佐島勤作品の書評/レビュー

魔法科高校の劣等生 (27) 急転編

評価:☆☆☆★★

魔法科高校の劣等生 司波達也暗殺計画 (1)

評価:☆☆☆★★

魔法科高校の劣等生 (26) インベージョン編

評価:☆☆☆★★

魔法科高校の劣等生 (25) エスケープ編 下

評価:☆☆☆★★

魔法科高校の劣等生 (24) エスケープ編 上

評価:☆☆☆★★

ドウルマスターズ (5)

評価:☆☆☆★★


魔人執行官 (3) スピリチュアル・エッセンス

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生 (23) 孤立編

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生 (22) 動乱の序章編 下

評価:☆☆☆★★


魔人執行官 (2) リベル・エンジェル

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生 (21) 動乱の序章編 上

評価:☆☆☆★★


魔人執行官 インスタント・ウィッチ

評価:☆☆☆★★


ドウルマスターズ (4)

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生SS

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生 (20) 南海騒擾編

評価:☆☆☆★★


魔法科高校の劣等生 (19) 師族会議編 下

評価:☆☆☆★★


ドウルマスターズ (3)

喪失
評価:☆☆☆★★
 研修で地球に降りることになった早乙女蒼生たち。その近くには、宇宙生活者たちが子供を産むメガフロートがあった。
 一方、マクリールの操縦者となった龍一もまた、海中での作戦遂行を命じられていた。

魔法科高校の劣等生 (18) 師族会議編 中

周囲の思惑
評価:☆☆☆☆★
 十師族を狙った自爆テロは一人のメンバーを害することはなかったものの、巻き添えになって非魔法師に20人以上の犠牲者が出てしまった。十師族が誰一人、非魔法師を救助することがなかったことから、魔法師排斥の機運は高まりを見せていく。
 世論の反発を避けるため、テロ首謀者抹殺を決議した十師族は、その捜査を十文字家に統括させ、七草家の長男が主導することになる。十文字克人の直轄で捜査に参加することになった司波達也は、七草家との連絡役となった七草真由美と毎日顔を合わせることになる。一方、同じチームのメンバーとなった一条将輝は、在京中の通学先として第一高校を指定され、毎日、深雪に合える環境が与えられるのだった。

 そして達也がテロ首謀者である顧傑を追い詰めた時、スターズNo.2のベンジャミン・カノープス少佐からの妨害が入るのだった。

魔法科高校の劣等生 (17) 師族会議編 上

変わる立場、変わる関係
評価:☆☆☆☆★
 次期四葉家当主として司波深雪が、その従兄にして婚約者として司波達也が、それぞれ十師族、師補十八家、その他魔法師関係者に通達された。それに対し、一条家より異議申し立てがなされ、代わりに一条将輝との婚約の申し出が伝えられる。
 そんな中、休み明けの魔法科高校には混乱が生じていた。兄妹だと思っていた関係が従兄妹として婚約者となり、更にはあの四葉家の次期当主となったことが明らかになったのだから当然と言えば当然ではある。それは、彼らとの関わり方により、それぞれ違った形で衝撃を与えていた。

 時を同じくして、米軍内部で不自然な兵器消失事件が発生する。そしてそれは、近々日本で開催される十師族選定会議に対するテロ事件に関係していた。

魔法科高校の劣等生 (16) 四葉継承編

排斥の真実
評価:☆☆☆☆★
 新年の慶春会を前に、黒羽貢から呼び出された司波達也は、当主の四葉真夜の命に背いてでも、司波深雪を四葉本家へ向かわせないように警告を受ける。一方、司波深雪も、分家当主である津久葉夕歌から、慶春会への同道を申し出られていた。
 四葉家次期当主指名を前に明らかになる、父親世代の司波達也排斥の動き。それは、真柴家、静家、新発田家ら分家による、実力行使へと発展する。次期当主候補の新発田勝成とそのガーディアンである堤琴鳴、堤奏太を排除したどり着いた本家で告げられる驚愕の“事実”とは?

魔法科高校の劣等生 (15) 古都内乱編 下

あくどい主人公
評価:☆☆☆☆☆
 四葉真夜から周公瑾捕縛の依頼を受けた司波達也は、九島光宣の協力を得て、周公瑾をかくまっていると思われる奈良・京都の伝統派の拠点を調査する。
 七草真由美から、名倉の死の真相を調べるのに協力して欲しいと言われた司波達也は、彼女を自分の仕事に巻き込みつつ、全国高校生魔法学論文コンペティションの警備のために京都へ同行するクラスメイト達を戦力としてカウントしながら、敵の所在を絞り込んでいくのだった。そして、偶然かかわった一条将輝を使い捨ての戦力として、敵地強襲に同行させる。

ドウルマスターズ (2)

決別の作戦
評価:☆☆☆☆★
 訓練校に入校した早乙女蒼生と早乙女朱理は、初めての訓練航海に出発することになった。
 一方、相次ぐ蜂起の失敗にあせるゲノムスは、如月龍一のソフィア脱走作戦を前倒しし、戦力増強を図ろうとする。だがその計画はあまりにも稚拙なものだった。襲撃を受けた訓練艦は、迎撃部隊として訓練生たちの出撃を命じる。

魔法科高校の劣等生 (14) 古都内乱編 上

もう一つの才能
評価:☆☆☆☆☆
 今年度の全国高校生魔法学論文コンペティションの開催地は京都だ。京都は古式魔術の伝統派が根城にしている場所でもある。
 黒羽亜夜子と黒羽文弥の訪問を受けた司馬達也と司馬美雪は、四葉真夜から周公瑾捕縛の依頼を受ける。藤林響子に依頼して九島烈に連絡した司馬達也は、探索への協力を依頼し、道案内として九島光宣をつけてもらうのだった。

 最後に七草真由美が登場します。

ドウルマスターズ (1)

巨大ロボもの
評価:☆☆☆★★
 サイクロニクスに発達により、人間の持つ超能力性はSIMAという指数で表せるようになった。一定値以上のSIMAがあれば、タイタニック・ドウルという人型の巨大ロボットを操縦するドウルマスターになることができ、SIMAが100を超えるエクサーと呼ばれる人々は、ドウルの機構を介さずに超常現象を発現できる。
 紛争により荒廃した地球上では、ポリスと呼ばれる密閉式複合構造体に住んで繁栄を謳歌する人々と、エネルギーサイトの周囲にオートンという街を築いて細々と暮らす人々に分かれ、そのエネルギーと宇宙を太陽系開発機構という組織によって管理されて生きていた。

 小田原オートンのドウルマスターである早乙女朱里と弟の早乙女蒼生は、小田原オートンの発電施設を狙う横浜ポリスのドウルマスターである如月龍一と戦闘していたところを、調停に現れた太陽系開発機構直属軍ソフィアのエクサーであるボルジギン=バートリーン=ドルジにエクサーとしての資質を見出され、磐都高等訓練校にスカウトされる。
 一方、横浜ポリスに帰還した如月龍一の前には、反太陽系連盟組織ゲノムスのエージェントであるフェリシア=リンとロサ=クルーズが現れる。彼女たちによってスカウトされた如月龍一は、磐都高等訓練校への入学を志願しつつ、ゲノムスのエージェントをソフィアに引き込む作戦を実行することにするのだった。

 マユリ=カーティスによって磐都高等訓練校に連れてこられた早乙女朱里と早乙女蒼生は、玲音=ウォード=高城という訓練生と出会う。しかし実は彼女は、ソフィアのエクサーであり、就学経験の不足を補うため、身分を隠して訓練生となっていたのだった。
 それぞれの理由によって普通の生活をしたことのなかった3人が、おっかなびっくり、見よう見まねでコロニーでの生活を送る中、テロ攻撃が発生する。それは、ドウル開発者の双璧である、ソフィアのサラスヴァティ=パテルとゲノムスのショーン=オブライエンの技術力の衝突でもあった。

魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編

九校戦の水面下で
評価:☆☆☆☆☆
 今年も九校戦の季節が近づいてきた。生徒会長の中条あずさを筆頭に、関係各位は着々と準備を進めてきたところ、直前になって競技とレギュレーションの変更が発表される。新競技として追加されたのは、ロアーアンド・ガンアー、シールド・ダウン、スティープルチェース・クロスカントリーの3種目だ。この変更に対応しなければならず、中条あずさは発狂寸前だ。
 この事態の裏側には、きな臭い事情が絡んでいた。横浜事変の結果、魔法師の戦力としての価値を見出した強硬派と、その事態を苦々しく思う九島烈と息子の九島真言が開発したパラサイドール、中華街に潜む非合法工作員の周公瑾、それぞれの思惑が入り乱れ、九校戦が情報戦の舞台となってしまったのだ。

 佐伯広海少将旗下の風間玄信少佐は、部下の藤林響子が九島烈の孫娘であるために行動が制限され、司馬達也への情報提供がしにくい。事態の変化を察した司馬達也は、司馬美雪の安全を守るため、九重八雲にアプローチする。
 一方、四葉家では黒羽亜夜子と黒羽文弥が情報収集に動いていた。

魔法科高校の劣等生 (12) ダブルセブン編

新たな問題児たち
評価:☆☆☆☆☆
 年度が変わり、第一高校にも新入生が入ってくる季節となった。昨年度は二科生である司馬達也が内外に大活躍をしてしまったため、彼を処遇するために、今年度から魔法工学科が新設されることになった。二年時に専攻選択が出来るという仕組みだ。
 昨年度の密約に基づき、妹の司馬美雪と共に生徒会副会長に着任した司馬達也は、新入生にして師補十八家の嫡子であり、十師族の七草家を敵視する七宝琢磨や、先代生徒会長の双子の妹である七草泉美と七草香澄に悩まされる事になる。

 光井ほのからと共に北山雫の自宅のパーティに招かれた司馬達也は、そこで若手女優の小和村真紀を紹介される。その誘いをすげなく断る司馬達也だったが、彼女は七草家当主の七草弘一や七宝琢磨を利用し、ある野望を抱いていた。
 自宅には桜井穂波が暮すようになり、公私ともに環境が一変し始めた達也に追い打ちをかけるように、魔法師を排斥する人間主義者を利用した陰謀が迫る!

魔法科高校の劣等生 (11) 来訪者編 下

混迷する戦況
評価:☆☆☆☆☆
 司馬達也が新たな戦略級魔法師であるとの疑いを強めた北アメリカ大陸合衆国(USNA)軍のヴァージニア・バランス大佐は、エリート魔法師部隊スターズの総隊長アンジー・シリウス少佐ことアンジェリーナ・クドウ・シールズを差し向けて、人体実験の被験者にするために捕獲しようとする。
 世界最強の魔法師のメンツを守るため、戦いの準備を整えてやって来たアンジー・シリウス少佐は、戦略級魔法「ヘヴィ・メタル・バースト」の威力を制御するデバイス「ブリオネイク」を用い、司馬達也に襲いかかる。その戦いの結末と、彼に対する敵対者たちが払う代償とは?

 そして、光井ほのかの意思をコピーしメイドロボ・ピクシーに憑依した吸血鬼(パラサイト)を手に入れた司馬達也は、十師族のひとつである四葉家当主で叔母の真夜の力を借り、USNA軍を牽制した上で、交換留学中の北山雫の友人となった、「フリズスキャルヴ」のオペレーターである七賢人の一人、レイモンド・S・クラークからの情報を活用し、他の11体の吸血鬼(パラサイト)を殲滅しようとする。
 一方、十師族のひとつである七草家の当主の七草弘一の意向を受けた国防軍の一部から命令を受けた千葉修次を牽制するため、千葉エリカに秘密の一端を悟らせつつ、司馬達也は牽制をするのだった。

 独立魔装大隊は藤林響子を投入して状況を監視しつつ、四葉家は諜報部門の黒羽亜夜子を投入して漁夫の利を狙い、さらにはピクシーの価値を知った九島烈の配下まで投入される戦場で、司馬深雪、吉田幹比古、西城レオンハルトらの援護を受けつつ、司馬達也は戦いを制することが出来るのか?

 そして国立魔法大学付属第一高校は卒業の季節を迎え、十文字克人や七草真由美は巣立っていく。

 次巻からは新年度となり、司馬家にはメイドの桜井穂波が加わり、高校には師補十八家の七宝琢磨や、七草家の双子姉妹、香澄と泉美が入学してくるダブルセブン編が始まる。
 巻末には、七草真由美の実家の事情が描かれる「お嬢様の華麗な(?)休日」が収録されている。

魔法科高校の劣等生 (10) 来訪者編 中

バレンタインデーの攻防
評価:☆☆☆☆☆
 司馬深雪の友人である北山雫と交換で、北アメリカ大陸合衆国(USNA)から国立魔法大学付属第一高校に短期留学にやって来たアンジェリーナ・クドウ・シールズは、USNAのエリート魔法師部隊スターズの総隊長アンジー・シリウス少佐だった。
 彼女の任務は、上海を消滅させた戦略級魔法師の正体を探ること、もうひとつは、余剰次元理論に基づくミニブラックホール生成実験の結果として招き入れてしまった思念が取り憑き起きた、魔法師脱走が導く吸血鬼事件を解決することだ。

 戦略級魔法師の容疑者である司馬達也に接触してきたアンジェリーナの正体は、彼女が残念なために即座に見破られるものの、達也が秘密を暴かなかったおかげで任務を継続することが出来ていた。一方、西城レオンハルトが吸血鬼に襲われて激怒した千葉エリカは、吉田幹比古を巻き込んで犯人征伐に奔走し、十師族を代表して捜索する十文字克人や七草真由美と足の引っ張り合いを繰り広げることになっていた。
 達也の口利きでその弊害は解消され、消極的な協力関係が構築されたところで、吸血鬼が国立魔法大学付属第一高校に侵入する。それは、アンジェリーナがよく知る人物だった。

 バレンタインデーの騒動を挟みつつ、それが原因となって引き起こされる新たな現象が、決定的対立の契機となっていく。再び相まみえるアンジェリーナと達也の対決の結末は?次巻に続く。

魔法科高校の劣等生 (9) 来訪者編 上

海の向こうからの来訪者
評価:☆☆☆☆☆
 司馬深雪の友人である北山雫に、北アメリカ大陸合衆国(USNA)への短期留学が決まった。魔法師の遺伝子流出を避けるために海外へ行くことが厳しく制限される情勢の中、この留学が許されたのは、それが交換留学だかららしい。
 そして北山雫が旅立ち、代わりに国立魔法大学付属第一高校にやって来たのは、アンジェリーナ・クドウ・シールズという金髪碧眼の美少女だった。

 九島烈の弟の孫だというリーナは、副会長として面倒をみることになった司馬深雪を通じて、司馬達也に接触する。彼女の目的は、上海を消滅させた戦略級魔法師の容疑者である彼ら兄妹を調査することだった。なぜなら彼女は、USNAのエリート魔法師部隊スターズの総隊長でもあったのだ。

 彼女の来日と時を同じくして、東京では吸血鬼事件が発生する。昏倒する多数の被害者が、一割ほど血を抜かれていたのだ。その調査を極秘裏に行っていた千葉寿和警部は、渋谷の街で遭遇した西城レオンハルトに協力を依頼する。そしてその結果、レオは吸血鬼に襲われてしまうのだった。
 十師族を代表する十文字克人や七草真由美らを無視し、吉田幹比古を巻き込んで独自捜査をする千葉エリカは標的に遭遇するのだが…。

 上中下の3巻構成となるらしい。今回は新キャラ登場と事件の発生というところ。

魔法科高校の劣等生 (8) 追憶編

関係の成り立ち
評価:☆☆☆☆☆
 西暦二〇九五年十一月、当主の四葉真夜に呼び出された司馬深雪と司馬達也は、四葉本家を訪れる。そこに従兄弟の黒羽亜夜子と黒羽文弥の姿を見た深雪は、三年前の自分を思い起こす。未だ兄について何も知らず、彼をガーディアンとして、ただ使用人として扱っていた頃の自分のことを…。

 西暦二〇九二年八月、司馬深雪は母親の司馬深夜と共に恩納瀬良垣の別荘を訪れてた。同行するのは深夜のガーディアンである桜井穂波と、深雪のガーディアンである達也だ。
 そんな彼らが乗っていたクルーザーが発砲魚雷により攻撃され、風間玄信国防軍大尉から事情聴取されることになる。そして達也を気に入った風間は、彼を基地に招待するのだった。兄に対し興味を持ち始めていた深雪は、それに同行することになる。

 だが、穏やかなバカンスは長くは続かなかった。大亜連合軍所属と思われる戦闘艇が領海に侵入し、上陸作戦を敢行してくる。防衛軍は阻止に動き出すが、不意打ちと反乱により有効な反撃が出来ない。そのとき、シェルターに避難しようとしていた深雪たちに悲劇が訪れる。それに対する達也の反応は、予想も出来ない熾烈なものだった。

 深雪と達也が今の奸計に落ち着くきっかけとなった出来事が、横浜事変のきっかけとしても描かれる。そして短編として「アンタッチャブル」を収録。約三十年前、深夜と真夜の父親である四葉元造が起こした復讐劇の顛末が語られる。このとき、現在の深夜と真夜はつくられた。
 高校生活から少し離れての過去編。この辺りから、舞台は国内を飛び出し、魔法師の国際的背景を受けた物語となっていく。

魔法科高校の劣等生 (7) 横浜騒乱編 下

解禁される隠し球
評価:☆☆☆☆☆
 横浜みなとみらい地区の国際会議場で開催される全国高校生魔法学論文コンペティションに、国立魔法大学付属第一高校の二科生である司馬達也も急遽参加することとなった。発表者である市原鈴音の研究テーマである「重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性」が彼のそれと重なっていたからだ。ハード面では五十里啓がソフト面では達也が支え、関本勲や平河千秋による妨害も排除し、いよいよ発表にこぎ着けた。
 しかし、司馬達也は知っていた。事態の裏側には陳祥山率いる大亜連合軍特殊工作部隊が控えており、千葉修次と渡辺摩利に封殺された呂剛虎も未だ牙を折られていないということを。だがそれは、強敵と渡り合うために西城レオンハルトに自流派の秘剣を伝えた千葉エリカにとっては望むところだろう。

 風間玄信少佐率いる国防陸軍第一〇一旅団独立魔装大隊の「電子の魔女」藤林響子に唆されて完全装備の部下を動員した千葉寿和警部らが警備を固める中、コンペの発表は順調に進んでいく。しかし、一条将輝や吉祥寺深紅郎が所属する第三高校の発表順が来たとき、ついにそれは訪れた。
 そこから始まるのは、横浜港湾地区を舞台とした戦争だ。隙あらば優秀な魔法師を拉致し、それが叶わないならば殺そうとするテロリストたちに対し、密かに動員されていた警察・軍だけでなく、魔法師やその卵たちによる義勇軍が抵抗する。

 十文字克人や七草真由美ら十師族直系や千代田花音ら百家の魔法師たちはもちろん、司馬深雪、柴田美月、吉田幹比古、北山雫、光井ほのか、壬生紗耶香らもそれぞれの魔法を駆使し、それぞれのやり方で立ち向かう。その過程で彼ら彼女らが強いられるのは、護るために奪うという覚悟だ。
 そしてついに、司馬達也の大黒竜也としての側面も解禁され、テロリストたちに恐怖をまき散らしながら、味方に奇蹟をもたらすのだ。

 若干もったいぶりながら、様々な人物に対する情報が小出しにされるので、事前に色々把握していないと、それがどんな意味を持つのかよく分からないポイントも多いのかも。でも、ど派手な展開は保証できる。

魔法科高校の劣等生 (6) 横浜騒乱編 上

文の祭典の裏側で
評価:☆☆☆☆☆
 九校戦の失態が尾を引き、平河小春が辞退した結果、司馬達也は全国高校生魔法学論文コンペティションの参加メンバーの一人に選ばれてしまった。推薦したのは、コンペの主執筆者である市原鈴音だ。五十里啓と三人で挑む論文のテーマは重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性、司馬達也の抱えるテーマと同じである。
 司馬深雪や千葉エリカ、西城レオンハルトといった面々は単純に喜ぶものの、柴田美月や吉田幹比古は、達也への嫉妬による妨害を警戒する。そしてそれは杞憂どころか、他の要素も絡み合うことで大規模なスパイ合戦へと展開していく。

 FLTより託された瓊勾玉の聖遺物を狙って、大亜連合軍特殊工作部隊が日本に上陸し、高校生を取り込むことで、その工作の広がりを悟りにくくする。新風紀委員長になった千代田花音の性格に似合わない常識さによる掣肘や、渡辺摩利、七草真由美の実践的な強さ、千葉家の兄弟姉妹が大暴れするなど、周囲のキャラクターにも見せ場がたくさん作られている。
 一方で、司馬家内部の奇妙な人間関係など、魔法とは異なる面で、司馬兄妹には活躍の場が与えられているといえるだろう。

 次巻は横浜を舞台とした戦いがメインとなるはずだ。

魔法科高校の劣等生 (5) 夏休み編+1

達也以外にスポットを当てる短編集
評価:☆☆☆☆☆
 今回は原則として夏休みの魔法科高校生たちの活動を描く短編集。最後の作品は、次の展開に向けての導入の役割も果たしている。
 夏休みなので、当然、美少女たちの水着姿が披露されることになるし、日常生活における美少女たちの苦労もあれこれ。十師族ゆえの苦労話や、本編では描かれないサブキャラたちの活躍などが紹介される。

「夏の休日」
 司馬深雪の友人であり、北方潮のビジネスネームを持つ北山潮の娘である北山雫の招待で、無人島の別荘へと遊びに行くことになった光井ほのか、千葉エリカ、柴田美月、西城レオンハルト、吉田幹比古たちいつものメンバー。特に司馬達也はトーラス・シルバーとしての激務を縫っての参加であり、本人は痛痒を感じてもいないだろうが、妹の深雪は彼にゆっくりと骨休めしてもらいたい気分でいっぱいだ。
 そんな達也がビーチでパーカーを脱ぎ、女子陣を震撼させたりもしながら、楽しい夏休みを過ごしていたところ、ほのかがこの機会を捉え、大胆な行動に出る。それに対する達也の対応とは…?

「優等生の課外授業」
 劣等生である二科生の司馬達也に、九校戦で圧倒的な実力の差を示されてしまった優等生の森崎駿は、毎日、自分を追い込んで射撃訓練に励んでいた。そんな彼は街中で、何者かに追われている女性のリン=リチャードソンを助ける。
 彼女の暫定ボディーガードを務めることになった森崎は、様々な妨害活動を受けることになるのだが…。

「アメリア・イン・ワンダーランド」
 九校戦でも活躍したアメリア=英美=明智=ゴールディは、遊びに出かけた遊園地で、実家の秘術である「魔弾タスラム」を狙うお家騒動のため、何者かに襲われてしまう。たまたま居合わせたクラスメイトの十三束鋼と協力し、襲撃者を撃退することになるのだが…。

「友情と信頼とロリコン疑惑」
 国立魔法大学付属第三高校の吉祥寺深紅郎は、深い屈辱のそこにあった。カーディナル・コードの発見者でもある彼は、自分が同世代のトップに位置する人間だと自負していたが、実力で彼をしのぐ存在がいるということを、九校戦で見せつけられてしまったのだ。
 そんな彼が私淑する一条家の嫡男である一条将輝は、その敵愾心を向ける対象の妹に恋煩いをしてしまっている。二人は、司馬達也という男を乗り越えない限り、自分を取り戻すことが出来ないのだ。そんなカーディナル・ジョージには、小学六年生の少女に恋心を向けられていた。

「メモリーズ・オブ・ザ・サマー」
 司馬深雪の九校戦での活躍に報いるため、ご褒美を買い求めに出かけることになった司馬達也。しかし、超絶美少女である妹と、年齢以上の実力を持つ彼が出歩けば、何も起こらぬはずもない。
 服を買いに行けばプチファッションショーとなり、ランチをすれば注目を集める。しかしそれは良いことばかりではなく、トラブルの種にもなり得るのだった。

「会長選挙と女王様」
 国立魔法大学付属第一高校にも代替わりの時期が近づいてきた。風紀委員長の渡辺摩利は千代田花音を後継に選び、その教育を司馬達也に押しつける。一方、生徒会長の七草真由美は、次の生徒会長選びで苦心していた。気の弱い中条あずさには即断られ、服部刑部少丞範蔵は次期部活連会頭に内定したため選べない。
 そうこうするうち、達也が生徒会長選挙に立候補するという噂が学園を駆け巡る。真由美の提案している二科生が生徒会役員になれる規約変更への反対派の活動とあいまい、不穏な空気が流れるのだが…。

魔法科高校の劣等生 (4) 九校戦編 下

とある劣等生の逆鱗
評価:☆☆☆☆☆
 バトル・ボードにおける渡辺摩利の負傷で、司馬深雪は新人戦だけでなく本戦のミラージ・バットにも参加することになってしまった。しかし、兄の司馬達也は、深雪なら問題ないと自信を持って送り出す。その達也自身は、本人の意向とは正反対に、九校戦関係者の注目を集める存在となりはじめていた。それもそのはず、彼がCADの整備を担当した新人戦女子種目は、圧倒的な成果を挙げていたからだ。
 北山雫が参加したスピード・シューティングでは、オリジナル魔法・能動空中機雷を披露してパーフェクトを達成させ、光井ほのかが参加したバトル・ボードでは独創的な作戦を立案して成功させる。そして、アイス・ピラーズ・ブレイクでは、高度な魔法の発動を可能にする起動式をCADに仕込む。見る人が見れば、それは誰の功績か、火を見るよりも明らかだったのだ。

 それは、三高生にして十師族次期当主の一条将輝や、カーディナル・コードの世界唯一の発見者である吉祥寺深紅郎にしても例外ではない。達也が二科生と知らない他校関係者が彼を強敵として捕え始めた頃、また発生した妨害行為が、結果として達也に新たな活躍の場を与えることになる。

 達也の技術者としての卓越さは、同じ技術者である生徒会書記・中条あずさが驚愕を以って語り、戦闘者としての脅威は、十師族の魔法師である生徒会長・七草真由美が興奮と共に語る。そう、今回は、技術者として評価されるだけでなく、戦場での達也の実力も評価される場面が描かれるのだ。
 そして、そのおまけという訳ではないのだが、同じ二科生である西城レオンハルトや吉田幹比古にも、一科生と伍す実力があるということを、満天の下に示すチャンスが与えられる。そしてそれを見る一高の一科生は思うのだ。成績とは、優等生とは何だろう、と。

 九校戦の裏側では、司馬達也は普段とは少し趣の異なる、ダークな一面も見せてくれる。

魔法科高校の劣等生 (3) 九校戦編 上

今度は圧倒的なメカニック技術
評価:☆☆☆☆☆
 魔法科高校は全国に九校あり、それぞれに得意とする魔法分野が存在する。この九校の交流と、魔法技術の向上を目的として開催されるのが全国魔法科高校親善魔法競技大会、いわゆる九校戦だ。スポーツ系魔法競技の中でも魔法力の比重が高い、モノリス・コード、ミラージ・バット、氷柱倒し(アイスピラーズ・ブレイク)、スピード・シューティング、アクセル・ボール、バトル・ボードの6種目で優劣を競われる。
 各校のプライドを賭けて戦う以上、各校の代表は魔法技能に優れた一科生の中でもトップレベルの人材が選ばれるわけであり、二科生である司馬達也には関係のない行事であるはずだった。しかし、生徒会長の七草真由美や風紀委員長の渡辺摩利に実力を認められており、かつ、妹の司馬深雪が新人戦の代表に選ばれるということもあって、彼女のCADの調整をしている達也もエンジニアとして参加することになる。

 だが、二科生である達也を認めない一科生も多い。特に男子に多いそれは、自然、達也の担当を女子チームに限定させることになる。そしてどちらの判断が正しかったのかは、おのずと結果で明らかになるのだが…。
 そんな高校生のイベントの裏でうごめく、怪しい陰謀の影。風間少佐の部隊に所属する達也は、そちらの問題にも大きく関わることとなる。

 今回も達也の超絶無敵ぶりが徹底的に描かれる。彼に反発した人たちがかわいそうなくらい。今回、彼が実力を発揮するのは、直接的な魔法の技というよりも、それを発揮させるデバイスの調整能力だ。彼が超高校級の技能を持っていることには、ある理由があるわけだが…。
 そして妹・美雪の兄に対する盲信ぶりや、段々と彼の実力を知り、心酔していく女子たちの姿も健在。魔法戦に、ブラコンに、ラブコメに、そしてヒーローものにと、様々な視点から楽しめる。

魔法科高校の劣等生 (2) 入学編 下

測り得ない実力が炸裂!
評価:☆☆☆☆☆
 魔法科高校には隠然たる差別がある。それは入学実技試験によりもたらされる、一科生と二科生という違いに起因する。希少な指導者を有効に利用するため、実技に劣る二科生には個別教官がつかないのだ。それ自体は厳然たる区別のはずなのに、その違いが一科生に特権意識を生む。
 しかし、今年の新入生にはこの枠組に収まらない人材がいた。首席入学の司馬深雪の兄である二科生・司馬達也。実技に劣る二科生のはずなのに、実力者ぞろいの生徒会副会長を魔法で撃破し、その存在を奇貨と見た生徒会長・七草真由美と風紀委員長・渡辺摩利によって、差別意識に風穴を開けるための一手として、二科生として初の風紀委員に任じられた達也は、早速、剣道部と剣術部の数十人単位の諍いを治め、一躍有名人となる。

 この騒動の一方であり、ウィードでもある壬生沙耶香にその実力を見込まれた達也は、ブルームを見返すための策として剣道部に誘われるのだが、それをすげなく断ってしまう。しかし、劣等感にさいなまれている壬生沙耶香は、ブルームを見返すという気持ちをあきらめきれず、とんでもない虫を学校に招いてしまうのだった。


 現在の実技選考基準では測ることができないために劣等生とみなされている、司馬達也、千葉エリカ、西条レオンハルトなどの少年少女たちが、試験には現れない実力を示して快刀乱麻を断つ爽快感を味わえる作品。もちろんラノベ的要素として、ラブっぽい淡い感情があったり、遣りすぎに見えるようなブラコンもあったりする。
 そして物語は、とても高校生の手に負えるとは思えないような大事件へと発展していく。

魔法科高校の劣等生 (1) 入学編 上

既存の枠をはみ出す
評価:☆☆☆☆☆
 魔法とは現象であり、それを制御する技術である。フェルミオンでもボソンでもない、意思や思考を形にする想子(サイオン)と、意志や思考を産み出す情動を形作る霊子(プシオン)のうち、サイオンを制御する事で現代魔法は成される。そのプロセスを助けるのが、CADと呼ばれる魔法発動デバイスだ。
 しかし一方で、魔法は才能でもある。全ての者が同じ様に魔法を使える訳ではない。ゆえに、資源配分は当然、優秀な者に集中されることになる。そしてそれは、魔法を使える者と使えない者の間だけではなく、使える者同士でも適用されるルールだ。

 司馬達也は妹の深雪と共に、国立魔法大学付属第一高校に入学した。しかし彼は、学科はトップだったが実技の評価が低く、深雪は花冠(ブルーム)と呼ばれる一科なのに、達也は雑草(ウィード)と呼ばれる二科の生徒だ。二科とは、一科の補欠であり、専任の指導者がつくこともない。
 一応平等は謳っているものの、実態がこれなので、当然のことながら、一科の生徒は二科の生徒を見下す。しかしそれに、兄の実力を高く評価する深雪は納得がいかない。そのことからトラブルが発生するのだが、それは彼らを、生徒会長・七草真由美や風紀委員長・渡辺摩利とであわせるきっかけになるのだった。

 魔法を技能として体系化する設定が細かく、もしかするとそれを敬遠する人もいるのかもしれないが、こういう深い設定は個人的に大好き。そして、劣等生だと思われている人物が、実は既存の枠では評価しきれない人物というだけであり、世間の偏見を実力で跳ね除けていくという設定が魅力的に映る。
 WEB小説からの出版ということで、これから順次刊行されていくのだろう。たのしみ。

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