剣の女王と烙印の仔 (2)(杉井光)の書評/レビュー


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剣の女王と烙印の仔 (2)

制御できない力と制御しようとする意思
評価:☆☆☆☆☆
 日本国内での久しぶりの皆既日食が話題になったのは最近のこと。現在では太陽が月の影に入る天文現象として受け入れられている皆既日食ですが、そんな事情を知る由もない古代の人たちは、天変地異の一つとして恐れていたことでしょう。日本では天岩戸に天照大神が隠れた、北欧ではフェンリルが太陽を食べて世界が終わる、などという伝承からもそれは明らかです。
 この恐れは、自分の力では制御することが出来ない現象に対して感じる感情です。しかし、人間の凄い所はこの恐れを恐れのままにしなかったことでしょう。避ける事が出来ない現象ならば何時起きるのかを知ろうという事で、暦や天文の技術が発展していったのでしょうし、ついにそれは人間を月に運ぶことまで成功させてしまったのです。

 この作品でクリスが感じる恐れは、自分の中に存在する得体の知れない力に対するものです。その力は戦場において無類の力を発揮しますが、向かう先に敵味方の区別はなく、引き起こされる結果に彼は打ちのめされることになります。もう一人の主人公であるミネルヴァにしても、自らの死を予知するという制御できない力に己の行動を左右されます。
 一方で、彼らを庇護するフランチェスカが振るう力は人為の力です。知略を巡らし物資を整え人心を掌握して、戦場での勝利を自分のものにします。クリスやミネルヴァの人外の力でさえ、その内側にとどめ利用しようとするのです。

 物語は、銀卵騎士団が包囲殲滅の大ピンチを迎えるところで終わります。クリス達の力が何に起因するかも何となく明らかになって来ました。次々におきる難題を如何に攻略して最善の地点に着地することができるのか、今後の展開が楽しみです。

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