花咲けるエリアルフォース(杉井光)の書評/レビュー


 花咲けるエリアルフォース(杉井光)の書評/レビューを掲載しています。

花咲けるエリアルフォース

ソメイヨシノが結び付ける少年少女
評価:☆☆☆☆★
 世界中のソメイヨシノが絶滅した日、4月8日に戦争は始まった。箱根を絶対防衛線として、この国を東西に分けた内戦は、周辺国の軍事供与の下、激化の一途を辿った。
 戦争が始まった日に両親を喪い戦争孤児となって各地を転々とする仁川祐樹に、一機の戦闘機と一人の少女が現れる。その戦闘機の名前は桜花。そして壱番機・初雪のパイロットである桜子から皇国空軍への召集令状を手渡された祐樹は、連れて行かれた靖国で、絶滅したはずのソメイヨシノが9本残っていることを知る。これらの樹は、あの絶滅の日に、ソメイヨシノを憐れんで泣いた少年少女たちの想いをアンカーとして、自分たちの時間を止めることで難を逃れたのだ。
 そしてその事実を利用して、一人の天才科学者によりつくられたのが桜花であり、そのパイロットに選ばれた一人が桜子であり、祐樹だった。

 同じ様にソメイヨシノに魅入られた少女たち。那須野佳織は開発者を父に持ち、吉田神楽は靖国で敵味方双方の戦没者たちを石に刻み、桜子は誰よりも重い責任に耐えている。そんな彼女たちの中で、祐樹は他に行くところがないという理由で戦いに臨むのだが、初めての実戦で、その重さを思い知らされるのだった。

 文章の雰囲気はいつもの杉井作品の通り。ただ、設定を見ても分かる通り、主人公ははじめの方に「逃げちゃダメだ」とか言いそうだし、ヒロインは「桜子と呼ぶがよい!」とか言いそう。世界観的には、自作飛行機を作ってどこかの塔に向かって飛んで行きそうな気がする。
 主人公とヒロインの関係性は作者のお約束であり、やたらと女性から可愛がられるというのもパターンとなっているので、そういう意味で面白いのは面白いのだが、あえてなぜこの設定なのかは疑問が残る展開になっている。

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