十文字青作品の書評/レビュー

黒のストライカ (5)

誘惑されても我慢する修業
評価:☆☆☆☆★
 人間の幼なじみである遠野しはるを助けるため、夜魔(ゴーダン)の最後の生き残りにして宗子(ストライカ)の高夜椋郎は、自身を庇護する大目天と、その落胤にして友人の蝦夷井悠を裏切り、しはるに毒を盛った三浦紅を、大目天の牢獄から脱走させた。
 その結果、大目天と友好関係になった、夜魔を滅ぼした白の血族(ヴァイス・ブラッド)の東方博士ジークリードと、かつての椋郎のメイドだったタヤチナに追われることになり、裏切られた恨みをぶつけてくる蝦夷井悠に狙われることになる。そんなピンチの状態を切り抜けるため、真の奈落(アビス)に達するためという名目で、夜魔(ゴーダン)の旺盛な性欲を制御して力に変えるため、金狼族の女族長シャーリー・ランスボーン、吸血鬼・蔵島翠子、吸血鬼狩り・西神麗らがエロく攻めて来て、その欲望に耐える修業をすることになる。

 巨乳、ロリ、天然など、色んなヒロインたちが、主人公を徹底的に誘惑する。それを頑張って耐えしのいだ先には、幼なじみとのイベントが待っていることになる。もう何だか分からない。
 エロでパワーアップしようとして、結局純愛で事件を解決するという展開。いままで苦労して来たのが疑問なほど、あっさりと様々な問題が片付いていく。


黒のストライカ (4)

信頼と思惑
評価:☆☆☆☆★
 夜魔(ゴーダン)の最後の生き残りにして宗子(ストライカ)の高夜椋郎の人間としての幼なじみである遠野しはるが謎の病に倒れた。徐々に衰弱していく様子を見ながらも、椋郎には何もできない。そんなとき、夜魔を滅ぼした白の血族(ヴァイス・ブラッド)の東方博士ジークリードと、かつて椋郎に仕えたタヤチナが、教師と転校生という形で、彼の前に現れる。そしてそれは、椋郎を庇護下におく大目天が、彼らの日本での活動を認めたということを意味していた。
 そのタイミングと、彼らの仲間であった三浦紅が大目天の本拠地である濡れ谷に引き渡されたと知り、しはるの衰弱の原因は彼女にあると察した椋郎は、何故か彼に対する好意を鮮明に表す様になった、大目天の落胤である蝦夷井悠に頼み、彼女との面会を取り付ける。しかし、三浦紅が持ち出して来た条件は、彼女を脱獄させることだった。

 奈落(アビス)を使った後遺症で、夜魔の本来の性質である早熟と淫乱さが椋郎を支配しようとする。しかも、彼に周りには、金狼族の女族長シャーリー・ランスボーン、吸血鬼・蔵島翠子、吸血鬼狩り・西神麗など、彼に何をされても良いと思っている眷族がいっぱいだ。
 その誘惑を必死に乗り堪える彼なのだが、今回は蝦夷井悠までその誘惑に参戦してくる。自分が女であることを忌避していたはずの彼女の思惑は一体どこにあるのか?

 というわけで今回も、巨乳にうずもれて我を失いそうになったり、幼女に触られていきり立ったり、上四方固めをかけられてむしゃぶりつきそうになったりする主人公の憐れな混乱ぶりと共に、幼なじみを助けるために好意を見せた存在を裏切るという選択の時が描かれる。

黒のストライカ (3)

屈辱は己が手で晴らす
評価:☆☆☆☆★
 吸血鬼狩り・西神麗が、その住処であるテントから姿を消した。事件に巻き込まれたのではと心配する遠野しはるの声を受けて、夜魔の宗子である高夜椋郎は、金狼族の女族長シャーリー・ランスボーンに探索を命じる。
 一方、学校では、突然、天狗の蝦夷井悠にからまれた吸血鬼の蔵島翠子が、生徒の中に吸血鬼の牙を受けた者たちがいることに気づく。それは、西神麗の父が滅ぼした一族の生き残り、鷺志摩有理が行ったものだった。
 彼により屈辱を受けた蔵島翠子は、自らの誇りと宗子のために、リベンジマッチを挑む。

 奈落を使った後遺症で欲情しまくっているにもかかわらず、それを何とか抑えようとする椋郎と、自覚・無自覚かかわらず、それを刺激する周囲の女の子たちがヤバい。

黒のストライカ (2)

振り回される椋郎
評価:☆☆☆☆★
 夜魔の最後の生き残り、宗子の高夜椋郎の平穏に見えた生活は、白い血族の来訪により破られた。そしてその時に用いたアビスの後遺症から椋郎の煩悩が刺激され、近しい女の子たちを見ると欲望が表出してしまいそうになる。
 隣に住んでいる遠野しはるの私服姿にドキドキしたり、大目天の娘・蝦夷井悠に倒錯的な感情を抱いたり、蔵島翠子の肉の海におぼれそうになったり、西神麗にすら感じてしまう。そんな環境で禁欲生活を送っていた椋郎のもとに、金狼族の生き残りで、当時は妹のように可愛がっていたシャーリー・ランスボーンが訪れる。彼女は瀕死の重傷を負い、永い眠りについていたのだ。

 2巻はバトル展開よりも、椋郎を慕う女の子たちの鞘当て的な展開が多めになっている。圧倒的なレベルでの武力を持ちながら、それが通用しない女の子たちに振り回される椋郎の姿を楽しみたい。

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黒のストライカ

夜の王子の災難
評価:☆☆☆☆★
 夜魔の最後の生き残りにして宗子たるクロスティアン・ギュスト・ゴーダンは、日本を霊的に守護する大目天との約定の下、人間の高夜椋郎として高校に通っている。椋郎の隣にいるのは人間の少女、遠野しはる。そして大目天の落胤である蝦夷井悠の監視の下で、とにかく目立たぬよう、他人に関わらぬように暮らしている。
 しかし、同じ学校の通っていた夜魔の眷属のヴァンピール蔵島翠子や、吸血鬼狩り西嶋麗と知り合ったことにより、急に彼の周りが騒がしくなる。そして、椋郎に好意を寄せて来る三浦紅の存在。かつて夜魔を滅ぼした白の血族の目的とは何なのか?

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ぷりるん〜特殊相対性幸福序説〜

一歩間違うと自己完結的でイタいことになる
評価:☆☆☆☆★
 ぷりるん。何か全く分からない。あらすじを読んでも見当がつかない。決まった時刻に現れる妖怪だろうか、とも思った。しかし、本文を読めばすぐ分かる。
 ぷりるん。だが、未だに意味は分からない。

 複数の女性から好意を寄せられる高校生ユラキの心の動きを描いた作品なのだが、登場人物の言動はどれも極端で、中庸という言葉を知らない。遠くから見ている分には指を指して笑えるが、お近づきにはなりたくない感じの人たちだ。美人なのに。
 まあしかし、この極端さも、一般的な問題を考える上での極限を取っていると考えれば理解できなくはない。誰しも彼ら彼女らの様な要素は少なからず持っているわけであり、一般解はこれら特殊解の間にあると捉えられなくもない。

 再びタイトルに戻って、特殊相対性とは何だろう。単にゴロでつけただけの可能性も大いにあるが、ここは敢えて、何かこだわりがあると考えてみる。
 人の心は時間や距離が容易に変えてしまう。ある時点では相思相愛だった関係も、どちらかの気持ちが冷めれば、心の距離は開いていくだけだ。片方だけががむしゃらにがんばっても、一時は何とかなるかもしれないが、どうにもならない。そういう関係性が相対性なのだろう。
 では、何故に一般ではなく特殊なのか。登場人物たちが特殊だから、と解釈するのもありだが、ここは本家に敬意を表し、これらの関係性に何か不変なものがあるから、と解釈してみたい。そう思って見てみると、変わらないものが一つある。ぷりるんである。ぷりるんは徹頭徹尾、変わらない。その言動は常に一貫しているし、それを支えるものも揺るがない。ぷりるんが変わらずにいるからこそ、ユラキは他者との関係を定義できるのである。

 小学生には間違っても薦めない。中学生にも躊躇する。ただ、何か伝えたい想いは強く感じられる作品である。

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