新保静波作品の書評/レビュー

暗号少女が解読できない

暗号でしか素直になれない
評価:☆☆☆☆☆
 両親の復縁に伴い、5年ぶりに真昼ヶ崎へと帰ってきた西村拓実は、転入初日の自己紹介で大失敗してしまった。おかげでクラスから浮いた存在になってしまったのだが、そんな彼に声をかけてきたのが委員長の沢渡遙だ。移動教室の行き先が分からず困惑していた彼に、非常に長ったらしく遠回りな道案内をし、それを一発で拓実が理解してしまったことから、二人は友達になることになる。沢渡遙は暗号が大好きな少女だったのだ。
 暗号を作って人に解読してもらうことしか考えていない遙は、拓実の前でスカートを脱いだりブラウスを脱いだり、自宅では弟のまえで真っ裸になったり、かなり変な女の子。しかし彼女の作る暗号を解くことに、次第に拓実も心惹かれていく。

 そんな遙との初デートの日、待ち合わせ場所に来ない遙の代わりの様にやって来た妹の西村知子と共にショッピングに出かけると、その行き先では遙からのメッセージカードがなぜか置かれている。そのメッセージに込められた暗号とは?
 後輩のミステリー好きの野々崎岬や、幼馴染のガキ大将だった少女の中瀬和希など、平凡な少年だった拓実の周辺は、急に騒がしくなっていく。

 ヒロインは直接的に言葉を紡ぐよりも、とにかく暗号で伝えることを好む少女で、主人公は記憶力が取り柄の少年。そんな彼らのラブコメなのだが、転機は全て暗号で訪れる。
 問題文からフェアに解ける暗号がほとんどだが、情景が分からないと解けない暗号もあるので注意。また、途中、ポー「モルグ街の殺人」のトリックをばらす台詞があるので、未読者は要注意。

 第11回SD小説新人賞大賞受賞作品だ。

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