鈴木鈴作品の書評/レビュー

異世界管理人・久藤幸太郎 (2)

宗教問題
評価:☆☆☆☆★
 ヤクタ教総本山のある山の国から、利権関係の大きな変更が提案されてきた。それは、総本山が発行する免罪符の発行量に関する変更だ。これを認めれば、他の国々の国家財政は大きな負担を負うことになってしまう。
 その最初の標的として定められた草の国から泣きつかれ、山の国へと向かった久藤幸太郎は、管理人を神として信奉するシャルフィニア教皇と出会う。一方、久藤幸太郎のクラスメイトである長宮小宵は、勝手にアパートに入り込んで異世界へと来てしまい、ゴンデル枢機卿に拉致監禁されていた。彼女は枢機卿の毒牙から逃れることが出来るのか。

異世界管理人・久藤幸太郎

世界の調停者
評価:☆☆☆☆★
 ある理由で人づきあいがほとんどない高校生の久藤幸太郎は、叔父からあけぼの荘というアパートの管理人のバイトを紹介される。このアパートの住人達は、全て、異世界の国家代表だった。
 異世界において管理人は、国家間の問題を調停する審判者として尊崇を受けている。そんな大役を突然任された久藤幸太郎に依頼された調停案件は、草の国と森の国の間に巻き起こった領土問題だった。

 大使としてやってきた草の国の姫とお付の外交官に振り回されながら、久藤幸太郎は問題の本質に切り込んでいく。

放課後の魔法戦争(アフタースクール・ブラックアーツ) (3)

郷愁と妄執
評価:☆☆☆★★
 伏桜製作所の工房長だった伏桜団慶の後を継いで工房長となったアンチエイジの伏桜三九郎は、神藤華夜やクオーツを生み出すコルドロンの出力式となった春日ねねこを仲間とし、マーチラビット・ワークショップの工房長である蜜月蕩乃とも同盟関係を結ぶことに成功した。
 しかしそれに脅威を覚えたシャドウミドウ・ジャンクヤードの御影ヶ原夜楽とギギリヤ重工のアラビスカ・モーバインは、同盟を結んで伏桜製作所に宣戦布告する。

 この戦争に静観の姿勢を示した桐之宮新開だったが、ギギリヤ重工と密約を交わした長男の桐之宮塵火に暗殺されてしまい、長女の桐之宮仄火は弟の桐原雷火と共に、桐之宮塵火に対して反旗を翻す内乱状態となってしまう。
 この状況の中、黒谷平助は着々と己の執着を果たすべく計画を進めていた。

放課後の魔法戦争(アフタースクール・ブラックアーツ) (2)

初めての争奪戦
評価:☆☆☆☆★
 伏桜製作所の工房長だった伏桜団慶の遺言により、工房の継承権を争う魔法戦争に参加させられた伏桜三九郎は、幼馴染の春日ねねこを守るため、親友の桐原雷火と敵対することになった。魔法を吸収し、複合し、放出するアンチエイジとしての能力に目覚めた伏桜三九郎は、襲い来る敵を払いのけ、神藤華夜と同盟を結び、人工精霊ジャッジの望むように、工房を継承した。
 しかし、その工房の中核であり、クオーツを生み出すコルドロンが不調に陥ってしまう。偶然、そのことを知ったかつての敵である密月呉葉は、自分の保身のために、マーチラビット・ワークショップの工房長である蜜月蕩乃への修理依頼を仲介する。

 その昔は伏桜製作所の一員だったという蜜月蕩乃は、依頼を受ける条件として、伏桜三九郎に対し、自らが妊娠するまでの間、一日一回の性交渉を義務づける契約を提示するのだった。
 クオーツが産出できなければ、神藤華夜の母親の治療が出来なくなる。苦々しい思いを抱きながらも、伏桜三九郎は蜜月蕩乃と契約するのだが、その後の手違いで、事態はより混迷を増す方向へと動き出してしまうのだった。

 一方、敗戦の責任を問われた桐原雷火は、異母姉の桐之宮仄火に身柄を引き受けられることになる。

放課後の魔法戦争(アフタースクール・ブラックアーツ)

目的のために捨てるもの
評価:☆☆☆★★
 伏桜製作所の工房長であった世界最高の魔法使いの伏桜団慶の息子である伏桜三九郎は、メイジとしての才能がなかった。魔法が使えない人間を人間とも思わないメイジの考え方にも嫌悪を抱いた三九郎は、メイジと決別するために伏桜製作所の相続権を放棄する。
 しかし、伏桜団慶の遺言を履行する人工精霊ジャッジにより、三九郎も工房を継承するための戦争に参加することになってしまった。伏桜製作所の工房から、レベルがひとけたの魔法使いが参加し、時間を限定して戦いを繰り広げる。その目的は、相手の持つタグを壊すことだ。三九郎はさっさとタグを放棄しようとするのだが、そのタグが幼馴染である春日ねねこだと判明し、戦争を降りられなくなってしまう。

 しかもその戦争にはなねこの友人の神藤華夜や、三九郎の友人である桐原雷火も参戦しており、同じ学校の密月呉葉や、教師の黒谷平助とも敵対することになってしまうのだった。

ウチの姫さまにはがっかりです…。 (4)

皇女様にも怪しい趣味が…
評価:☆☆☆☆☆
 国民には絶対秘密だけれど、ドSの趣味がある王女イリステラ・クィンストラウスは、こっそりと侍女のサージット・エルド・ティリエルや騎士のアッシュ・ウィリアックにソフトな鞭打ちをしたりして楽しんでいる。ティリエルはそれを至上の喜びに感じているから良いとして、アッシュはそんな趣味もないし、外に漏れると大人気の王女様の汚点になると、必死にいさめる毎日だ。
 そんなちょっと変わった日常に大ピンチが訪れる。イリステラが唯一逆らえないおねえさま、帝国第二皇女ディアマンドラ・ドル・ベテルギアスが王国を訪れる。騎士団長ドル・ドーザが任務に失敗したため、10年前のイリステラへの貸しを回収に来たというのだ。その条件は、イリステラがディアマンドラの後宮もとい侍女団に加わるか、代わりにティリエルとアッシュを差し出せ、というもの。

 そんなことは絶対にしたくないイリステラたちは、ディアマンドラの真の望み、10年前にかけられた呪いを解くことを実現し、何とか免れようとするのだが…。

 この世界の皇族・王族は、みんな同種なのかな〜と。まあでも、義務はちゃんと果たすので、ギリギリOKということで何とか。
 今回、キキモラ・マインドハッカーをはじめとして、魔族が活躍する要素を与えられたということは、物語の方針的に大きいものだと感じる。つまりこれは、これまでの確執を失くした方が、様々な問題にブレイクスルー出来る可能性を示しているからだ。まあ、そんなことが簡単に出来たら、そもそも問題が起きようもないのだけれど。

ウチの姫さまにはがっかりです…。 (3)

アッシュの受難
評価:☆☆☆☆★
 竜殲騎士見習いとなり、サドっ気のあるクィンストラウス王国第一王女イリステラに仕えているアッシュ・ウィリアックのもとに、故郷から幼なじみの猟師リュカ・ケイニスがやってくる。アッシュ大好きなリュカは、アッシュの婚約者を名乗り、イリステラからアッシュを借り受けて、自分の仕事に連れて行こうとする。
 当然のことながらイリステラやメイド長のサージット・ティリエルは反対し、アッシュを引きとめようとするのだが、肝心の、王女に忠誠を誓った騎士であるはずのアッシュは、幼少時代にリュカから受けたトラウマ級のあれやこれやが頭によみがえり、考える前に身体が反応して、王女たちを裏切り、リュカについていくことを承諾してしまう。

 今回、リュカが請けた仕事というのは、精霊獣エリスロスを倒すというもの。これまでは大人しくしていたのに、なぜか最近暴れ始めたらしい。リュカは伝家の武器、月弓セイレンフィリスと煌矢ヘリオンフォロスを携え退治しに向かうのだが、イリステラたちがそれを黙っているはずはなかった!
 こうして、アッシュ最大の受難、女装の危機から貞操の危機が始まる!

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ウチの姫さまにはがっかりです…。 (2)

良い子の魔族と見習い竜戮騎士のイケナイ関係
評価:☆☆☆☆☆
 聖夏祭で、年に一度の王国の霊的な浄化をする役割を担う王女イリステラのがっかりな趣味はおさまることを知らず、それを諌める竜戮騎士見習いのアッシュは、王女の趣味を知らない重鎮たちから白眼視される始末だ。
 そんなとき、聖夏祭を失敗させるため、魔族のおちこぼれキキモラが派遣されてくる。彼女は能力的には高いのだが、魔族としては致命的に優し過ぎるのだ。そんなキキモラは、お忍びで祭に出かけた王女やアッシュと出会い、メイドとして働くことになる。

 そして隙を見つけて王女にかけた呪いは、心の中の悪い願望を増幅するもの。王女の趣味を知らない人々は、何の意味もない呪いと笑い飛ばすのだが、アッシュたちは顔面蒼白になってしまう。もしそんな呪いを受けたまま儀式を行えば、王女の加虐趣味が増幅され、王国は穢されてしまう。
 なんとかキキモラを捕らえて呪いを解かせようとするのだが、逆にはめられたアッシュは獄につながれてしまうのだった。

 悪いことが苦手な魔族が、アッシュに理解されて惚れてしまうという展開。逆に、王城内ではその努力が理解されないアッシュは、キキモラに理解されてしまう。
 そんな状況の中、いけない趣味を持つ王女さまはどんな結果を導くのか?ライトでバカらしく笑えながら、ちょっとしんみりと考えさせられるところもあります。

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ウチの姫さまにはがっかりです…。

変態王家の血筋の犠牲者
評価:☆☆☆☆☆
 体力も剣技も未熟ながら根性は一人前の騎士見習いアッシュは、仕えるべき第一王女イリステラとその侍女ティリエルの秘密を知ってしまう。それは、お淑やかで慈悲深い、聖女とも讃えられる王女が実はドSであり、ティリエルが隠れMであること。その一部始終を見てしまったアッシュは、王国の未来を守るため、王女たちにもうそんなプレイはしないように諭す。
 これで王国の未来も安泰と思ったのも束の間、騎士叙勲を受けたアッシュは、騎士団長から呼び出しを受ける。その話の内容は、なんと未熟な彼を王女付きの騎士にしたいとの要望があったとのこと。しかし、未熟者を王女につけるにはいかないと、アッシュは騎士団長と勝負に勝たなければクビということになってしまう。
 責任を感じた王女は、侍女のティリエルにアッシュの稽古をつけてもらうことにするのだが、それは王女の嗜虐趣味に付き合う人生の始まりとなるのだった。

 とてつもなくバカらしい設定から始まるわけだが、それが最後まで貫かれているので、これはこれで面白い。特に、イリステラに虐められるのが好きなティリエルが、反面、アッシュには鬼教官として対し、それでいながら、王女にせめられて嫌がっているアッシュに嫉妬する二面性が良いと思う。
 唯一の良心ともいうべきアッシュが、未熟ながら必死に忠誠を尽くし、かつ虐められる様を笑いながら読んで欲しい。とにかくバカバカしい。

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