真藤順丈作品の書評/レビュー

東京ヴァンパイア・ファイナンス

金利の代わりに得るもの
評価:☆☆☆★★
 片方の犬歯は金歯。全身黒ずくめ。万城小夜はタクシーに乗って深夜の街を徘徊する。求める客は融資の相手。ほとんど信用度がないような連中にも、トレイチ(十日で0.1割の略らしい)という闇金の常識では考えられない低金利で、数百万から数千万の現金をポンと貸し付ける。貸付の条件は金の使用目的を話すことのみ。
 今回のお客さんは、送り狼を目指して貢ぐ派遣労働者、振り込め詐欺グループに復讐を誓う高齢者たち、抜群のスタイルを捨てて性転換しようとする人などそれぞれ何かをするために金が必要な人たち。彼らの間をタクシーで渡り歩き、万城小夜は彼らの人生に介入する。一体彼女の目的は、その資金源はどこなのか。

 人と人とをつなぐものは普通、血だったり、情だったり、義理だったりすると思うのだが、ここでは低金利の融資というのが人と人とをつなぐツールになっている気がする。本来なら受け取れるはずの利息を捨てる代償として、万城小夜は債務者の人生に積極的に介入していき、絆をつくる。本来なら一匹狼の情報屋たちも、スイーツを食べると言うことを名目に深夜の情報交換会を行う。そういった特殊な絆の結び方もあるのかもしれないと思った。
 ただ、広げた風呂敷の畳み方があまり好みではなく、最後の1章分で一気に評価が下がってしまった。あと、闇金の業界にそんなに共感できないと言うのもそれを助長している。トレイチというけれど、年利に直すと43%にもなってしまうんですよね…

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