佐野しなの作品の書評/レビュー

人見知り部は健全です (2)

言葉とは裏腹に
評価:☆☆☆☆☆
 ひょんなことから、下ネタ無駄美人の裾ノ花乃花と知り合い、人見知り部という社会不適合者が集う部活に入ることになった寿藍人と臼潮明だったが、その乃花は藍人たちのクラスメイトとして復学した。相変わらずの下ネタっぷりにクラスでも浮き、いつものように部室に入り浸る。
 そんなある日、春休みに絡まれていたところを助けたお嬢様・一条礼香と執事の波佐宮が、乃花を慕って人見知り部の部室にやってきた。素直になれない彼女をたらし込み籠絡する乃花。そしてオネエの大和倫太郎は、波佐宮に一目惚れしてしまい、女性のふりをして過ごすという大混乱。それにかまけているうちに、ようやく付き合うことが出来た明の変化に藍人は気づかない。やがてそれは破局に向かっていく…?

 男嫌いで女の友情に飢えているというお嬢様が今回の新キャラ。またまた濃ゆいメンバーに関わっているうちに、藍人は明のサインを見逃し、逆方向に暴走してしまう。今回は、言葉と態度が裏腹な人間の不思議に迫る、という感じかな。


人見知り部は健全です

それはおっさんの思考じゃないか?
評価:☆☆☆☆☆
 最近流行の残念系ラブコメの派生バージョンではあるのだが、味付けの仕方に工夫があって単なる模倣でもなく、共感を呼ぶ残念さというよりは突き抜けた残念さを笑うコメディ性が強いという特色がある。

 表情に喜怒哀楽がほとんど出ないために他人から気味悪がられてしまう寿藍人は、極端な上がり性でやはり人付き合いが上手くできない幼なじみの臼潮明と共に、ひとりぼっち×2という感じで、屋上に続く階段で昼ごはんを食べていた。そこに突然、上級生の大和倫太郎が詰問してきてテンパっているところに、やはり上級生で超絶美女の裾ノ花乃花が現れて助けてくれた。
 しかしコレは全て乃花の自作自演。自分が作る、人見知りが集まって付き合い下手を改善するという名目で傷をなめあう同好会に勧誘するためのものだったのだ。実は大和倫太郎も同じ同好会の人間で、むしろ藍人たちを彼女の魔の手から守ろうとしていたのだった。

 藍人の明に対する感情を利用され、同好会に入部することになった藍人は、下ネタを言えば人との距離を縮められると信じる乃花の下ネタに突っ込みを入れ、乃花におもちゃにされる明のかわいさを堪能して日々を過ごしていた。そしてそのうち、乃花と倫太郎の出会いに隠されたエピソードと、驚愕の事実を知ることになる。知っても表情には出ないけどね。

 読者はおおよそ予想していた通りのエンディングに向かって読み進めさせられていくわけだが、そこにちょっとだけ意外性があって、ちゃんと同じ雰囲気で次巻へ続くための仕掛けが施されているところが上手いと思う。
 売るためにはある程度成功すると分かっているネタを踏襲するのは仕方の無いことだけれど、やっぱり自分らしい特色も出さないと面白くないよね、ということで、そんな特色が見える作品だろう。

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