砂義出雲作品の書評/レビュー

天網炎上カグツチ

バカバカ面白い
評価:☆☆☆☆★
 ツイッターなどで、「天気がいい」とかどうでもよい呟きを投下しても必ず大規模炎上してしまう生まれついての炎上体質を持つ高校生の匂坂焔は、生徒会副会長で八雲重工を経営する八雲華蓮のスカウトを受ける。彼女が開発した人型のパワードアーマー《カグツチ》は、ネットでの炎上をエネルギーに変え動かすことができるのだ。
 脅されて正義の味方をすることになった匂坂焔は、ネットを廃絶しようとしている悪の組織WWR(ワールドワイド・レクイエム)との戦いに加わることになってしまう。クラスメイトの戌井京子、ネットアイドルの猫宮由希、神絵師の卯月桃香などの美少女パイロットたちを仲間に加え、嫌々ながら炎上していく焔の運命は?

寄生彼女サナ (5)

守りたい大切な存在
評価:☆☆☆☆★
 回虫のパラシスタンス(寄生虫の擬人体)である櫂実亜須香に告白された増川唐人を目撃して、日本海裂頭条虫(サナダムシ)のパラシスタンスであるサナは家を飛び出してしまった。そしてそのサナが、日本住血吸虫のパラシスタンスである相馬住乃に監禁されていることが判明する。
 ところが、彼女が学校を支配し、パラシスタンスを排斥する勢力で蔓延させてしまったため、サナを助けるためには、彼女たちのルールにのっとって動かなければならない。そしてそのルールとは、生徒を陪審員とする、パラシスタンスを裁く疑似裁判だった。

 増川桜の姉にしてアイドルの倉里姫こと増川姫と、増川唐人、そしてパラシスタンスの深い関係が明らかにされる。パラシスタンスと人間を決定的に対立させようと試みるレストア・ディストピアの長きにわたる陰謀に対し、唐人とサナは自分たちの居場所を守ることができるのか?
 シリーズ最終巻となっています。

寄生彼女サナ (4)

友達になれない関係
評価:☆☆☆☆★
 増川唐人の従妹の増川桜の姉である増川姫、アイドルの倉里姫の行動の結果、日本海裂頭条虫(サナダムシ)のパラシスタンス(寄生虫の擬人体)であるサナと唐人の関係は少しギクシャクしてしまった。
 そんなとき、北海道に渡った竜斎寺志保とロイコクロリディウムのパラシスタンス・ロイ子の行方を「パラミナティ」につかまれたことが発覚、彼女たちを助けるために、生徒会長の櫛名田観琴の伝手を頼り、回虫のパラシスタンスである櫂実亜須香らと共に、北海道へ向かうことにする。

 北海道に到着し、宿泊場所へ向かう増川唐人とサナは、突如、吹雪に見舞われ、そこでエキノコックスのパラシスタンスである楼倉えきのと遭遇する。そして、櫛名田観琴と仲良くなった楼倉えきのは、北海道を出て学園にやって来て騒動を巻き起こすことになるのだった。

 組織の話やレストア・ディストピアという神のごとき存在、新たなパラシスタンスが登場すると共に、サナと唐人の関係の変化が描かれる。サナと唐人、えきのと観琴という、親しくなろうとしてなれないふたつのペアが登場する。それぞれがなぜ親しくなり得ないのか、その違いが対比されている。

寄生彼女サナ (3)

初恋の彼女
評価:☆☆☆★★
 日本海裂頭条虫(サナダムシ)のパラシスタンス(寄生虫の擬人体)であるサナに寄生された増川唐人は、回虫のパラシスタンスである櫂実亜須香を仲間に加え、パラシスタンスを狙う謎の組織「パラミナティ」に対抗するため情報を得ようとしていた。そんなとき、組織を裏切った竜斎寺志保とロイコクロリディウムのパラシスタンス・ロイ子から、組織が狙っている人物の情報を手に入れる。その人物とは、突発性淫乱症候群の従妹の増川桜の姉である増川姫、アイドルの倉里姫だった。
 たまたま文化祭のイベントの打ち合わせで来ていた倉里姫に会うべく出向いた唐人とサナは、彼女のマネージャーの鮎川白美と、そのマネージャーの横川セルカに出会う。彼らの反対を押し切り、文化祭イベントへの出場を決めた姫は、唐人からの質問に答える代償として、アイドルオーディションで彼がプロデュースするアイドルの卵を優勝させるように命じるのだった。

 組織絡みの話は真面目な設定なのだが、それを真面目に描くと売れないからなのか、またも学園内での馬鹿馬鹿しいイベントが繰り広げられるだけの展開になっている。今回は文化祭とそのイベントでのアイドルオーディションだ。
 寄生虫彼女というありのままのキャラクターでブレイクを起こしたサナがトップアイドルへの道を歩み始める…わけでもなく、自虐キャラの櫂実亜須香が天然萌えで全てを奪い去る…というわけでもなく、オチだけ真面目になるから、どっちつかずの印象を受けてしまう。二兎追う者は一兎をも得ずの典型例という感じだ。

寄生彼女サナ (2)

あの青いので、経済戦争!
評価:☆☆☆★★
 増川唐人の許にはちょっと変わった人材が集まっている。突発性淫乱症候群に罹患している、お兄ちゃん大好きな従妹の増川桜、唐人に利用尽くされたいと考えている友人・宮入丈児、男子生徒たちを誑し込む養護教諭の綺羅先生、巫女服の生徒会長・櫛名田観琴らだ。しかしその最たる者は、日本海裂頭条虫(サナダムシ)のパラシスタンス(寄生虫の擬人体)であるサナと、回虫のパラシスタンスである櫂実亜須香だろう。
 パラシスタンスを狙う組織から彼女たちを守るのが唐人の意志。そんな彼に魅かれたのか、サナは唐人の彼女にして欲しいと迫るが、宿主と寄生虫の間に恋愛が成立するのかが、目下、唐人の悩みどころだ。だが、見た目は完全に美少女なので、いきなり隣に寝ていたりするとびっくりする。

 そんなある日、彼らの学校に組織の命を受けて転校してきた少女・竜斎寺志保が現れ、全校生徒に対し、あの青いぎょう虫検査シート「ポキール」の改良版「ポキ」を用いてパラシスタンス狩りを行うと宣言する。さらには、新たにカタツムリに寄生するロイコクロリディウムのパラシスタンス・ロイ子が現れ、桜と淫語で意気投合したりもするのだが…。

 擬人化寄生虫の美少女に頼りきりだった1巻からの脱却を図ろうと模索した側面と、これまで通りエロサイドで突破を図ろうとした側面が折衷しており、逆にどっちつかずになってしまった印象をぬぐえない。
 後半はポキを通じた経済戦争に発展したりもするのだが…アイデアは面白いけれど作品にするにはもうひとひねり必要かも。

寄生彼女サナ

いつでも準備オッケー
評価:☆☆☆☆☆
 増川唐人は他人に関わらずに生きていきたいと思っている高校生だ。しかし、朝食を作ってくれる従妹の増川桜には慕われているし、宮入丈児という友人もいる。頼れるお姉さんの様な養護教諭・綺羅もいる。そんなある日の朝、遅刻しそうになって無理矢理ご飯を詰め込まれた唐人は、テーブルの上に広げられていた、父親の実験に関する何かまで食べさせられた。
 その結果、異常な腹痛にさいなまれた彼の腹から飛び出してきたのは、日本海裂頭条虫(サナダムシ)のパラシスタンスを名乗るサナ。それは彼の腸に寄生しながら、分体という宿主と同じ種に擬態した存在を体外に出すことが出来る、意識を持った進化した寄生虫なのだ。しかも美少女!

 唐人を守るというサナなのだが、そのサナに寄生されてから、唐人も身体能力が上がって不思議な感じ。しかも寄生虫であるため、四六時中、サナと唐人は一緒。それに嫉妬した桜の性的暴走に巻き込まれ、静かだった唐人の日常は、途端に騒がしくなってくる。
 それに呼応するように、クラスにいる物静かな転校生・櫂実亜須香の口数も増えているような…。そんな唐人の明日はどっちだ!?

 デビュー作とは思えないほどの、ソツなくこなれたラブコメ作品になっている。もちろん、その内容に合致したイラストに恵まれたという幸運もあるのだろうけれど、サナの無垢さと桜の耳年増な感じのバランス感覚が素晴らしい。一方で生徒会長はキャラを作りすぎてイマイチという感はある。
 寄生虫の美少女という設定だけを聞いた時には、どうせラブコメにするなら過剰な設定なのではないかと思ったが、他人との関わりと寄生とを結びつけるような解釈を見たときに、一定の意味のある設定なのだなと理解した気がする。

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