澄守彩作品の書評/レビュー

I.R:I.S (1) Indirect Ruler:Infinite Seizor

守られるばかりではなく
評価:☆☆☆☆★
 ある時、世界は百万足らずの超能力者が建国した国によって征服された。そんな支配者の国が恐れるのは、新たに生まれる超能力者だ。ゆえに、一定以上の超能力を持った子供たちは、特殊な学校に集められて教育を受けることになっている。
 そんな学園のひとつである桜ヶ丘学園に通う黒鋼和人は、最低ランクの超能力者と周囲に理解されている。超能力者はエーテルを支配して性質を変えることで能力を発揮するのだが、彼はその支配域が極端に狭いのだ。わずか2.7cmしかない。

 使えない壁役としてチームをたらい回しにされていた黒鋼和人だったが、学園第一位の超能力者である皇理緒からチームに誘われる。彼女は、黒鋼和人が持つ、エーテルが性質によって六色に見えるという特異性が、何か彼自身の秘められた能力と関係していると考えたのだ。
 その様子を見た第二位の超能力者である鑓見内春姫は、黒鋼和人を奪うことで皇理緒を失調させることを狙い、彼にちょっかいをかけてくる。

 いつまでも皇理緒に守られっぱなしで能力が成長しないことを担当教官の東堂恵実にした黒鋼和人は、彼女に騙され、低位のDブレーンにあるゆえにエーテル支配の閾値が低い異世界アリウスで能力の特訓をさせられる。だがそこには、普通の超能力が全く通用しない、第七のエーテル色である黒を持つ高次生命体ラルヴァが人間を襲っていたのだ。

魔法使いなら味噌を喰え! (4)

味噌を食ってパワーアップ
評価:☆☆☆☆★
 八丁屋ノエリ博士事件以来、同居する中央ヨーロッパのマジエール公国の第二公女アルテミシア・ジュブヴィエーヴ・デ・マジエールとの距離感に迷いが生まれた八丁屋将太は、これまで通りに振る舞えなくなってしまった。同じく同居する田中麗羅らと共に、第一公女セレスティーヌ・エディト・デ・マジエールの別荘へと遊びに行っても、どこかよそよそしくなってしまう。
 そんなとき、セレスの従者であるマヌエラから、セレスに味噌料理を食べさせるというアルバイトが舞い込んでくる。金欠でクリスマスプレゼントも買えない将太はオファーを受けるが、それを聞いたアルも助手をすると言い出してしまう。さらには、真界王家第九位継承者リズ・リシュエンヌ・デ・マジエールまで事態に絡んできて、キッチンでは緊張状態が生まれることになるのだった。

 シリーズ最終巻。冬だけれど水着回。セレスはこれまで通りだけれど、今回はマヌエラにかなり冒険させている。ところでカバはあまりにも報われないので、何とかしてやって欲しい。

魔法使いなら味噌を喰え! (3)

母親に連れられ全国行脚
評価:☆☆☆★★
 中央ヨーロッパのマジエール公国の公王の命により、第一公女セレスティーヌ・エディト・デ・マジエールと第二公女であるアルテミシア・ジュブヴィエーヴ・デ・マジエールは、八丁屋将太の持つ「MISOキャンセラー」という魔法阻害因子MISOの影響を無視できる能力の秘密を明らかにするため、大嫌いな味噌を食べる生活を送らされていた。
 そんなある日、八丁屋将太の母親である八丁屋ノエリ博士が突然現れ、二百年前から味噌を食品と認知させなくした魔法を維持している魔昇石を探すために、センサーとして八丁屋将太を拉致する。

 遊び相手を奪われたアルテミシアや、担任でもある田中麗羅は、ノエリに抗議をするのだがとりあってくれない。はじめは嫌々ながら連れ回されていた八丁屋将太だったが、魔昇石を壊せば味噌を食品と認知させない魔法が解かれると聞かされ、毎日、学校が始まる前に、移動魔法で全国を探索する旅に飛び回ることになる。

 八丁屋将太の父親である八丁屋太志の面影を息子に見いだして欲情する母親という変態性があるのかと思いきや、それには事情があると知り、ちょっと一安心。
 しかし、このように、切っ掛けとキャラクターの行動の連続性がわかりにくい描写も多く、もう少し落ち着いて書いたら、という気もする。慌てて急いで結果に飛びついている感じがしちゃうんだよね。

魔法使いなら味噌を喰え! (2)

恨み晴らしますの王女様
評価:☆☆☆☆★
 中央ヨーロッパの小国・マジエール公国はこの世界における魔法の中心地。その第二公女であるアルテミシア・ジュブヴィエーヴ・デ・マジエールは、日本の魔法学校の学生である八丁屋将太の許で暮らすことになった。
 その理由は、彼が「MISOキャンセラー」という魔法阻害因子MISOの影響を無視できる能力を持っており、それを現代人が呪いによって忘れさせられた味噌を彼が食べ続けたために得られたと仮説されているためだ。その検証のため、アルテミシアは大嫌いな味噌を無理矢理食べさせられる日々が続いている。

 そんな彼のところに、今度は真界王家第九位継承権を持つリズ・リシュエンヌ・デ・マジエールがやってくる。彼女は第一公女セレスティーヌ・エディト・デ・マジエールとアルテミシアに強い恨みを抱いており、将太も彼女らに対して同様の思いを抱いていると考えて、仲間になろうと言い寄って来たのだ。
 話を聞いてみると、彼女がアルテミシアたちを恨むきっかけになったのは、将太が真界に不法入国した幼少時の奇行だったことを知り、彼女を受け入れることに。アルテミシアとリズに二枚舌を使い、何とか二人の仲を取り持とうとするのだが、同居するカバ教師の田中麗羅には嫉妬の炎を燃やされてしまう。

 不安定ながらも何とか彼女たちの仲を取り持てそうかと思った時、リズの守護者を自任する騎士グスタ・バローが日本を訪れ、騒動を巻き起こす。そして将太にも、MISOキャンセラー以外の魔法を使える可能性が浮上し…。

 今回の設定はちょっと「M0‐エム×ゼロ‐」っぽい所がある。どこがそうかというとまるっきりネタバレになっちゃいそうだが、読めば勘の良い人はすぐ気づくことだろう。
 もういい加減、将太の母や公王を出しても良いんじゃないかな?それとも出さないことでその凄さを引っ張り続けるつもりか…。出落ちになっちゃったらイヤだもんね。

魔法使いなら味噌を喰え!

味噌汁の飲めない世界
評価:☆☆☆☆★
 中央ヨーロッパの小国、マジエール公国がこの世界にもたらした魔法は、その絶大な効果により、瞬く間に世界中へ伝播した。かくして魔法は、国家戦略上、欠くべからざる要素となったのだが、それも、日本が魔法抑止物質「MISO」を開発したことで一変する。
 大豆の発酵食品から抽出されたMISOは、それが散布された範囲では魔法が使えなくなる。ゆえに、世界を席巻するかに思えたマジエール公国は、今も魔法分野で世界トップでありながら、小国のまま存在している。

 そんな世界の魔法高校に通う八丁屋将太のもとに、マジエール公国の第二王女、アルテミシア・ジュブヴィエーヴ・デ・マジエールが降ってくる。将太の母親が彼をアルテミシアの教育係として推薦したらしい。しかし、将太の魔法の実力はかなり低い。それなのになぜ…そう、将太には、他の魔法使いには使えない魔法がひとつだけ使えたのです。
 アルテミシアを連れ戻すためやって来た護衛のマヌエラ・ベシェントリに殺気を向けられたり、アルテミシアの姉のセレスティーヌ・エディト・デ・マジエールには恋人役をさせられたり、セレスの婚約者のタパニ・ピエール=オーギュスト=ルイ・デ・マジエールが引き起こす陰謀に巻き込まれたり、彼の日常はグチャグチャ。それでも今日も、一緒に暮らす担任の田中麗羅や、友人の諸岡武一と共に、この世界から失われて久しい味噌を食う。

 魔法とそれを阻害する物質、そしてその効果を打ち消す力という、いかにも中二的な設定を用いつつも、無難に着地させている。魔法の設定的には「オワ・ランデ!」にかなり近い。あんなエロさはないけど。
 この世界に味噌がない理由と、その効果についてきちんと説明したことには好感が持てるが、クライマックスの後出し設定にはちょっと不満。魔法のインフレーションを起こして解決に持っていくのも中二的な気がする。

 次巻以降は、アルテミシアやセレスを煙に巻く公王が登場して圧倒的な存在感を示すのか、あるいはあくまでも影の存在として物語を締めるのか、そのあたりに注目してみたい。

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