境京亮作品の書評/レビュー

カチコミブライド!

かみ合わない二人
評価:☆☆☆★★
 明るく・やらしく・たくましくをモットーとする堂家緋色は、運命の赤い糸で結ばれた女性との結婚を夢見ながら、覗きもとい垣間見に精を出す十五歳だ。
 そんな彼の前に、極道一家黒鉄組組長と、その一人娘の鉄ななのが現れる。組長は緋色の母親に娘の教育方法を相談した結果、緋色と同居させ花嫁修業をさせることになったのだ。

 見た目はロシア美少女ながら、口調はべらんめえ口調で鉄パイプを振り回す不良娘。当然、花嫁修業などやる気はない。だが、もし花嫁修業を放棄したり、緋色がななのに手を出したら即婚約という条件が付けられた。
 これまで緋色を更生させようとしてきた遠山あおいや、エロ面で緋色とためを張る目白明を巻き込み、かみ合わない二人の同棲生活が始まる。

お願いだから、あと五分! (3)

思い通りにならない想い
評価:☆☆☆★★
 内藤優一の前に、初恋の相手である睡蓮寺永遠が現れる。彼女は売り出し中のアーティスト蓮となっていた。
 かつて永遠を傷つけてしまった優一の苦い記憶。それと向かい合う覚悟を持てないまま、事態は危険な方向に向かって突き進んでしまう。

 シリーズ最終巻。

お願いだから、あと五分! (2)

名前を呼んで
評価:☆☆☆☆★
 子供の頃に驚きすぎて表情が変わらなくなったために周囲からデスマスクと恐れられる高校生の内藤優一は、予知能力者の木枕コトハと出会い、彼女を庇護する時枝章子の下で、羽島グループ特務機関幽霊課の一員として働くことになった。彼には超能力は使えないので、主にはコトハの安眠まくらとしてだ。二人は輪廻転生のソウルメイトであり、そのそばでは不眠症のコトハも安心して眠れるという。
 彼らの初仕事の結果として仲良くなった委員長の小日向蓮子も念動力者であり、今後は彼女もチームの一員として働くことになった。その最初の試練として、内藤優一と小日向蓮子が二人っきりで、プールでの特訓を行うことになる。

 放課後に特訓を続ける最中、内藤優一は小日向蓮子に何かとちょっかいを掛けてくる金髪巨乳の悠里夏来と、その幼馴染の尾森歌という少女たちの存在を知ることになる。

 追求する委員長、小日向蓮子が可愛らしくデレる様が描かれる。その基準は、名前を呼ぶか否かだ。自己評価が極端に低い蓮子に警戒を解かせるのは中々に手間がかかるお仕事で、丸々一巻かかってしまった。めんどくさいのが二人重なると、悲劇が起きる。

お願いだから、あと五分!

切実な願い
評価:☆☆☆☆☆
 子供の頃から母親のいたずらに悩まされてきた内藤優一は、どんなことがあっても一切表情が変わらなくなってしまった。ついたあだ名は死者の顔(デスマスク)だ。そんな優一は、ある日、木枕コトハという少女に出会い、どんなことがあっても自分を信じて欲しいとお願いされてしまう。
 家族は出かけて誰も居ないはずの家に戻ると、自室のベッドの下を探っていたのは先ほどとは髪の色が異なる木枕コトハだった。彼女から一枚の契約書を手渡され、羽島グループ特務機関幽霊課と契約することになった内藤優一は、お色気お姉さんの時枝章子の指示の下、木枕コトハの枕になることになってしまったのだ。

 眠ると魂が入れ替わり予知能力を発揮するというコトハの指示で、暴漢に襲われる一人の老人を助けた優一は、それが羽島グループの業務の一環として行われていることを知る。
 輪廻転生のソウルメイトだからという理由で、いつも優一と一緒に居ようとするコトハは、優一の学校に転入し、委員長の小日向蓮子と仲良くなる。しかしそれが、大人たちに翻弄される子供の悲哀を感じるはじまりとなるのだった。

 第8回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。設定の一つ一つは特に目新しくは無いのだが、それを組上げると独特のラブコメ異能バトルとなった。軽く笑い流してしまいそうなタイトルだが、そこに込められているのは切実な願いだ。
 主人公たちのしている行為は正義とはかけ離れた経済活動の一環なのだが、当人たちがそれをどこまで意識しているかは危うい。ビジネスライクに割り切れるのか、あるいは自らの良心との板挟みになる時が来るのか、少し興味深い。

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