瀬那和章作品の書評/レビュー

雪には雪のなりたい白さがある

評価:☆☆☆☆★


神さまは五線譜の隙間に

評価:☆☆☆☆★


フルーツパーラーにはない果物

評価:☆☆☆☆★


夜蝶の檻

評価:☆☆☆☆★


花魁さんと書道ガール

評価:☆☆☆☆★


婚活シュート!

なでしこ婚活
評価:☆☆☆☆★
 なでしこリーグ所属のプロサッカーチーム「川越ブルーヘッグス」所属で、川越の虎との異名をとった琴井ナツは、29歳で引退を決意した。
 サポーターやチームメイトに惜しまれて引退したまでは良かったものの、これまでは人生の全てをサッカーにつぎ込んできたため、途端にやることがなくなってしまった。もちろん、昼間は仕事をしているのだが、夜が一人きりでさみしい。

 元キャプテンで引退以来、疎遠になっていた牧野香織を本間雪雄が経営するバー「オフサイド」へ呼び出し相談したところ、香織はおしゃれな大人の女性に変貌していた。しかもイケメンを捕まえて結婚するという。
 彼女の姿を見て一念発起したナツは、寂しさを紛らわすには結婚しかないと思い込み、婚活を行うと宣言する。しかしいかんせん、サッカーばかりをやって来た彼女には、恋愛経験値がなさすぎた。様々な失敗を繰り広げ、彼女がたどり着く幸せとは?

好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く

三人姉妹の恋愛模様
評価:☆☆☆☆☆
 神戸に暮らす小西紗子、小西朝美、小西結衣の三姉妹の恋愛模様を描く連作短編集だ。姉妹の恋愛模様を通じて、家族とは何かを問いかけている。ただし、この家族に親はほとんど関わらない。家という要素を取り除いて、姉妹の関係性に着目している。このことにどんな思いが込められているのかは分からない。

「好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く」
 長女の紗子は、小さな事務所でンテリアコーディネーターの仕事をしている。最近は、目標にして入社した小岩井と仕事を一緒にできていることが嬉しい。そして彼のことが好きなのに、好きだとは言えない。彼には妻がいる。
 好きになってはいけない人ばかりを好きになってしまう紗子には、紗子のことを好きだと言ってくれている年下の男シュンがいる。何かあれば、美容師をしている彼の店でシャンプーをしてもらい、ありのまま話す習慣が四年も続いている。このままでいいわけはない。でもやめられない。

「恋にクーリングオフがあればいいのに」
 次女の朝美は通信販売のテレホンオペレーターだ。毎日電話を受けて決まり切ったセリフを繰り返す朝美の日常を彩ってくれているのは、亮輔というイケメンの彼氏だ。いや、彼氏だと思い込んでいる。めったにならない電話で呼び出されれば、セックス&ラーメンでさよならするだけなのに。でも、好きだから仕方がない。

「嘘つきをシチューにまぜれば」
 三女の結衣は、高校生でコンクールに入賞して以来、フリーのイラストレーターをしている。ほとんど家に引きこもり、大概の連絡はメールで。たまに打ち合わせで外に出る以外は、ラーメンを食べ歩くのだけが楽しみの日常だ。
 だが、二人の姉には言っていないことだが、彼女にも高校時代には大学生の彼氏、奈良月がいた。そして、その奈良月に別れを切り出されてからは、恋という魔物にガブリとやられることに怯えている。

可愛くなんかないからねっ! (2)

だから一緒に戦いたい
評価:☆☆☆☆★
 どんな女の子よりも美少女な男子高校生・文野春は、歌祓神社の巫女・砂原琴と出会うことで、幽神という存在を知ることになった。それは、隠れ謡と呼ばれる、童謡などに別の意味を持たせることで物質世界・物世と精神世界・幽世をつないで超常の力を使う技で生まれる存在だ。
 歌祓神社はそんな存在から街を守る場所であり、神折高校神話収集クラブはその活躍をサポートして来たらしい。文野春は、部長の鈴木ニコルや、幼なじみの月島小町らと共に、砂原琴の活動のお手伝いをすることにした。なにせハルは、その歌の力を使って、魔法少女みたいに変身できるのである。

 そんな彼らにも普通の高校生としての生活もある。もうすぐ開催される長月祭では、旧校舎のマイナークラブが協力して、30分のステージを務める計画で、演目は、ハルやコト、小町たちを主役とする魔法少女もののミュージカルとなっている。ダンスの振り付けは、ハルの妹の文野万里にお任せ。友人の古井武一はハルのコスプレ衣装が見れるとテンションが上がり気味だ。
 しかし、またもや現れた幽神が、その計画に波乱をもたらしてくる。ハルたちの助けを断り、練習にも途中から出席せずに戦いに赴いてしまうコト。いつもはハルにベッタリなのに、やはりコーチを途中で辞めてどこかへ出かけてしまう万里。ハルや小町は彼女たちが心配でならない。

 どうして自分たちに相談してくれないのだろう。そんな思いを直接ぶつけるため、ハルたちは相手の事情に踏み込んでいく。

 今巻で第一部完の様な扱いになるらしい。設定的には面白いと思うんだけれど、キャラ作りにどこか無理している様な感じがあるせいなのかな?

可愛くなんかないからねっ!

可愛さが結びつける関係
評価:☆☆☆☆★
 文野春は、学年トップ3の美少女に数え上げられてしまうくらいの男の子。でもやはり男の子なので、男らしく生きたいと願い、親友の古井武一に相談する。その結果として敢行されたのが、あすたー作戦だ。
 しかしその作戦の最中に置き去りにされたハルは、学年トップ3美少女のひとり、砂原琴に弱みを握られてしまう。そしてその弱みをネタに、ハルは歌祓の巫女にまつわる幽神の事件に関わることになってしまうのだった。

 ハルの幼なじみで空手で全国トップ2になったこともあり、いまは学年トップ3美少女のひとりでもある月島小町や、ハルの妹の万里など、男の子だけれどかわいいハルの男の子な部分や女の子な部分に魅かれて集まってくる人たちを交えつつ、歌にまつわる怪奇事件と戦う少女と、それをサポートする立場を選ぶ男の子を描く、ファンタジー風味のラブコメになっている。
 一応前作のレンタル・フルムーンは、完全打ち切りというわけではないみたい。

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レンタル・フルムーン 第三訓 星に願ってはいけません

根底にあるやさしさ
評価:☆☆☆☆☆
 ツクモの無口な気遣いに彼女の心情を誤解し、新太がいれば自分は要らないと思い込んだクルンが、満月堂を飛び出し、自分の世界に帰ってしまう。放っておけというツクモに対し、新太は何とか翻意させ迎えに行かせようとする。
 満月堂のある商店街の人々、新太の姉、これまでに出会った人も、初めてであった人も、クルンを取り戻すために彼らが気遣ってくれることは、これまで全て一人で何とかしようとしていたツクモの考え方を一変させてくれる。
 今回も登場する人たちは、いつもの様に残念な人たちなのだけれど、その根底にはやさしさがある気がする。

 軽重でいえば軽い作品。あと、3月のライオンは確かに面白い。

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レンタル・フルムーン 第二訓 良い関係は良い距離感から

ライバル登場?
評価:☆☆☆☆★
 桐島新太が偶然に出会った早川鈴音は、月光文庫を愛読する貴重な同志であり、観測者となることを希望する少女だった。満月ツクモに挑戦状を叩き付け、それだけでなく、新太に対して好意らしきものを見せる早川の行動に、ツクモに尽くしても尽くしても報われないという想いを抱き始めていた彼は、二人との距離感の取り方に迷い、ツクモを怒らせてしまう。
 言わなくても分かってくれるだろうという根拠のない信頼が、様々な失敗を繰り返させ、微妙に関係をねじれさせていく。様々な人物の、様々な思惑が絡み合って発生した空白の導く結末は?

 幕間にはさまれるクルン日記が、本編中でツンツンしすぎるツクモのバランスをとる役割を果たしている。新太がそれを知ることはないのだろうが、思わずにやりとしてしまうようなことが、満月堂の中では起こっているのだろう。

 本巻はきちんと完結しているのだが、全体の流れから見ると、前巻が二人の出会いである「起」、本巻が二人の物語である「承」、そして、今回の流れから見て次巻は「転」の展開になることは、ほぼ間違いないと思う。でもそうだとすると、結構早くまとまっちゃうような気もするな。

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レンタル・フルムーン 第一訓 恋愛は読みものです

あなたが認識しなければ、この本は出版されていないのと同じこと
評価:☆☆☆☆☆
 桐島新太は、少年向けレーベル『月光文庫』を買うためにバイトをする高校二年生。読書をして感想をレーダーチャート化するのを趣味とする彼には、ひとつ、他人と違うところがある。それは、小学三年生のときの【梅干戦争】をきっかけに、世界に漂う白い霧が見えるようになったこと。
 後輩の宮野小雪をかばったせいもあり、バイトをクビになった新太がふらふらと街を歩いていると、またもやあの白い霧が目に入った。自らの人生訓に基づき無視を決め込もうとしたものの、好奇心に負けて追いかけた先にあったのは、古い貸本屋「満月堂」。それが新太と"観測者"満月ツクモの初めての出会いだった。

 "認識"をキーワードに、世界の"空白"と観測による具象化という世界観を生み出し、それを記録するという結構重要な役割に、態度はでかいけれど実力が伴わない女の子をつけることで、ほとんど普通の少年が介入する余地を残している。そして、ただ記録するというかなり地味な行為に対して、少年にとっての大きな意味を持たせるため、学校の図書室という同じくらい地味な舞台を用意し、その舞台に不釣合いな程の騒動を起こさせるのだ。これにより、ただ静かに過ぎていくだけだった少年の生活は一変してしまう。
 ただ、導入部のイベントが面白く、その時に出来上がったキャラクターのイメージが大きいためか、高校生になってから登場するサブキャラの印象が相対的に薄くなっている気がする。それぞれの役割分担は明確なのだが、それぞれになじみきっていないというか、変な話、演じているという気がしてしまう。しかしそのあたりは、話が進んでいけば自然に解消されていくだろう。あるいはこういう薄い関係性が、最近の友情の描き方なのかもしれない。

 個人的には、観測対象にボールをぶつけるという描写が、素粒子に光子をぶつけることの比喩表現みたいで面白い。設定はシリアス、ボスキャラはギャグ、展開はラブコメという、様々な要素が絡み合った作品です。

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