桜井美奈作品の書評/レビュー

塀の中の美容室

評価:☆☆☆☆★


マンガハウス!

評価:☆☆☆☆★


嘘が見える僕は、素直な君に恋をした

評価:☆☆☆☆★


落第教師 和久井祥子の卒業試験

踏み込む教師の心意気
評価:☆☆☆☆★
 和久井祥子25歳。二校目にして、母校へと赴任することができた。そしてその初日、かつての居場所だった、オランダキジカクシが植えられていた裏庭の花壇に行くと、そこには転任した田路宏昌から花壇を託された窪田瑛斗が待っていた。
 三つあるうちの花壇のうち、今も手入れされているのは一つだけ。園芸に対する意欲があるわけでもないが、完全に放置しているわけでもない。かつての自分のように花壇を居場所にしている窪田瑛斗を見て、かつて自分が田路宏昌にしてもらったように、和久井祥子も窪田瑛斗の居場所を維持しようとする。しかし、彼の母親は、校長以下教員たちが遁走するほどの、モンスターペアレントクレーマーだったのだ。

 そしてプライベートでは、高校時代からの友人である関根晴彦とも時間が合わずに距離が開き始め、大学時代の友人である藤沢泉から紹介されたエリートサラリーマンの及川玲に告白されたりする。
 生徒に対する教師の立ち位置として、及川玲と関根晴彦に、それぞれ真逆の立場を代表させているところが分かりやすい。やっぱり仕事に理解がないと、最終的には辞めて家に入れと言われてしまうんだろうなあ。

 サイトでは短編「落第教師 和久井祥子の入学試験」を公開中。

きじかくしの庭

三年越しの収穫
評価:☆☆☆☆☆
 校舎の裏手にある誰も利用していない花壇には、オランダキジカクシが植えられている。それを世話しているのは、教諭の田路宏昌だ。ただし植えたのは別人だ。その植物には、ちょっとした復讐心が込められている。

 花谷亜由は彼氏が春休み中にクラスの別の女子とつきあい始めたことを知ってしまった。こそこそと噂話が飛び交う教室には居づらくなり、彼との思い出の場所である校舎裏の見放された花壇の雑草を抜いている。顔は涙と泥でひどいことになっているだろう。
 そこに、禁じられたタバコを吸うために、担任の田路宏昌がやってくる。クラスの雰囲気と情報収集から事態を察した田路は、クラスから弾き出されそうな当事者にアプローチしてきたのだ。そして、バカな男に復讐するのもありだという。

 花谷が卒業し、花壇の世話は田路に任された。その場所に、仲の良い友人同士の川久保千春と堀北舞がやってくる。そして、弁護士を辞めて海外をさすらうことにした恋人の松下香織と別れた田路には、補充教員の栂野志帆が近づいて来ていた。
 翌年。禁煙して久しい田路は、花壇にタバコの煙が漂っているのに気づく。それは、留年した受け持ちの生徒である和久井祥子の吸うタバコの煙だった。

 第19回電撃小説大賞大賞受賞作品でありながら、メディアワークス文庫より出版。電撃文庫で刊行された受賞作と比較して、編集部は読者層のいずれもとりこぼさない戦略を推し進める方針らしい。
 ところで、タイトルに関係する「オランダキジカクシ」に誤植があったのには、ちょっと呆れた。

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