ハイドラの告白(柴村仁)の書評/レビュー


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ハイドラの告白

拡散する血脈、停滞する血脈
評価:☆☆☆☆★
 『プシュケの涙』の舞台となった時期から三年後の人々の姿を描く。共通して登場する人物もいるし、以前の事件の事後処理みたいな部分も含んでいるけれど、新たな人物とその物語がメインだと思う。

 テーマは「血脈」かな。血脈は過去から現在を経て未来につながるものであり、有性生殖である限り、必ず二つの血脈が結びついて続いていく。この結びつきのパターンにはいくつかあって、一説によると、自分の遺伝子から遠い遺伝子を選択して生物の多様性を確保していくとも言われる。
 人間同士の結びつきは、このような動物的な面と共に、打算的な面も併せ持つ。その両極端が、国中から美姫を集めた後宮を持つパターンと、近親で結びつき財や権力が拡散しないようするパターンだろう。

 タイトルにあるハイドラとは、ヒュドラとも呼ばれる9つの頭を持つ怪物だろう。ヘラクレスに退治されるハイドラの母はエキドナと言い、彼女と彼女の子オルトロスとの間に生まれたのが、スフィンクスと伝えられる。
 スフィンクスは謎を出し間違ったものを食い殺していたが、テーバイ王となるオイディプスに正解を出され、自ら身を投げて死ぬ。このオイディプスは、エディプス・コンプレックスの語源にもなっており、自らの父を殺して実母との間に子をもうけるのである。

 表面的には、前作ほど衝撃的な内容ではないと思う。そういう意味では安心。
 ただ、タイトルから勝手に深読みすると、色々とドロドロした内容を含んでいるのかな?気づかないだけで。

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