリア王国ルテシアに端を発する遺物が《アルフライラの秘宝》なのだ。

 何とか下宿先に生還できたボガードは、大家の養女にして妹の様な存在のアデライード・ヴィドックと再会することが出来た。彼女を連れてパリの街をそぞろ歩いたボガードは、評判の占いの館にいた《星詠み(アストルジュ)》の少年と、そこに来ていた隣人のメルセデス・レイと出会う。
 そして立ち寄ったデパートで、芸術アカデミー学会員ラウール・グルトンの知己を得ることになった二人は、大富豪セザール・ロッシュオーの博物展で、その若妻ベルタ・リュリと出会うのだった。

 《魂の光冠(オーリオール)》の結晶である《ヘイロウ・コイン》を《バンディット・ギア》で魔法に変換する怪盗のジェスター・ザ・ルースターと、田舎紳士にして画学生のレミー・ボガーが得た魔法銃がどんな物語を生みだすのか?そしてそれは、スカラムーシュ男爵令息ルバートとアスプリン公爵令嬢シャルロットの物語にどんな結末をもたらすのか?
 新エネルギー《テトラクオーツ》を用いて作られる機関《テトラドライブ》という魔法とも科学とも異なる技術体系も匂わされ、近代欧州を舞台としたファンタジー志向の作品ではあるのだが、設定が豊富すぎて一巻ではまだまだ全体像が見えてはこない。息長く見守りたい作品だ。

召喚教師リアルバウトハイスクール (19)

壮大な家族の物語
評価:☆☆☆☆☆
 SF世界に飛んだり、「龍炎使いの牙」とクロスオーバーしたり、様々な世界を渡り歩いて得られた真実は、実はこれは家族の物語だったのだな、ということだった。
 どんな魔法でも取り戻せないものはあるけれど、得た経験は失われることがないし、無くした代わりに得られるものもある。600ページ近くもかけて語られたのは、そういうことだったと思う。

 結末はある意味先送りかもしれないけれど、その顛末は別に譲るとして、とにかくハッピーエンドとしておめでとう。

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召喚教師リアルバウトハイスクール (18)

収拾がつくのかというくらいの広がり方
評価:☆☆☆★★
 表紙が表紙なので最終巻かと思ったのだけれど、もう一冊あるらしい。確かに、表紙を良く見ると、南雲慶一郎がいない。
 肝心の物語はというと、ただでさえカオスになっていた大門高校の文化祭が、魔王降臨により、さらに断片化されたエピソードの連なりになり果てた感がある。一見バラバラに見えるページたちを綴るひもは何なのか。次できっちりとまとまってくれるはず。

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召喚教師リアルバウトハイスクール (17)

てんこもりの展開
評価:☆☆☆★★
 鬼塚美雪の壮大な家出事件を収束させるため、大門高校を舞台とした一大バトルイベントが始まった。魔法が使える文化祭はそれだけで何でもありなのだが、Kウォーズの参加者やソルバニアの戦士たちなども乱闘参加し、さらなる混乱が巻き起こされる。そしてそれらが収束した時に、それぞれのライバルたちの最終決戦が幕を切る、はず。
 前巻のシリアス展開は、レイハを奪いに来た特殊部隊の撃退までで終わり、大門高校文化祭を舞台とした、半コメディ展開へと移行する。文化祭の柱として、高校全体を会場とした、魔法による舞台装置を用いた、涼子の時代劇が披露されるのだが、ともかく色々なキャラクターが出てきて、かなり発散気味の展開になってしまう。だから、中盤は少しグダグダ感を受けるかもしれない。あと、次巻で最終巻らしいです。

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召喚教師リアルバウトハイスクール (14)

暴かれるとき
評価:☆☆☆☆★
 元々は南雲慶一郎が圧倒的な主人公だったけれど、前巻くらいから、御剣がメインになってきた感じ。やさしさが先行する南雲では書ききれないことが出てきたのだろうか。
 これまでは完璧超人の視点で書かれていたので、最後には何とかなるだろう、という安心感があったが、いまは何がどうなってもおかしくない甘さがある。このドキドキ感が良いといえば良いが…

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