S.I.R.E.N.―次世代新生物統合研究特区― (2)
- 複雑な姉妹関係
- 評価:☆☆★★★
-
二級理装執行者アリスベル・イア・京花の姉である零級理装執行者エリス・アーセナル・舞花が指揮する序列入りバイオテスタ「暴君(イド)」搬送作戦に下請けで参加したミソラは、福音機関と敵対する勢力のネオリエ・K・ヴィスティゲインから接触を受ける。そして予想されていた通り、イドの暴走が始まってしまう。
S.I.R.E.N.―次世代新生物統合研究特区―
- ごちゃまぜ盛り込み世界観
- 評価:☆☆☆★★
-
生命工学の発達が生んだ幻想生物バイオテスタを大切にするミソラは、フィア・ネスフェリア・C4・アナスタシアという天使型のバイオテスタとであう。彼女の探す創造主が、自分の師匠である可能性を感じたミソラは、彼女を保護することを決める。
一級理装執行者であるレイベルト・レイ・ラクシズの仕事を手伝い、暴走するバイオテスタの鎮圧に向かったミソラは、そこで通常とは異なるバイオテスタと、それを操る並行世界から来た福音機関の青の第三相ネックザールを名乗る男と会いまみえるのだった。
氷結鏡界のエデン (13) 楽園現奏―エデン・コード―
- 真相
- 評価:☆☆☆☆★
-
異篇卿イグニドに追いついたユミィ・エル・スフレニクトールは、そこでイグニドの正体と、シェルティス・マグナ・イールがやろうとしていることを知らされる。剣を以て対峙することになるユミィとイグニドの戦いの結末は?
そして、ひとり、穢歌の庭の最深部にいるセラのもとに辿り着いたシェルティス・マグナ・イールは、この世界の真実を知る。
シリーズ最終巻。
氷結鏡界のエデン (12) 浮遊大陸-オービエ・クレア-
- 最後の戦い
- 評価:☆☆☆☆★
-
異篇卿イグニドに奪われた氷結鏡界の鍵を取り戻すため、紗砂・エンデンス・凛・ケールによって、全巫女と全千年獅の穢歌の庭への侵攻が決定された。ユミィ・エル・スフレニクトールと共に戦いに赴くシェルティス・マグナ・イールには、穢歌の庭を消滅させる切り札がある。
一方、エリエと華宮は、千年前に眠りに就いたイリスを復活させるための準備を整えつつあった。
不完全神性機関イリス (5) 154cmの花嫁機関
- 千年越しのプロポーズ
- 評価:☆☆☆☆★
-
機神/剣帝ヘケト・マグナが導いた幽幻種の大規模侵攻を前に、エルマリア神教界の聖女紗砂・エンデンス・凛・ケールや武宮唐那国のツァリ、帝国のヨミ・レッセントがひそかに進めていた氷結鏡界で世界を守る計画は、前倒しを余儀なくされた。凪・一咲・ジールは、右流・寧・ユメルダをたばかり、一人で戦いに挑もうとするが、それを察したミカエル・ユーティア・ラスカや京命院・卿大、システア・イ・カッサンテアリャアも戦いに臨む。
不完全神性機関であるイリスは、ツァリと共に、最も強大な幽幻種に挑むのだが、エルベルト共鳴が発生し、致命打を与えることができない。世界を、そして凪を守るため、イリスはある決断を迫られるのだった。
シリーズ最終巻。
不完全神性機関イリス (4) 勝率0.08パーセントの戦女神
- 機神の反乱
- 評価:☆☆☆☆★
-
凱旋都市エンジュで起きた機神/剣帝ヘケト・マグナの反乱により、ヨミ・レッセントと凪・一咲・ジールは重傷を負った。不完全神性機関イリスのナース・コスプレと治療用ナノマシンのおかげで無事に回復した凪の前に、ミカエル・ユーティア・ラスカと同様、ナザリエル・舜・イフ・カミウにより作られた機神/紫苑が現れる。
彼女によって一人呼び出された凪は、帝国が裏面で行ってきた研究の実態と、紗砂・エンデンス・凛・ケールが計画している策との関係を知らされるのだった。
氷結鏡界のエデン (11) 最終双剣‐ユミエル・ノイズ‐
- 千年の檻が破れる時
- 評価:☆☆☆☆★
-
穢歌の庭に再び落ちたシェルティス・マグナ・イールとユミィ・エル・スフレニクトールは、その底でそれぞれ、氷結鏡界の未来と、それを解決するために必要な犠牲を知らされる。
凪・一咲・ジールに送り出されたイリスとシェルティスは、紗砂・エンデンス・凛・ケールに指示されたモニカ・イスペラント、華宮、ヴァイエル・バッハベルらの助けで再び浮遊大陸オービエ・クレアへと帰還を果たした。
しかし、彼らに休息の時はなかった。異篇卿イグニドが差し向けた敵が、天結宮を襲う。その頃、エリエたちは、ヨミ・レッセントの遺志を受け取るべく、秘された場所を訪ねていた。
不完全神性機関イリス (3) 三大世界の反逆者
- 世界を救う計画
- 評価:☆☆☆☆★
-
帝国、エルマリア神教界、武宮唐那国の三大国による、幽幻種との戦いの主導権を巡る勝負の場、覇権戦争に帝国代表として参加することになった宝条軍学校傭兵科生徒の凪・一咲・ジールと不完全神性機関を宿した駄メイドのイリスのもとを、<聖女>紗砂・エンデンス・凛・ケールが訪れる。
夏休みの宿題をしたい凪だったが、紗砂の要望に応じ、部活動をする軍用アンドロイドのミカエルやシステア・イ・カッサンテアリャアを紹介し、一緒に遊んでいる内に、あっという間に夏休みは終わってしまった。
そして、右流・寧・ユメルダの引率で向かった先は、覇権戦争の舞台である凱旋都市エンジュ。そこで凪はイリスの生みの親であるヨミ・レッセントと再会し、紗砂やツァリが覇権戦争を利用して行おうとしていることを知る。
だが、その計画を妨害するように、予想もしない敵が襲いかかってくるのだった。
氷結鏡界のエデン (10) 黄昏讃歌‐オラトリオ・イヴ‐
- つながる世界
- 評価:☆☆☆☆☆
-
天結宮、統政庁、異篇卿の共同部隊の活躍により、セラの鏡像という強力な幽幻種「アマデウス」「ミクヴェクス」「ヘケト・ラスパ」を何とか穢歌の庭に押し戻すことには成功したものの、シェルティス・マグナ・イールとユミィ・エル・スフレニクトールも一緒に穢歌の庭へと落下してしまった。それを伝え聞いたモニカ・イスペラント、華宮、ヴァイエル・バッハベルの前に、イグニドが現れ、二人を助ける方法が存在していると告げる。
一方、穢歌の庭に落下したシェルティスとユミィは、落下途中に幽幻種に襲われたことで離ればなれになってしまい、それぞれ別の場所に落下する。そこには、魔笛に汚染されていない街の姿が広がっていた。
「黄昏色の詠使い」「不完全神性機関イリス」に登場するキャラクターも出張してきており、ほのめかされていたリンクが明確になったと言えよう。それに伴い、シェルティスとユミィに課せられた辛い使命も明かされ、二人に選択を迫ることになる。
残されたモニカがまたもや可愛らしい行動をとってくれます。彼女にも幸せが訪れると良いんだけどね。難しいかな。
不完全神性機関イリス (2) 100億の時めぐる聖女
- 千年先を見据えた計画
- 評価:☆☆☆☆★
-
宝条軍学校の傭兵科に所属している凪・一咲・ジールは、スクラップ置き場でイリスという人型機械体を拾い修理した。自称家政婦ロボの彼女だったが、家事はさっぱり出来ず、迷惑ばかりをかけるダメメイドだと思われた。
しかし実は最強の軍用アンドロイドであることが判明。幽幻種と対をなす力を持つ禁断水晶の加護を受けた人型機械体である機神として覚醒したものの、彼女自身はメイドとして凪の家で暮らす道を選択したのだった。
学生につきものの地獄の試験も終わり、ヘンタイ委員長の京命院・卿大の企画で、クラスのみんなでバカンスに出かけることになった。密かに凪に想いを寄せるシステア・イ・カッサンテアリャアや軍用アンドロイドのミカエルは、水着選びに余念がない。担任の右流・寧・ユメルダは、その状況を見て楽しんでいる。
そんな旅先で、凪はサラと名乗る少女に出会う。ところが彼女の正体は、武宮唐那国のツァリと並ぶ強者である、エルマリア神教界の紗砂・エンデンス・凛・ケールだった。彼女の目的とは…?
シィの持つ武器の威力が大爆発している。この作品では、女性キャラのフェティッシュな側面が強調され気味の気がするな。
氷結鏡界のエデン (9) 決戦限界‐アマリリス・コーラス‐
- 色々と忙しい展開
- 評価:☆☆☆☆★
-
護士候補生シェルティスが穢歌の庭に落ちた錬護士シェルティス・マグナ・イールだった事実の発覚は、彼を天結宮から遠ざける結果となった。華宮、ヴァイエル・バッハベルと共に生態生育野の巡回任務につけられたところに、怪我の治療で遅れていたモニカ・イスペラントが合流する。そして自分の思いを自覚したモニかはシェルティスに迫り…。
一方、シェルティスと決定的に離されることになった浄化の巫女ユミィ・エル・スフレニクトールの許には、セラの鏡像という強力な幽幻種が3体現れたとの報告が寄せられていた。アマデウス、ミクヴェクス、ヘケト・ラスパは、氷結鏡界をあっさりと破り、しかし中枢には踏み込まず、なにやら画策をしている。
怪我をしたレオン・ネストリウス・オーヴァ、拉致された春蕾・ピア・ヌクレネン。現状の戦力を検討した結果、自分が捨て身で挑むしかないとのユミィが覚悟を決めたとき、統政庁と異篇卿からそれぞれ、思わぬ知らせが入るのだった。
今巻は色々と事態が動く。これまでは敵対していた勢力が、突然出現した幽幻種を前に協力関係になったり、イグニドの正体が明らかにされたり、シェルティスとユミィに新たな試練が訪れたり、モニカが仕掛けを始めたりする。
弛緩したり緊張したり、色々と忙しい展開だ。
不完全神性機関イリス 154cmの最終兵器
- ダメメイドが世界を救う?
- 評価:☆☆☆☆★
-
幽幻種という存在の出現により、世界の75%は死滅してしまった。人類の希望は、幽幻種と対をなす力を持つ禁断水晶の加護を受けた人型機械体・機神の存在だ。
そんな世界で、凪・一咲・ジールは宝条軍学校の傭兵科に所属しているのだが、本当は機械工学科を受験したかった。マークミスで幽幻種と戦う訓練を繰り返す日々の慰めは、スクラップ場で使える部品を集めること。そんなある日、彼はイリスという人型機械体を拾い、メイド用だと思って修理する。しかし実は彼女は軍用アンドロイドだったのだ。
家事には致命的に役立たないメイドなのだが、ほだされて彼女と暮らし、ついでに軍学校に編入までさせてしまう。その行為は、密かに凪に思いを寄せるシステア・イ・カッサンテアリャアや、同じ軍用アンドロイドであるミカエルを刺激する結果となるのだが…。
設定や登場する名前が「氷結鏡界のエデン」とあからさまにリンクしている学園ラブコメ。おそらくは「氷結鏡界のエデン」の千年前の世界なのだろう。学園ラブコメをしつつ、世界の敵と戦う最終兵器少女が暴れ回る。
パラレルに作品展開できるなんて、幸せなことだと思う。
氷結鏡界のエデン (8) 悲想共鳴‐クルーエル・シャウト‐
- モニカがめんどくさかわいい
- 評価:☆☆☆☆☆
-
護士候補生シェルティスがかつての錬護士シェルティス・マグナ・イールであり、穢歌の庭に落ちて魔笛を宿している。それを巫女のユミィは隠していた。その秘密が異篇卿イグニドにより天結宮に伝えられ、大混乱を引き起こしてしまった。
その期に乗じて、巫女や千年獅の権力を削ろうと画策した天結宮の幹部と一部の錬護士が結び、ユミィの影響力を押さえ込んでいる間に、問答無用でシェルティスを監禁してしまう。
一方、シェルティスに好意を寄せるモニカは、自分が知らない秘密をユミィが知っていたことを知り、自分には知らせてもらえなかったことにショックを受けて塞ぎこんでしまう。
そして、シェルティスが警告した異篇卿イグニド襲来予告も、行方不明のレオンを探す春蕾たちには伝えられず、まんまとイグニドの思惑通りに事が運んでしまった。
というわけで、実はモニカの巻といっていいかもしれない。恋する乙女は好きな男に秘密をもたれていたことに落ち込んでしまい、しかもその秘密を共有していた相手がかつての後輩であることにもショックを受け、もはや彼や彼女を無視するしかないと言う心境だ。
しかしそんな不安定な状態が長く続くわけもなく、モニカは壊れる寸前までいってしまう。かといって、シェルティスが何を言っても今は無駄な部分もあり、こんな時にこそ仲間が大活躍する、という展開になっている。
一言でいえば、やきもちを焼くモニカがめんどくさかわいいとなるだろう。他人に好意を寄せることになれていない人間らしく、それが思惑通りに進まない時には全部ぶち壊したくなっちゃうわけだ。やっぱりめんどくさかわいい。
本編の進行とは全く関係ないと思うのだけれど、統政庁のゼアドールと黄金のマハの間で、なにやら変なフラグが立っちゃったみたいなのが笑える。…もしかしてこれも本編に関係しているのかな?何か因縁があるみたいでもあるし。
氷結鏡界のエデン (7) 空白洗礼
- 暴かれる過去の出来事
- 評価:☆☆☆☆★
-
統政庁・天の車のヒューイックと共に、異篇卿の本拠地へと強攻偵察を仕掛けることになったシェルティスとレオン。天結宮でサポートに徹することになるユミィや春蕾は、いつもは感じない不安を感じてしまう。
一方、完全な居残組にさせられてしまったモニカは、シェルティスに同行できないということに、何か釈然としないものを感じてしまう。それはどうしてなのか?その想いの根源を突き詰めていくと、それはモニカとシェルティス、ユミィ、3人の関係を崩す想いにつながっていくのだった。
そんな状況の中で訪れた敵の本拠地。そこでシェルティスとレオン、それぞれが出会う、彼らの過去に大きく関係する人物とは、そしてそこで知らされる真実は、浮遊大陸に何をもたらすのか?
第一楽章「再始」が終わり、第二楽章「世界で一番近くて遠い夢」に続く。
氷結鏡界のエデン (6) 水晶世界
- 強さを求めるゆえに生じてしまう弱さ
- 評価:☆☆☆☆★
-
浮遊大陸巡回任務についていた巫女と千年獅の姉妹、ヴィオラ・ノヴァとホルン・ノヴァが、天結宮へと帰還した。そのうち、ホルンとユフィの間には何らかの確執があるらしく、また、ホルンは実力のない護士たちを憎悪している。
そしてユフィは、浄化の巫女という称号を持っているにもかかわらず、浄化できない人々がいるという現実に打ちのめされ、訓練によって自らを痛めつける日々を送っていた。
そんな天結宮に届く、一通のメール。そこには、天結宮の護士の中に幽幻種が潜んでいると書かれていた。窮地に追い詰められそうになるシェルティス。そして、さらに追い打ちをかけるように、ホルンとユフィの確執の原因となった幽幻種が現れる。
その存在が明らかとなった第三勢力・異篇卿の攻勢に潜むオービエ・クレアとエデンに関する謎は、シェルティスやユフィの力の及ばないところで、彼らの存在を織り込んで物語を進行させていく。
そこには、彼らのごく側にいる人々も深くかかわっているようなのだが…。
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氷結鏡界のエデン (5) 絶対聖域
- それぞれ違う目指すべき場所
- 評価:☆☆☆☆★
-
幽幻種の培養について統政庁が隠す秘密を派遣するため、統政庁が本拠をかまえる浮遊島に出向くことになった巫女ユミィと随員の護衛を務めるシェルティスたちだったが、両者の会談は遅々として進まない。同行した錬護士筆頭イシュタルは、事態を打開するために、統政庁の最奥部に保管されているという、全てを見通す秘宝・ミクヴァの緋眼へのアクセスを試みることを提案する。
その提案を受けたユミィは、決死の潜入となる人員を選び命令することをしなければならないのだが、犠牲になるかもしれない任務を誰かに託すことに逡巡してしまう。そんなとき、彼女の側に立つことができるのは…。
開始当初から前作『黄昏色の詠使い』との関連性が匂わされていたが、ますますそれがはっきりしてきたように思う。直接的に関係しているかは分からないけれど、何かはありそう。
今回は、錬護士筆頭という千年獅を目指せる地位にありながら、あえて今の地位に留まっているイシュタルが目指すものが明らかになる。シェルティスにしても他の千年獅にしても、地位が欲しくて戦っているようには見えないので、根源的にはイシュタルが戦う理由と同じものを抱えているのかもしれない。
またまた色々と世界の秘密がほのめかされ、6巻へと続いていきます。
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氷結鏡界のエデン (4) 天上旋律
- 動き始める周辺
- 評価:☆☆☆☆★
-
統政庁に出向くユミィの随員の護衛任務に応募しようとするシェルティスたちだが、応募要件は4名のチームであること。不足の一人をうめるため、華宮の推薦によってヴァイエルという青年を臨時メンバーとすることにする。しかしこのヴァイエルは、怠惰で実力も不足しているようにしか見えない。
応募者をふるい落とす予選はシェルティスの実力で突破したものの、最終選考試験はチーム力が要求される巡回任務。ヴァイエルに対する不満だけでなく、モニカの指揮力に対する不安や、他人と一緒に戦うことに慣れないシェルティスなど、課題点がいっぱい。果たしてこれらの課題を解決し、無事に護衛任務に着くことができるか。
一方で、護衛の対象であるユミィは、謎の女性ツァリの導きによって氷結鏡界が張られる以前の世界の出来事を見せられていた。
次巻の準備段階という感じなので、あまり派手な事件は起きない。ユミィとモニカが再会し、モニカとユミィがやきもきするくらい。
全体としてヴァイエルの存在意義にはあまり納得できなかった。彼を護士候補生として雇う代わりに、もう少し安い給料で用務員でも雇えば済む。終盤でのヴァイエルと華宮のやりとりも、そう。練習で信頼できないヤツをいきなり実戦で信頼するなんて無謀だから、初めから勘定に入れないのは当然の扱いだと思うんだけどな。
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氷結鏡界のエデン (3) 黄金境界
- シェルティスを縛る二律背反
- 評価:☆☆☆☆★
-
正護士になるためには候補生3人以上で部隊を組んで任務をこなすことが必要だが、候補生たちから敬遠されるシェルティスには、個人的な実力はあっても仲間を募ることが出来ない。前回の事件で仲間となったモニカと部隊を作ることになり、必要なメンバーはあと一人という時に、モニカやエリエのつてをだとって出会ったのが、華宮というネルの民の少女だ。
警戒心の強いネルの民である華宮に信頼してもらうには、シェルティスの抱える秘密を話さなければならない。しかし話してしまうと、天結宮から追放されてしまうかもしれない。ユミィを護るには正護士にならないといけないが、そのために必要な仲間に秘密を話すと追放されるという二律背反を抱えて迷うシェルティスだが、そんなときにユミィの演説を聞いて少し迷いが晴れるのだった。
前回の研究所で見つけた幽幻種を閉じ込める水槽が、今回の事件でも関わってくる。そしてその事件の影に見え隠れする統政庁の影が、浮遊大陸の秘密を握っている感じ。
相変わらず今回も、実力にまかせたシェルティスの独断専行が目立ちます。
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氷結鏡界のエデン (2) 禁断水晶
- 巫女の孤独
- 評価:☆☆☆☆★
-
護士候補生として天結宮に再入宮したシェルティスだが、彼がいない三年の間に護士の昇格制度も大きく変わっていた。突出した技量を持つ戦士の育成ではなく、集団戦力としての増強を重視する。ゆえに護士候補生は三人以上で部隊を作り、その評価により昇格するシステムとなっていた。
訓練冒頭から圧倒的な実力を見せつけながらも、他とは異なる黒の衣装を身にまとい、異質な雰囲気を振りまくシェルティスは、容易に部隊を組むことが出来ない。しかし、ある早朝に、巫女としての術を使う、同じように孤立した護士候補生モニカと出会うことで、コンビを組むことになる。
レオンの強引な招集で、極秘の任務に借り出されるシェルティスとモニカ。そこで見つけるのは、天結宮と緩い対立をしている統制庁が隠す秘密。そこでの戦いを通じて、シェルティスは巫女と千年獅の本当の姿を学んでいく。
千年獅に匹敵する戦力を備えるシェルティスが一番下っ端からやり直すということで、実力的な違いをシステムで補うようにしているみたい。合わせて、ひょいひょい出歩けないユミィの代わりに、巫女の修行をしたモニカを身近に配することで、彼が知りえなかった巫女としてのユミィの姿を教えている。
もはや関係なくなってしまうかと思ったエリエとユトも、今後も色々とストーリーに絡んで来るみたいです。
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氷結鏡界のエデン 楽園幻想
- 世界の理が否定したとしても、それだけでは諦められない
- 評価:☆☆☆☆★
-
浮遊大陸オービエ・クレア。その下に広がるのは穢歌の庭と呼ばれる領域で、そこに住む幽幻種から大陸を守るため、氷結鏡界という結界が、皇妃と巫女たちによって張られている。
シェルティス・マグナ・イールという少年は、かつては氷結鏡界と巫女たちを守る護士の一人であり、穢歌の庭に落ちて生還したただ一人の人間でもある。その結果、巫女の宿す沁力と反発する幽幻種の力、魔笛を宿すことになり、護士から追放され、巫女の一人である幼なじみユミィ・エル・スフレニクトールとは手も触れあえなくなり、彼女を守るという約束も果たせなくなってしまう。
それから数年後、居住区で普通の生活をするシェルティスは、再び幽幻種と遭遇してしまう。それらのとる奇妙な行動は、平穏な生活の終わりと、昔の約束を取り戻すための闘いの始まりを告げるものだった。
前作と同様に、沁力と魔笛という対立する存在と歌が軸にあるみたい。シリアスな状況にありながら、今のところ軽妙な印象も並立するのは、居住区に住む一般人のエリエとユトという存在のおかげである気がする。
この辺のバランスが上手く取れれば、面白いシリーズになる感じがする。物語自体は始まったばかりで、まだまだ色々な要素がこれから登場するのでしょうけどね。
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黄昏色の詠使い (10) 夜明け色の詠使い
- 誰も傷つかない結末
- 評価:☆☆☆☆★
-
歌は独唱もいいけれど合唱の方がもっといい、ということなのかな?確かに、音が重なって響きあう感じは一人では出せないよね。自分を音で表現するのが歌ならば、自分自身でもある歌を他人と重ね合わせるなんて難しい。だから、誰もが共感できるような題材を合唱曲とするのかも知れない。あるいは、お互いに対する呼びかけでも良いのかも。ネイトとクルーエルの歌はどうだったんだろう?
カインツとイブマリー、ネイトとクルーエルと、世代を超えて引き継がれた約束も、どうやら果たされたみたい。どちらも超越者に人間の力で挑むという無茶をやった割には、双方それなりに満足のいくあり方に至れて良かったと思う。日々の積み重ねは大事だということですね。
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黄昏色の詠使い (9) ソフィア、詠と絆と涙を抱いて
- 二兎追うものは一兎をも得ないのか
- 評価:☆☆☆☆★
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ファウマやエイダのエピソードなど、名詠の秘密に関する問題から少し外れた部分の描写が多く、実はクルーエルとネイトに関するお話の進みはゆっくり。この巻だけ見ると、まるでエイダが主役のような印象も受ける。
破壊を回避するための緊急避難的決断を下したクルーエルと、それに対するネイトの行動は、次巻に持ち越された。
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黄昏色の詠使い (8) 百億の星にリリスは祈り
- 知った上で何を求めるのか
- 評価:☆☆☆☆★
-
ネイトに、クルーエルに、エイダに、名詠式創成に関わる二つの意思と秘密が開示される。すぐそこまで迫る変革の時に対して、決断を迫られる彼ら。自らの望むものを守るため、自分は何をすべきか。カインツ達の参戦と、ミオ達の行動は何をもたらすのか。その答えは次巻で明らかになるようです。
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黄昏色の詠使い (7) 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ
- 落ち着いて勉強もできない
- 評価:☆☆☆☆★
-
日常の学園生活に戻ったのも束の間、サリナルヴァの依頼により、ネイトとクルーエルは、再び孵石の中の触媒に関わることになる。新種触媒の披露会に出席するため、コロセウムの街エンジュを訪れた一行は、学生の模擬決闘大会に出場する学生、ヘレンとレフィスに出会う。
灰色名詠との再会、何かを伝えようとしながらも伝えられないアーマとアマリリス、そして、空白名詠の使い手シャオとその仲間たち。名詠の謎に関わる人々が集結したコロセウムで、新種触媒をめぐっての決戦が始まった。
冒頭では前巻のほのぼのした雰囲気をちょっと引き継ぎつつ、一気に物語は核心に向けて転がりだします。ラスト、対決の局面での引きはずるい。
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黄昏色の詠使い (6) そしてシャオの福音来たり
- ドタバタ学園物語
- 評価:☆☆☆☆☆
-
前半はトレミア・アカデミーの日常を描いた短編で、本編ではあまり活躍の場を得られないサージェスやキリエたちクラスメートが暴れまわります。普段の雰囲気とはかなり違ってコメディ色の強い作品集。本編はどちらかというとストーリー性重視なので、番外編の方がキャラクターの特性を存分に生かせる気がします。
後半になると一転して普段の調性に変わります。カインツとイブマリーの思い出話や、新たなエピソードの導入となる短編。ネイトとシャオのニアミスです。
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黄昏色の詠使い (5) 全ての歌を夢見る子供たち
- 果たされる約束、帰る日常
- 評価:☆☆☆☆☆
-
空白名詠の真精に心を囚われ衰弱する一方のクルーエルは、より設備の良い研究所へと移送された。しかし、どうしても彼女から離れることを許容できないネイトは、学校を抜け出し、彼女の待つ研究所へと向かう。
すべては予定された出来事のごとく、研究所に集結する事件の関係者たち。眠れるクルーエルを目覚めさせ、灰色の王を還すことができるのか。
長く続いたエピソードも終結し繰り返される日常へと戻って行くのだが、二人の前に現れたアルヴィルが名詠の謎への扉を開く。
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黄昏色の詠使い (4) 踊る世界、イヴの調律
- 期待と希望と実力
- 評価:☆☆☆☆★
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原因不明の高熱に倒れるクルーエルと、彼女の看病を行うネイト。二人の周辺で起きる不可解な現象と、それを調べるために集まる<イ短調>のメンバーたち。そして、かつて知らされた孤島を訪れるカインツの前には、緋色の髪の少女が現れる。
名詠を司るセラフェノ言語に隠された始まりの謎が徐々に明らかになる度、これまでの常識は簡単に覆され、次々と脅威の存在が現れてくる。徐々に成長を見せるネイトは、彼と彼女の約束を果たせるのか。
次から次と場に強いカードが出てきて、さらにまだどこかにはジョーカーが隠れている感じなので、どうしてもシリアスに流されがち。でもそれを、学園長のライバルを登場させたりして、少しコミカルに和ませる雰囲気に持って行っている。一気に展開しないのはどこかもどかしくもあるけれど、それだけ大切に物語の世界を描いているということでもあるだろう。
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黄昏色の詠使い (3) 奏でる少女の道行きは
- 危険な状況で無力な存在を成長させるには
- 評価:☆☆☆☆★
-
1巻で登場した強力な名詠の触媒である孵石、2巻で登場した灰色名詠、そしてイブマリーとカインツがそれぞれ遭遇した存在たち。これらの要素が、学園への侵入者、クルーエルの能力の開花、ネイトの成長という出来事をキーとして、一つの流れを生み出しつつある。
実はこの物語で最も重要な人物は、エイダなのではないかと思う。彼女がいなければ、数々の襲撃に対してなすすべもなくやられるだけだったろう。終盤になると、どうしてもクルーエルやネイトが派手に描かれがちだけれど、これからも最後の守り手として活躍していくだろう。
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黄昏色の詠使い (2) 奏でる少女の道行きは
- 選ばれし者の選ぶ道
- 評価:☆☆☆☆★
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1巻目で世界観の説明は終了かと思いきや、今回は名詠と対になる存在である祓名の解説。クルーエルらと同じ学校で名詠を学びながら、祓名民の本家の総領娘でもあるエイダの葛藤を軸に、世界観の補強をしていきます。
夜色名詠と過去でつながっている合宿先での事件を発端に、新たなトラブルの種が蒔かれたようです。
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黄昏色の詠使い (1) イヴは夜明けに微笑んで
- 音色が生み出す世界
- 評価:☆☆☆☆☆
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赤青黄緑白の五色を触媒として、それぞれの色に関係したものを召喚する名詠式を学ぶ学校で出会った少年と少女。少女は未だ誰も実現したことの無い五色以外の夜色による名詠式を生み出すこと、少年は五色全てをマスターし虹色の名詠式を構築することを約束してわかれる。それから十数年後、クルーエルの通う学校に、十三歳の少年ネイトが転校して来る。彼は、誰も聞いたことがない、夜色の名詠式を専門にしていた。
世代をまたぐボーイミーツガール。色と詠を媒介とする召喚という力がある世界。才能を内に秘めながらもそれを発揮できない子供たち。文章ではその美しさを描写しにくい世界観ながら、まさに王道を突き進んでいる。
今回は世界観と現役世代のより一回り前の世代のキャラクターたちの背景を語るのがメインだったので、本来の主役たちの物語は次巻から始まるのだろう。
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