谷川流作品の書評/レビュー

絶望系

終わりの始まり
評価:☆☆☆☆★
 まずはじめに。電撃文庫「絶望系 閉じられた世界」を改題しただけで加筆修正もないと思われるので、既にお持ちの方は買う必要がないでしょう。

 烏衣巳輪と会っていたところ、友人の建御から杵築のもとに電話がかかってきた。支離滅裂で意味の分からない状況であったが、ひとまず彼の家に向かったところ、彼の部屋には天使と悪魔、死神と生前は事代和紀という名の幽霊がいた。
 この意味不明の状況を何とかして欲しいと言われた杵築は、おおよその事態を悟りつつ、幼馴染の烏衣神忌無に情報を求める。それは終わりの始まりだった。

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(後)

あなたはどこに驚愕する?
評価:☆☆☆☆☆
 タイトルが驚愕なので、驚いて愕然とするポイントがいくつか仕込まれているはず。その状態になるのはキョンかもしれないし、他のキャラかもしれないし、読者かもしれない。
 なにはともあれ、「涼宮ハルヒの分裂」「涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(前)」からどうぞ。

 αとβで別個に流れていた物語の随所に共通点が見え始める。脈絡もなく起きるイベントは、それぞれの流れの接点なのだ。この事実の意味するところは何か?この事態を演出しているのは一体誰なのか?そして、ふたつの流れが結びつくポイントで起きる出来事とは?

 初回限定版特製小冊子には、キョンと佐々木の中学時代のエピソードを描いた短編「Rainy Day」や、各種イラスト、製作秘話などが収録されている。
 本編とも通じるところだが、時間の流れのあるポイントで別の選択をしていたとすれば、いまのキョンの環境は、始まる前に終わっていたのかもしれないな。


 なお、初回限定版は表紙にISBNやバーコード、価格が表示されていないので、BOOK-OFFでは売れないかもしれない。売らないけどね。

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涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(前)

どちらが主軸なのか?
評価:☆☆☆☆☆
 世の中には途中で刊行がストップしてしまうシリーズ作品が多くある。打ち切りになったのなら仕方ないと言えるが、出せば売れるのに、そうではない理由で出版されない作品だ。1年経ち、3年経ち、5年経つと、もはやあの続きを読むことはできないのだと思い始める。おそらくこれもそうなるのではないかと密かに思っていた。いや、そうならなくて良かった。4年ぶりの新刊である。
 「涼宮ハルヒの分裂」の続きなので、そちらを読んで内容を思いだしてから、こちらを読んだ方が良いかもしれない。

 ハルヒに代わる神候補として突如登場した、キョンの中学時代の友人・佐々木。そして彼女の周りに集う宇宙人、未来人、超能力者。彼らが表面に出ないか、出るかによって、物語はαとβ、ふたつのラインで並行して繰り広げられる。
 αラインでは、SOS団を新入生たちが訪れ、入団試験が繰り広げられる。その中には何か興味を魅かれる少女、渡橋泰水がいる。一方、βラインでは、頼みの綱の長門有希が倒れ、キョンに取りうる手段が限られていく。

 ふたつの物語を分けた原因は何なのか?それぞれの結末が、登場人物たちが何をもたらすのか?徐々に湧き起って来るわずかな違和感の解決は、後編に持ち越される。

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涼宮ハルヒの分裂

キョンの友人が招く事態
評価:☆☆☆☆☆
 涼宮ハルヒやキョンたちも無事に二年生に進級し、新入生たちが入学してくる時期となった。当然ハルヒは、SOS団に団員を加入させようと試みる。その一番の犠牲になるのは、きっと朝比奈みくるだろう。
 しかしここでひとつの不安要素が発生していた。それは、古泉たちが所属する機関が管理する閉鎖空間での神人発生頻度が上昇していること。その原因は、春休みにキョンが再開した中学時代の友人、佐々木にあるという。

 そんなバカな、佐々木は変わり者だが普通の人間だというキョンだったが、その認識は一瞬でひっくり返る。SOS団の活動で集合したキョンの前に現れた佐々木の周りには、朝比奈さん誘拐事件の主犯であり機関と対立する組織の幹部・橘京子、情報統合思念体が天蓋領域と名付けた存在のインターフェイス・周防九曜、そして未来人(男)・藤原がいたのだ。

 そして物語はαラインとβラインへと分裂していく。αラインは佐々木たちとの接触が少なく、SOS団に新入生がやってくる流れ。βラインは佐々木にまつわる秘密にキョンが関わってしまう流れだ。
 物語は次巻へと続くわけだが、初読のときには、この続きが4年後まで読めないとは思いもしないことだった。

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S BLUE

収録されなかった短編たち
評価:☆☆☆☆★
水野良「魔法王国カストゥール 復讐の継承者」
クユ族に育ったカストゥール王国の息子ファーラムシアと、クユ族の娘ミルシーヌの物語

谷川流「涼宮ハルヒ劇場 ファンタジー編」
RPG世界観の中のSOS団のメンバーたち

十文字青「裏薔薇のマリア エピソード0」
薔薇のマリア in 現代の学園

長谷敏司「トイ・ソルジャー」
「天になき星々の群れ フリーダの世界」の世界観で繰り広げられる、少年兵士たちの戦い

日日日「アンダカの怪造学 恋愛錯戦」
空井伊依の入学当時の物語

火浦功「未来放浪ガルディーン 大怒涛。」
コロナと仲間たちの旅路

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ボクのセカイをまもるヒト ex

石丸くんのサイドストーリーが気になる
評価:☆☆☆★★
 番外編ということで、物語の性格上、普段は活躍する機会を与えられないクラスメイト達が、それぞれのキャラクターを前面に出しています。…一部を除き、この企画が今後のストーリー進行にどの程度の影響を及ぼすのかは不明だけど。
 熱血キャラとか、妄想キャラとか色々登場するんだけれど、個人的に気になったのは、猫子が遭遇する電子生命体のお話。他のお話は巽の認識下で起きる出来事なんだけれど、巽の認識外で起こり、おそらく本筋に影響しないお話はこれだけ。どうしても書きたかったのかな。
 どこかで発生した小さな可能性が、ちょっとした偶然によって、大海に解き放たれる。それがどこかにつながっていくのだとしたら、なんてすごいことなんだろう。…ほんとにすごいのは、わけの分からん文字の羅列から、何かを読み取った津波だけど。

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ボクのセカイをまもるヒト (2)

いまのところこわしているだけ
評価:☆☆☆★★
 著者としては色々表現法の実験をしているのかな、と感じます。よほど信頼がなければこの作品は出版してもらえないような…
 本文中にも色々語られていますが、キャラクター達、特に主人公周辺が状況を全く理解しておらず、物語は場当たり的に進みます。ただただ複線が張られ続けている感じ。時々、意味深なセリフが出てきますが…。大体、語り部は誰なんだろう?  完結するまでは評価がしがたい作品です。

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涼宮ハルヒの憤慨

選挙にはお金がかかるようです
評価:☆☆☆☆★
 ただ一人の思いが世界を左右する。そんな設定の下、世界を維持するために、宇宙人が、未来人が、超能力者が、そして一般人が奔走する第8作。
 今回は、学校内の自分達の居場所を守るために、ご近所のトラブルを守るために、ドタバタ劇が始まります。いつものように微妙に推理仕立てで、でも、今回は話がゴチャゴチャ入り組んだりしません。すっきりしています。その分、盛り上がりに欠けるかもしれませんが…
 本書の内容は「スニーカー」掲載分ということで、若干、文章に細切れ感があります。しかし、ファンならば買いです。きっと次への伏線が張られていることでしょう。

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