志村一矢作品の書評/レビュー

竜と勇者と可愛げのない私 before レミエルの伝説

おばあちゃんの伝説
評価:☆☆☆☆★
 魔王メイ=ヘムの長女ロザリンデの右腕だった魔人ハオスにより村人を石に変えられてしまったクロード・レンブラントは、ハオスの命じる「天使の涙」を手に入れるために旅に出た。それを購入するお金を手に入れるため冒険者になろうとするクロードは、魔法使いとして仕事を受けようとする。
 たまたま魔法使いの仲間を欲しがっていた、見た目は子供だけれど凄まじい技量を持つ剣士のレミエル・セラ・ハイドフェルトと僧侶のアルマ・ヴィオレッタから、仲間にしてもらうための試験を課されたクロードは、山間の村を襲う竜退治に同行することになる。

 「竜と勇者と可愛げのない私」の外伝で、主人公の相棒の祖母が主人公となっている。

竜と勇者と可愛げのない私 (8)

最後に勝利するものは
評価:☆☆☆☆★
 聖母竜ヴァナディースの竜騎士となったレックス・イル・ハイドフェルトは、アンジュ・セレッソやトモエと共に魔王メイ=ヘムとの会談を果たし、理解し合うことはできながらも、結局、戦うことになってしまった。その戦闘も終盤にさしかかったとき、竜王シグルドが現れ、卑劣にも魔王のメイ=ヘムに不意打ちを食らわせるのだった。
 それでも魔王の意地は竜王へと一矢報いさせ、レックスたちには最後の戦いに向けた半年間の準備期間が与えられた。その時間を利用し、レックスやアンジュは、今度こそ竜王を倒すための修行に励むことになる。

 まあ、別のことにも励むけど。そんな最終巻だ。

竜と勇者と可愛げのない私 (7)

魔王への直談判
評価:☆☆☆☆★
 聖母竜ヴァナディースの竜騎士となり、世界の壁を越える力を得たレックス・イル・ハイドフェルトに乗り、アンジュ・セレッソとトモエ、魔王の娘アイネイアとノェルは魔界へ降り立った。魔人を苛む黒死病を治せるかも知れないという朗報を持っての帰還だ。
 魔王メイ=ヘムに直談判して戦争を止めてもらおうとするアンジュたちだったが、娯楽のために戦争をしたい魔王の娘クリームヒルトと、強くなることに取り憑かれたイングヴェルデは、アイネイアたちの前に立ちふさがり、超戦闘体による激闘が繰り広げられることとなった。

 だが戦闘は、竜騎士としての力を解放したレックスが有利に進める展開に。そこでクリームヒルトは、イングヴェルデを犠牲として、魔界最後の切り札を持ち出してくるのだった。

 次巻で最終巻とのことだが、今巻はかなり薄い本になっている。でも次巻とまとめると厚くなり過ぎちゃうのかな?今巻はちょっと値段が高いように感じた。
 でも、想いが溢れて慟哭するアンジュとか、腰砕けになるアンジュとかが登場する。

竜と勇者と可愛げのない私 (6)

竜騎士の秘密
評価:☆☆☆☆★
 フェブロニアの女王ティアマリアの理想を追求するため、ティアマリアの意志を継いだルピシアとジェイドが生み出した究極兵器ティル・ナ・ノーグは、魔王メイ=ヘムの超戦闘体バハムートに一蹴されてしまい、彼女が生んだ犠牲は無駄になってしまった。全てをなくしたルピシアを見て、彼女に恨みを抱いていたヨアキム・フィガロや名も無き白竜クシナダは、その恨みを霧散させてしまう。
 しかし、魔王だけではなく、魔王の娘クリームヒルトとイングヴェルデまで現れ、戦いで傷ついたアンジュ・セレッソやレックス・イル・ハイドフェルトに勝ち目はない。だが、唯一無傷だった黒竜ヴリトラと、銀竜ユランの魂に導かれ駆けつけた金竜オルリスにより、何とかピンチを切り抜けた。

 ほうほうの体で戻ったアンジュたちを待っていたのは、竜に襲われて崩壊したコスモスだった。生き残ったヒュルケン・ミディア・キグナス百人隊長やユーシス・ニア・ニューウェイの話を総合すれば、ランドール王国将軍レイヴェン・フィル・ハイドフェルトは魔竜ザッハークに殺され、竜宝玉(カーバンクル)もひとつ失われてしまったという。
 そこに現れたのは、血桜のアイカ。彼女は新たな竜宝玉を取り出し、竜王シグルドと四天竜、そして魔竜の関係と、彼女が保持する竜宝玉を生んだ堕天竜ヴァナディースのことを語り出す。それは人魔戦争におけるもう一人の竜騎士と、魔王妃レダの秘された戦いの歴史だった。

 突如、新たな設定が付け加えられた印象がなくもない。最初から考えていたのだとしたら、一巻でもう少し明らかに伏線を張ることも出来た気がするし。
 どうやら戦いの舞台は、魔界へと移っていく。

竜と勇者と可愛げのない私 (5)

足元が崩れ落ちるような絶望
評価:☆☆☆☆★
 四天竜の一体、銀竜ユランは、アンジュ・セレッソの敬愛するレイヴェン・フィル・ハイドフェルトの手によって殺されてしまった。その剣がアンジュに及ぶ危険性を察知したレックス・イル・ハイドフェルトは、翼竜に乗って兄の下から脱出する。
 そうしてやってきたフェブロニアの帝都デンドロビウムで、レックスとアンジュは、最後の、恒久平和の実現者>ヨアキム・フィガロと、彼に追われるクシナダに出会う。彼らとの出会いは、フェブロニアの政策がもたらす闇を、アンジュたちに教えるのだった。

 庇護者であり敬愛する男性が自分の敵にまわってしまったという、足元が崩れ落ちるようなっショックで塞ぎこんでしまうアンジュを、レックスは何とか元気付けようとする。いつものアンジュに戻ってもらうために。しかしそれは、また新たな戦いが彼らの前に訪れることでもある。
 恒久平和の実現。言葉だけ聞けば理想の様でもあるが、それをもたらすために現実にティアマリアが実施している政策は、国民を傷つけるだけのものに過ぎない。何のためにそれを実現するのか、その目的ではなく、手段そのものが目的化してしまっているのだ。そしてそれには、フェブロニアの最重要秘密が関係している。

 最後はもうクライマックス?みたいな展開になりますが、あとがきによればまだ後半戦に入ったばかりらしいです。

竜と勇者と可愛げのない私 (4)

激しく貫かれたアンジュ
評価:☆☆☆☆★
 魔王の娘アイネイアの説得に成功し、命がけで砦を開放することに成功したレックス・イル・ハイドフェルトとアンジュ・セレッソの前に、レックスの兄にしてランドール王国将軍のレイヴェン・ギル・ハイドフェルトが姿を現す。
 彼は、アイネイアの件を口実に、敵国フェブロニアにいる幼なじみにして<恒久平和の実現者>ユーシス・ニア・ニューウェイに会いに来たと言う。そんな久しぶりの再会の場に、同じく<恒久平和の実現者>のひとりであるソーマ・サイフォスが現れた。

 天空観測所で明らかになるトモエの正体、銀竜ユランの行方、そしてユーシスやレイヴェンの目的の一端が明らかになる。レックスやアンジュは自分の心に従い、自分の信じる道を選び取ることが出来るのか?

   bk1
   
   amazon
   

竜と勇者と可愛げのない私 (3)

魔王の娘たちの事情
評価:☆☆☆☆★
 旅の次の目的地である天空観測所に向かうアンジュとレックス、トモエの耳に、国境沿いの砦が魔王の娘に占拠されたという情報が入って来る。アンジュはレックスを説得し、魔王の娘アイネイアを倒しに行くことにする。しかし、道中、アイネイアを止めようとする魔王の末っ子のノェルと出会い、協力して彼女を止めることになる。
 さらにそこには隣国のピースメーカー・蛇蝎のジェイドも加わり、まさに呉越同舟という状況になってしまう。その中で明らかになる、魔王たちが人間の世界に侵略に来た理由とは?

 誰かを傷つけるのが大嫌いな勇者レックスとの旅の中で、アンジュは彼の考え方を理解する。そしてその結果として、彼女は彼に戦う理由を提示することができるようになるのだ。そこには、レックスを本当に理解していた少女ウェルチとの出会いが大きかったのだろう。
 世界の様々な状況が明らかになっていく一方で、この英雄譚はどこかのんびりと緩やかに進んでいく。

   bk1
   
   amazon
   

竜と勇者と可愛げのない私 (2)

似たもの同士のふたり
評価:☆☆☆☆★
 四天竜の行方を調べるために学術都市に向かうアンジュとレックス、そしてトモエの前に現れたのは、レックスの姉のレムリアだった。学術都市の要職を占める彼女は、弟子でありレックスの幼なじみでもあるウェルチとの勝負をアンジュに提案する。
 ウェルチの言動にイラついたこともあり、その勝負を受けたアンジュだったが、ウェルチと触れあううちに、自分との共通点に気付かされていく。そんな時、二人の前に現れたのは、敵国の要人ソーマと、その従者でトモエとそっくりの容姿のヒナギクだった。そして、彼らの作った魔物との戦いに巻き込まれていく。

 前巻は魔王の娘がラスボスだったけれど、今回の敵は人間。魔物という明らかな敵がいながらも、国同士で対立しているところが人間らしい。
 アンジュたちの旅に、敵国の人間やトモエの謎も絡んで来て、物語は広がりを見せつつある。

   bk1
   
   amazon
   

竜と勇者と可愛げのない私

自分の力で未来を切り開きたいのに
評価:☆☆☆★★
 王宮魔術士の中で唯一の平民出身者であるため、最優秀でありながらも完全に出世の道を閉ざされてしまっている17歳のアンジュが、彼女をとりたててくれた英雄レイヴェンの命を受け、彼の弟でやる気のかけらもないレックスと共に、魔王メイ=ヘムを退治する旅に出ることになる。
 名門の生まれながら貴族の義務も果たさない弟とセットで厄介払いされたと解釈したアンジュではあったが、レックスはやる気がないだけで、騎士としての実力は超一流だった。彼の家付きメイドであるトモエと共に、魔王の住む魔界へ渡るカギとなる、竜王シグルドと会うため、行方の手がかりを握るであろう、シグルドの子の一人である金竜オルリスの住む山へと向かうのだった。

 実力はありながら、家柄や金がないために魔術を極めることが困難なアンジュが、努力してがんばって成り上がる系のお話かと思ったのだけれど、結局は選ばれた力を持つレックスがちょっとやる気を出してがんばるみたいなお話だった。
 もちろん、彼がやる気を出すまでには色々とエピソードがあって、しかめっ面アンジュが可愛らしい感じになったりもするのだけれど、個人的にはやっぱり不満。だってこれって、普通の人がいくら頑張っても、生まれながらにして選ばれた存在でなければ、どうにもできないものはどうにもできない、ということじゃないのかな。
 このままの流れで最後までいくとすると、アンジュは結局、レックスのおこぼれにあずかることでしか、自分の存在を他人に認めさせることが出来ないということになってしまう。まあ彼女が、お姫さま志向の人ならばそれで良いのかもしれないけれどね。

   bk1
   
   amazon
   
ホーム
inserted by FC2 system