坂井テルオ作品の書評/レビュー

私のために創りなさい!

本物より本物らしく
評価:☆☆☆★★
 辰見谷高校マンガ創作研究部は、魔界創造研究部との異名すら持つ、変態たちの巣窟だ。部長の宗形宗一はおっぱいに命を賭けるモデラーであり、部員の園部由利子はガチムチ大好きな腐女子だ。そんな彼らの部室にやってきた生徒会副会長の小森希には、表向きの理由とは別に、真の狙いがあった。
 Eカップ美少女として学内の男子の視線を一身に集める希だったが、実は偽乳。その実態はBに近いAカップという、ガッカリの落差があった。しかし彼女が片思いする教師の速見健治は巨乳好きで、子どもの頃にDカップになったら結婚してくれると言われたらしい。

 そんなわけで、廃部と引き替えに希の偽乳を本物と見まごうクオリティで作成することになるのだが…。

 フィギュア制作を趣味とする高校生男子と、彼にかかわることになった生徒会長、そして部活の後輩との関係を描く学園ラブコメなのだが、あまりラブコメらない。なぜなら、そんなものより、いかにクオリティの高い偽乳を作るかと言うことに、全てのエネルギーを注ぎ込むからだ。
 だが、その偽乳を作る課程に、どれほどモデラー魂があふれ出ていただろうか?やはり思春期の少年らしく、被造物よりも型を取られている本物に心を奪われていなかったか?もしそうだとすると、単なるエロコメと言うことになってしまうだろう。

 特殊な設定は興味を引くが、それ自身に情熱が溢れるほど注ぎ込まれない限り、今ひとつの作品になってしまう気がする。

ホーム
inserted by FC2 system