鷹見一幸作品の書評/レビュー

宇宙軍士官学校―攻勢偵察部隊― (3)

評価:☆☆☆☆★

再就職先は宇宙海賊

評価:☆☆☆☆★

宇宙軍士官学校―攻勢偵察部隊― (2)

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―攻勢偵察部隊―

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―幕間(インターミッション)

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―前哨― (12)

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―前哨― (11)

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―前哨― (10)

評価:☆☆☆☆★


宇宙軍士官学校―前哨― (9)

太陽系の倍々ゲーム
評価:☆☆☆☆★
 モルダー星系防衛戦で登場した粛清者の新戦術・新兵器は、地球防衛計画にも見直しを強いることになった。月面のレゴリスを用いて製造した巨大ブロックを静止衛星軌道上で組み上げ、太陽嵐からの防壁・長城を築く。そして地下シェルターにおいても、地殻変動対策が付け加えられることになった。
 太陽系防衛艦隊副司令官として地球に帰還した恵一は、組織的硬直に陥っている地球軍首脳部に対し、作戦の大幅な見直しを求める。

宇宙軍士官学校―前哨― (8)

混乱と反撃
評価:☆☆☆☆★
 粛清者による感応端末へのジャミングという新戦術は、戦術DB等に頼り切っているモルダー星系防衛軍に大混乱をもたらした。そこで恵一は、古典的な通信ラインによる指揮系統を回復させ、少将心得の権限で途上種族独立艦隊に対して指揮権を発動する。

宇宙軍士官学校―前哨― (7)

初陣
評価:☆☆☆☆★
 アロイスが数年前まで使用していた、一線級の装備を受け取り、地球軍独立艦隊の指揮権を得たケイイチたちは、補給部隊の護衛として、侵攻を受けているモルダー星系へと向かう。
 初めての実戦に、彼らはどう戦うのか?

艦隊これくしょん-艦これ- 一航戦、出ます! (3)

逆襲
評価:☆☆☆★★
 鎮守府主導の西方打通作戦の最中、北方海域より鬼級、姫級を含む深海棲艦の大部隊が侵攻するという事態が発生した。作戦を中断し鎮守府に帰還する一航戦だったが、潜水艦の奇襲を受け、大破してしまう。
 敗北濃厚の情勢の中、提督が下す決断は?

宇宙軍士官学校―前哨― (6)

運命の三戦
評価:☆☆☆☆☆
 地球への救援を依頼するための試練を受けに惑星シュリシュクに到着した有坂恵一以下の宇宙軍士官学校の教官と生徒は、3つの試練に挑むことになる。白兵戦、機動格闘戦、艦隊戦の戦い方如何で、救援の有無が決まる。そして対戦相手は、地球と同様に救援を求める惑星の代表の行動パターンをとるドローンたちだ。
 惑星の運命を賭けて泥沼の戦いが繰り広げられると思われたのだが…。

召喚主は家出猫 (4)英雄と皇帝のファイナルゲーム

最終決戦
評価:☆☆☆★★
 女皇エレノアに19世紀から召喚されたユーロディエル帝国皇帝リチャードの虜囚となった山吹翔馬は、皇帝に気に入られながら、アンゼリカ王国逆転の策を成功させるため奮闘する。
 一方、サーマルガン成功のカギを握る水沢瀬里奈は、そのプレッシャーと戦っていた。戦争の行方は?

 シリーズ最終巻。

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます! (2)

航空戦力の逐次投入
評価:☆☆☆★★
 南方海域に鎮守府が開いたサンタクロース諸島出張所は、軽巡洋艦「天竜」を所長代理として、周辺海域のシーレーン確保にあたっていた。敵潜水艦による群狼作戦に翻弄される軽巡洋艦「名取」たち。鎮守府の提督は、シーレーンの安定的確保のため、軽空母「千歳」「千代田」の投入を決定する。
 だが深海棲艦はヲ級空母四隻以上を戦場に投入し、軽巡洋艦「球磨」が旗艦を務める護衛艦隊と補給船団を殲滅しようとする。鎮守府のそれに対抗するため、正規空母「赤城」「加賀」「大鳳」を投入するのだが…。

宇宙軍士官学校 -前哨- (5)

生きるために価値を見せる
評価:☆☆☆☆☆
 太陽系に粛清者の偵察機が出現した。しかも、銀河文明評議会も未だ開発に成功していない大質量兵器を搭載した偵察機を含む、強行偵察部隊だ。
 連邦宇宙軍の手に余る事態に、銀河文明評議会は非常事態を宣言し、レキシム・シェマン・ザル・ベス中将を最高指揮官として、シャロム・シェマン・ザル・ベス戦時中将に、ケイイチ・アリサカ戦時少将を指揮官とする、宇宙軍士官学校の教官と生徒による対処艦隊の派遣を決定する。

 今後、粛清者の侵攻に対抗するためには、40万隻規模の防衛艦隊が必要だ。しかし、直上のリフトアップ種族であるアロイスにはその全てを賄うことはできない。そこでさらに上のリフトアップ種族であるケイローンに援助を乞うため、地球から宇宙軍士官学校の教官と生徒たちが試練を受けに行くことになる。

ご主人様は山猫姫 (13) 大団円終劇編

中編の二本立て
評価:☆☆☆★★
 今回は中編の二本立て。まずは延喜帝国とシムールのその後を描き、続いて沢樹延銘とムルト・リス・ラージャーナのその後について描く。

 延喜帝国の長嶺帝の下で北域王兼筆頭執政官となった泉野晴凛が、執務室から拉致された。拉致の実行犯は、シャン・クム・ミーネとタッケイ・ラム・シャール、泉野晴凛の嫁と妻だ。シムールのエオル王と約束した、いずれと結婚するのかの答えを出す時がやってくる。

 そして落ち延びたムルト・リス・ラージャーナは、記憶をなくしサーギと名乗るようになった沢樹延銘とともに、生まれ故郷の島へを戻ってきた。ところが故郷は4つの海賊が割拠して支配する状態となっており、民は疲弊していた。ムルトはかつての繁栄を取り戻すため、サーギに支配権の奪還を命じる。

召喚主は家出猫 (3) ハンドメイドの決戦兵器

最強の矛
評価:☆☆☆★★
 水沢瀬里奈に召喚され異世界へとやってきた山吹翔馬は、アンゼリカ王国とユーロディエル帝国の戦争に協力することになった。
 ミルチの実家であるクラフト一族の協力を得て自転車を量産し、ギリースーツで索敵能力をアップさせた山吹翔馬は、帝国の切り札である蒸気戦車に対抗するため、ライナの一族の協力を得て秘密兵器を開発する。

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます!

まろやか赤城さん
評価:☆☆☆★★
 提督は決断を迫られていた。自身の判断力も上がり、艦娘へかける負担も減り、資源調達も滞りなく進むようになってきた現状ではあるが、敵である深海棲艦の動きに秩序が感じられるようになってきた。
 諜報活動の結果、深海棲艦の変化の背後には、サンタクロース諸島に誕生した泊地空母姫が存在していることが明らかになる。彼女が他の深海棲艦を指揮することで、敵の効率が向上してきているのだ。

 このままでは補給戦が完全に断たれ、サンタクロース諸島の陸上部隊は完全撤退に追い込まれる。その後、時間が経てば経つほど、泊地空母姫の指揮能力は向上し、鎮守府の艦娘たちは追い詰められていくだろう。その前に手を打たなければならないのだ。
 かくして、泊地空母姫を鎮めるため、鎮守府による総力戦が始まった。

 夏イベントのノベライズと考えて良いだろう。

宇宙軍士官学校―前哨― (4)

足早に近づく戦火
評価:☆☆☆★★
 銀河文明評議会によってリフトアップされた人類は、異星文明人類アロイスによって教導を受けることになった。粛清者と戦い宇宙の平和を守る人々を育てるため、宇宙軍士官学校が創設され、アルケミスにおいて教官となった有坂恵一、バーツラフ・ホレック、オルガ・シュワルツローゼ、ライラ・ヨルゲンセンは、第一期生800名の候補生を迎える。
 一方、新たな世界に生きることになった人類は、粛清者と戦うための社会インフラの構築と、防備体制の構築を進めていた。

召喚主は家出猫 (2) 魔法じかけの電撃作戦

依存癖のある最強魔法使い
評価:☆☆☆★★
 神隠しにあった幼馴染の水沢瀬里奈によって、異世界に召喚されたサバイバルおたくの山吹翔馬は、彼女が大魔法使いとして食客になっていたアンゼリカ王国とユーロディエル帝国の戦争に加わることになってしまう。
 現代知識を異世界の職人であるクラフト一族に伝授して技術革命を起こした山吹翔馬は、戦術にも革命をもたらし、盛況な帝国軍を一時撤退させることに成功した。

 だが皇帝は、山吹翔馬と同様に、別の世界からやってきた人間であり、その世界の技術をこちらに持ち込んで、蒸気機関を帝国に開発させていた。目の前に迫る脅威に、山吹翔馬の機転は役に立つのか?

 最強魔法使いのくせに、ヒロインがあまりにも主人公に依存し過ぎて気持ち悪い。現代的なヒロインという感じじゃないな。古き良き幻想のヒロインという感じだ。

ご主人様は山猫姫 (12) 帝国再興編

宮廷での戦い
評価:☆☆☆☆☆
 シムールのエオル王の援護のおかげで沢樹延銘率いる南域反乱軍を崩壊させ、延喜帝国の長嶺帝を奉じて帝都へ帰還することが叶うようになった北域王の泉野晴凛と皇伏龍こと神流千斗は、かねての策通り、帝都に立てこもる菰野盛元をあぶり出す一手を打つ。
 晴れて北域王となり、筆頭執政官となった泉野晴凛と、軍務総監兼政務総監となった皇伏龍は、北域の成功体験を基に帝都を統治しようとするも、高級官僚たちの嫌がらせが続き、上手くいかない。その影には、帝都を蜘蛛のように絡め取って影響力を行使してきた定族、鵬儀天繕の姿があった。

 一方、未だ乱れる南域を平定するために近衛連隊長の泉野聡凛を派遣することになるのだが、その直前、月原弦斉が長嶺帝への謁見を求めてやってくる。

 最終巻の予定だったのだが、あと少し、後日談があるらしい。

宇宙軍士官学校―前哨― (3)

パートナーの意味
評価:☆☆☆☆★
 銀河文明評議会に加盟した地球人類は、異星文明人類であるアロイスによる指導の下、宇宙軍士官学校に入学する練習生を訓練する教官とするため、若手士官たちを供出することとなった。練習戦艦アルケミスの艦長に就任した有坂恵一訓練大佐は、副長のバーツラフ・ホレックや戦闘艇のオルガ・シュワルツローゼ訓練大尉やライラ・ヨルゲンセン訓練大尉のサポートを受けながら、順調に訓練をこなしていた。
 その頃、地球では15才の少年少女たちが選抜試験を受け、宇宙軍士官学校に入学する800名が絞り込まれようとしていた。そして、ケイイチたちには、アロイスたちが辿ってきた運命と、銀河文明評議会と敵対する粛清者に関する情報が開示されはじめる。

 アロイスに人間味が感じられる描写が見られるようになっていた。そっちも狩り場にするのか〜。でも次巻以降は、単なる学園ものになっちゃうのかな?

召喚主は家出猫 (1) 喚ばれてみれば最前線

異世界でサバイバル
評価:☆☆☆☆★
 北條高校生存活動研究部に所属する山吹翔馬は、軍用自転車に乗り、常にサバイバルキットを携行している高校生だ。いつどんなことが起きたとしても、自分の無力を感じなくても済むよう、常に備えている。  そんな彼が最近見る夢は、二年前、謎の魔方陣を残して自室から失踪した水沢瀬里奈、友人の水沢御綱の妹のものだ。彼女が自分の存在に気づくと覚めてしまうというその夢は、彼の心を捕らえて放さない。  ある日、帰宅途中のある山吹翔馬は、突如、森の中を彷徨う羽目になってしまい、気づくと竜がいる不思議な世界へとやって来ていた。そして、竜に追われている水沢瀬里奈、ミルチ、ライナという少女たちと出会う。  あり合わせのもので危機を乗り越えた山吹翔馬は、アニス・アンゼリカ女王が治めるアンゼリカ王国へと案内され、水沢瀬里奈が「破壊天使」と称される大魔法使いになっていたことを知るのだった。  機械化することで急速に力をつけたユーロディエル帝国に宣戦布告される、攻撃魔法を持たないアンゼリカ王国は、生き延びることが出来るのか?

ご主人様は山猫姫 (11) 南北雌雄決戦編

最終決戦
評価:☆☆☆☆☆
 沢樹延銘率いる南域反乱軍が帝都目前に迫り、シムールのエオル王に触発された延喜帝国の長嶺帝は親征を決断した。平原に堀をつくり反乱軍を迎え撃つ帝国軍に合流した北域国軍と皇帝親政軍は、真正面から兵力のぶつかり合いをすることになる。
 未だ北域国軍が合流したことを知らない南域反乱軍は、目前に迫った帝都を前に、既に戦後の狂乱を夢見ていた。しかしその夢は、補給を受けて堅強になった帝国軍により、覚まされることになる。

 次巻を最終巻に控えた、反乱鎮圧のクライマックスだ。個人的には戦場で日常を取り戻しても良いことはないと思うけどね。

宇宙軍士官学校―前哨(スカウト)― (2)

訓練の中の本物の感情
評価:☆☆☆☆☆
 練習戦艦アルケミスの艦長に着任した有坂恵一訓練大佐は、銀河文明評議会に加盟するアロイスという種族の教導の下、戦って生き残れる軍人として、実践的な訓練に従事することとなった。副長のバーツラフ・ホレックや、ケイイチに好意を寄せるオルガ・シュワルツローゼ訓練大尉やライラ・ヨルゲンセン訓練大尉など、事前訓練により選別された七名を幹部として、四十名の特別士官候補生が訓練に臨む。
 訓練開始以後、教導者のアドバイスは禁止され、訓練生だけで艦を運営しなければならない。しかも、シャロム・シェマン・ザル・ベスの課す訓練は極めて実戦的で、予想もしないあらゆる事態が生じうる。あっさりと全滅判定されたケイイチたちは、その戦訓を胸に、改めて訓練に挑むことになる。

 宇宙を取り巻く状況は全く不明ながら、生き残るためにあらゆる手段を尽くすと言うことを身を以て教えられる訓練生たち。そして彼らは、新たに地球から選抜される、十代半ばの少年少女たちの教官として、宇宙という戦場に送る軍人を育成する使命を担うことになっているのだ。
 訓練ながら実戦の中で感じる切ない感情や、後悔、不安など、全てを分からないまま飲み込んだまま、とにかく歩んでいかなければならない。そんな中で彼らを支えるのは、銃後の日常なのである。

はやぶさ/HAYABUSA

ひとりだけどひとりじゃない
評価:☆☆☆☆★
 鹿児島県内之浦から転校してきた小学二年生の佐久間隼人は、彼が幼稚園の時にロケットの打ち上げを見たというのが本当か嘘かをかけて、クラスのリーダーである内村健二と共に、JAXA相模原キャンパスに見学に出かけた。そこで、相談員の水沢恵お姉さんと知り合いになり、隼人の見た打ち上げが、MUSES-C「はやぶさ」の打ち上げだったことを教えてもらった。
 すっかりはやぶさの魅力に取り憑かれた隼人は、恵お姉さんに「はやぶさ」のことを教えてもらいに、毎日、通う様になった。しかし、彼のそんな行動を面白く思わないクラスメイトにはいじめられるようになり、彼を庇ってくれる健二も、転校することになってしまう。

 映画のストーリーを、小学生を対象に構成し直した作品みたい。正直、恵お姉さんサイドのストーリーはどうでも良い感じなのだけれど、完全には消せなかったんだろうな。
 作中、隼人が受けるいじめが悲惨すぎて泣けてくる。

ご主人様は山猫姫 (10) 北域王雄飛編

少年はいま男になる
評価:☆☆☆☆☆
 苑山燕鳳を排し摂政の菰野盛元を担いだ菰野将阮が、北域王の泉野晴凛に罪をかぶせ、延喜帝国の長嶺帝を暗殺するための行幸を企てていることを察知した皇伏龍こと神流千斗、愛するアンギュトヌス・アイリーンを暗殺予測地点の傍に残し、シャン・クム・ミーネやタッケイ・ラム・シャールを利用した長嶺帝護衛作戦を立案し、暗殺実行犯が来るのを待ち受ける。
 一方、南域反乱軍で軍師として君臨する沢樹延銘は、新兵たちをすり潰して消耗戦を仕掛け、近衛連隊長の泉野聡凛らを擁する帝国軍を疲弊させながら、軍としての経験値を高めていた。その反乱の様子を軟禁されつつ見守るしかない月原弦斉は、かつての自らの罪を後悔するのだった。

 帝国の危機を好機と見たかのごとく、またしても軽装で北域に乗り込んできたシムールのエオル王と長嶺帝の歴史的邂逅が実現するとき、世界は動く。
 皇帝付き女官の紫芹というまたもうるさいキャラを加えつつ、ついに帝国全土に広がった戦乱は、収束に向けての一歩を踏み出し始めた。

 そんなシリアスな状況とは関係なく、シャールによる晴凛誘惑と、それを邪魔するミーネの女の戦いも繰り広げられる。

宇宙軍士官学校 【前哨/スカウト】 (1)

実績が積み上げる信頼
評価:☆☆☆☆☆
 ある日、地球に銀河文明評議会からの使者が訪れて人々をマインド・リセットし、地球は緩やかな国家の共同体として統一された。一部の宗教家は彼らを神を語るものとして糾弾し、テロ活動を続けてはいるが、彼らがもたらした新たなテクノロジーは人類の抱える問題の多くを一瞬にして解決し、人類は活動の範囲を大気圏外まで広げた。
 だが、そのフリーランチの代金を徴収される時がやってくる。銀河文明評議会の一員として平等に扱われたいのならば、それに見合う貢献をする必要があると告げられたのだ。その対価とは、未だ地球の常識に染まりきっていない若者を選抜し、特別士官候補生として訓練するということ。そして彼らの後からは、15歳の子供たちが銀河文明評議会の指揮下にある兵士として訓練されるのだ。

 特別士官候補生の一人として選ばれた有坂恵一少尉は、各国から選ばれた特別士官候補生と共に、練習戦艦アルケミスで訓練を受けることになる。銀河文明評議会が地球人を兵士として育てる理由は何なのか?そんな謎を胸に抱きながらも、集団内部の軋轢を乗り越え、仲間を集め、自身の特性を伸ばしていく青年たちの活動を描く。

 地球の常識ではなく、宇宙の常識で活動できる人間を育てるプログラムに参加し、示された状況から目的を考察していく過程と、その中ではぐくまれる人間関係がこの作品の主題と言えよう。
 設定面では、ボタンはほとんど使わないと言っておきながら、その直後にボタンを使う装置を出したりしてイマイチ作り込みが甘い部分もあるが、シンプルに分かりやすく設定を積み上げていく姿勢は好感が持てる。後はこれが、ハヤカワ文庫で通用するかどうかだろう。個人的には通用して欲しいのだが…。

ご主人様は山猫姫 (9) 帝国崩壊編

呆気なく訪れる崩壊
評価:☆☆☆☆☆
 月原弦斉が基盤を築いたシムールと延喜帝国の融和の象徴である侘瑠徒から北域を平定した泉野晴凛は、延声の元領主・犂山随細の協力を得て勢力を広げていた。そんな彼のプライベートは中々に大変。シムールのシャン・クム・ミーネが怪我をしたのは自分が至らなかったからだと思い込んだタッケイ・ラム・シャールが、寝ずの不審番で自分を追い込んでいたのだ。
 一方、次の手を考えるために、アンギュトヌス・アイリーンと共に帝都へと赴いた皇伏龍こと神流千斗は、南域の反乱が思った以上に破滅的な状況になっていることを知り、危機感を強める。そして彼自身にも、アイリーンとの関係で転機が訪れようとしていた。

 帝国の内部でも政変が発生。南域の戦況が悪化するにつれて足並みを乱し始めた官僚たちは、苑山燕鳳を排して自分たちが長嶺帝の摂政・菰野盛元を神輿に担ごうという勢力も現れ始める。一方、沢樹延銘が主導する南域反乱軍は、帝国軍の補給不備をついて戦線を拡大。ついには近衛連隊長・泉野聡凛の再派遣が決まっていた。
 神流千斗と練涯塾の和解、泉野光凛とミリンのあれこれ、皇帝付き女官の紫芹に蒙を開かれる苑山燕鳳など、物語を彩る登場人物たちのエピソードを盛り込みつつ、一気に帝国崩壊寸前まで雪崩込んでいく。

地球の切り札 (3) 地球の未来は任されました。

ゲーマーたちが地球を守る!
評価:☆☆☆☆☆
 思念臨界反応能力という、銀河の半分を吹き飛ばすほどの凄まじいエネルギーをその身に宿してしまった神通細香だったが、上所中学校防衛委員長の最上健吾が彼女の能力をコントロールし、そしてサリアント条約を遵守させる保護機構保護官の宇宙人たちの協力もあり、細香を狙う宇宙人たちの目論見は、脆くも崩れ去っていた。
 しかし、遙か宇宙の彼方で開催される銀河文明評議会の保護機構運営委員会において、評議委員である通商連合から、危険な思念臨界反応能力の排除のため、サリアント条約改正の動議が提出されていた。その本音は、地球にLBOを仕掛けて莫大な利益を得ること。つまり、人類も含めた地球の資源を債券化し、それを投資家に売って開発資金を得て余剰利益を得るのが目的だ。

 保護機構はサリアント条約を守るため、あの手この手で対抗策を練るのだが、結局、保護機構の地球担当管理官は通商連合の手先にすげ替えられてしまい、地球資源化を妨げるものがいなくなってしまう。
 直接的な地球侵攻の魔の手から地球を守るため、上所中学校防衛委員会が中心となって地球を防衛するための戦力のコントロールをゲーム化し、無料オンラインゲームとして公開することでネットゲーマーたちに地球防衛の戦士となってもらうことにしたのだ。その結末は…。

 1巻2巻は、アホな宇宙人が細香に手を出してきて、それを中二病全開な必殺技で撃退するという展開だったけれど、3巻は完全にスペオペになった。こういう作風の方が、作者の作家性にマッチしていると思う。
 経済効率を重視して、兵力の逐次投入という軍事的下策を採用する通商連合に対抗する上所中学校防衛委員会とネットゲーマーたちの壮絶な砲撃戦が繰り広げられている。そしてラストのカタストロフィは、この作品のお約束だ。

ご主人様は山猫姫 (8) 北域覇王編

新たな枠組みを目指して
評価:☆☆☆☆☆
 北域の覇王への道をまっしぐらに進み始めた泉野晴凛だが、その周囲の女性たちにも変化が訪れ始めた。タッケイ・ラム・シャールが甲斐甲斐しく酔った晴凛の世話をするのに対し、子どもから女への成長を開始したシャン・クム・ミーネは、自分がずっと晴凛のもとにいるためには何をすれば良いかをアイリーンに聞く。
 南域の反乱は反乱軍が素人であるため一気にケリがつくかと思われたが、初戦をあまりにも簡単に勝ちすぎたことと、帝国内部の勢力争いの結果、膠着状態に陥ってしまっていた。それを打開するために榎耶将軍は捨て身の策を実行するのだが、その結果もままならない。

 一方、北域王・泉野晴凛のもとを訪れたシムールのエオル王は、シムール領内の砂漠化による食糧不足を解決するため、遊牧民の根幹を揺るがすような策を持ってきていた。
 その策を実行すれば、より豊かな北域が実現する。しかし、旧来の価値観を脱し得ない老人たちにとっては、先祖への裏切りに過ぎない。そしてその想いは、それに付け込む勢力に利用され、大きな事件を巻き起こすことになる。

 辺境の反乱を鎮圧するだけの実力はまだ残しながらも、それを発揮する環境を作れずに自滅していく帝国をよそに、経済という不滅の真理は、帝国領土に新たな火種を持ち込みそうな雰囲気だ。
 着々と実力をつけていく北域と、帝国崩壊を助長していく南域、それに力を残したまま絶えようとする帝国の一部勢力たち。彼らが描く未来の姿とは?

 お鼻ぷくぷくの仮面軍師も良い目を見たり、悪い目を見たり、とにかくまだあきらめてはいない模様です。

ご主人様は山猫姫 (7) 北域見習い英雄編

動乱の始まり
評価:☆☆☆☆☆
 延声の県令、犂山を仲間とし、延喜帝国の北域辺境を平定した泉野晴凛は、周囲の薦めにより、北域の独眼竜、北域王を名乗ることになる。
 しかし、帝国中枢を牛耳る近在官の苑山燕鳳の眼は北域には無かった。南域の街・承安で商人たちが月原弦斉を担ぎ上げ反乱を起こしたのだ。月原弦斉を朝敵として殺す大義名分を得た苑山燕鳳は、近衛連隊長の泉野聡凛を先鋒に、討伐軍を送り出す。

 帝国の眼が南に向き、一時の平穏を得た北域辺境では、晴凛の嫁ミーネと妻シャールの料理対決が行われたり、志願兵が集まってきたり、更なる展開への雌伏の時期が訪れたかに見えた。
 一方、南域でも、月原弦斉に才能を開花させられる、第二の晴凛となるような若者、面涼が登場したり、怪しい覆面の、鼻を膨らませる軍師くずれが登場したり、目が離せない。

 いよいよ、シムールのエオル王も動き出し、シムールと延喜帝国が大きく揺るぐ時代となってきた。

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飛べ!ぼくらの海賊船 (2)

少年少女海賊団の窃盗犯退治
評価:☆☆☆☆☆
 四百年前に村上水軍が山中でひっそりと作り上げた軍船・飛天丸を発見した子孫の少年、リョースケや藍たち。その飛天丸がテレビ局のイベントで村上水軍の本拠地、瀬戸内海に里帰りすることになった。
 そのイベントにゲストとして招待されたリョースケや藍、その弟のススムと、リョースケの大伯父である船長は、飛天丸で瀬戸内海を航海する。そうしてたどり着いた松山市の中ノ島で、船長の昔の部下である機関長の経営する民宿に宿泊することになる。
 そこで出会う年下の少年、諒助に、中ノ島にも石の船が洞窟に隠されていることを聞く。同じ頃、機関長の持つヒラメの養殖施設では、窃盗事件が多発していた。

 そこから始まる少年少女海賊団の大活躍!大人の窃盗団を向こうに回して、懲らしめるための方策をめぐらせる。
 彼らがやり過ぎないかって?大丈夫。彼らには、危ないことをしようとすれば叱ってくれる大人がついています。そんな彼らのひと夏の冒険をお楽しみください。

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銀河乞食軍団 黎明篇 (4) 誕生!〈星海企業〉

理屈では止まれない段階
評価:☆☆☆☆★
 数多くの犠牲を出しながらも、紅天と蒼橋の和平はひとまず成った。紅天艦隊は撤退、連邦の平和維持部隊は解散となり、蒼橋は落ち着きを取り戻すかに見えたが、その後、紅天艦隊の一部隊が行方をくらましていることが判明する。
 紅天の常軌を逸した作戦に、蒼橋の新弁務官となったムックホッファは、カビの生えた様な古い規程を持ち出して、蒼橋義勇軍を衣替えさせて対抗する。

 動乱終結後、順調に昇進して中将となったムックホッファは、退官を間近に控え、蒼橋動乱で得た教訓を生かした組織を立ち上げようと動き始めるのだった。


 てっきり売れなくて企画が潰れたものと思っていたので、無事に完結してよかった。今回のポイントは2つあって、ひとつは紅天が無茶をした理由、もうひとつが星海企業設立までの経緯だろう。

 前者は現代日本の世相を反映した様な理由で、金はあるけれど中身がなく、やるべきことにあふれている世界をうらやんで自分に自信を失い、それを取り戻すために力を誇示するというものだった。わざわざこういう理由を設定したところに、作者が言いたいことがあふれている気がする。

 後者は少し駆け足過ぎた印象がある。本来ならここがメインだったはずなので、もう少しじっくり描いた方が良いに決まっているが、そうできない理由があったのだろう。個人的には前半の物語の方が好きなので別にどちらでも良いが、やはりもったいない様にも思う。

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ご主人様は山猫姫 (6) 辺境双璧英雄編

堕ちた宿敵との決着
評価:☆☆☆☆☆
 侘瑠徒に攻めて来た帝国緑軍を退け、緑軍指揮官の孟旗将軍以下を味方につけることに成功した泉野晴凛と皇伏龍こと神流千斗は、損耗したシムール兵の建て直しを急いでいた。そしてその頃、延声に帰還した沢樹延銘は、直裁官であるのを良いことに、県令の犂山稜世に対し、住民を巻き込んだ作戦を提案していた。
 もはや軍師として落ちるところまで落ちた沢樹を見切った伏龍は、延声内部に混乱を巻き起こすため、晴凛の兄、泉野光凛と、シャン族ミーネ姫のお目付け役のミリンに潜入工作を依頼する。たった二人で敵地に乗り込んだ彼らは無事に帰還できるのか?そしてピンチに急接近?
 侘瑠徒では晴凛の嫁と妻の座を巡って、ミーネ姫とタッケイ族シャール姫の意地の張り合いが繰り広げられる!

 どうやらシリーズは好調の様で、物語はどんどん広がっていっている。
 初めはちっぽけな地方反乱だと思われていた騒動が、ついに帝国中枢でも深刻に捉えられる事態になってきた。帝都の苑山燕鵬も浮き足立ち、一気に北方の人心を離反させる致命的な失策を布告してしまう。そして、動揺は他の地方にも広がり…。
 いよいよ時代が動き始めます。

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地球の切り札 (2) 先生に魔改造されました。

アホ王子の襲来
評価:☆☆☆☆★
 1巻で養護教諭カミラ・アーカードの唾液で命を救われた防衛委員たちが、その副作用でささやかな超能力を発現させることになった。そのおかげで、神通細香の秘密を共有することが出来るようになった防衛委員長の最上健吾。生徒会長の衣笠初恵に現実を見ろと横やりを入れられながらも、宇宙人に対する備えを進めていた。
 そんなとき、銀河の覇権国家の部屋住み王子が細香の秘密を聞きつけてやってきた。本人はダメ王子ながら、有能な元軍人の執事とアンドロイドメイドが脇を固め、スカポンタンな3人組の協力を得て、細香を手に入れようと嫌がらせをしてくる。健吾と新たな力に目覚めた防衛委員は細香を守り切れるか。

 全編ゆるい感じで物語は進行します。致命的な悪いことをしない悪人たちと、がんばる中学生たちがここのささやかな能力を駆使して対決し勝利する感じのストーリー。若干、説教臭いところもあるかも。
 もう一つポイントを挙げるならば、大人たちは出しゃばらない割には意外に格好良く描かれているところだろうか。子供があこがれる大人像を描こうとしている気がした。

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ご主人様は山猫姫 (5) 辺境中堅英雄編

希望的観測と幸運の焦点
評価:☆☆☆☆★
 皇伏龍の策も見切って兵を伏せ、3万の軍勢で侘瑠徒包囲網を敷き終えた沢樹延銘率いる帝国緑軍は、攻城兵器の準備も完了して、外見上は圧倒的優位に立っていた。ただ、その内部には食料不足という大きな不安を抱えていて、士気に影響を及ぼしかねない。
 一方、これまであらゆる奇策を駆使してピンチを切り抜けてきた泉野晴凛たちは、今回も一点豪華主義の作戦を繰り出し、幸運もあって一時的な優位を築くことはできるが、切り札は不発に終わり、最後の決め手がない。ついに最後かというとき、彼らの前に現れたのは…。

 今回はさすがにピンチの状況を作りすぎちゃったのかな、と思う。かなりの幸運と、敵将の自信家的性格から考えるとないような指揮ミスをに助けられた所が多い。もちろん、そこに至るまでに帝国軍に不安材料を積み重ねさせた伏龍の作戦が効いていることは事実ではある。

 戦場にあっても同様に振舞うミーネと晴凛のラブコメはいつも通りだが、シャールも再登場して、こちらの戦況も混沌としている。そして、ミリンの大活躍。
 この巻で戦局は大きなターニングポイントを迎えた。次の戦場はもう少し大きな地図上で繰り広げられることになりそうだ。

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地球の切り札 (1) 彼女は最終兵器になりました。

妄想が世界を守る
評価:☆☆☆☆★
 上所中学校防衛委員長の最上健吾は、小学生の時に慕われていた後輩、神通細香と再会する。小学校時代の健吾の妄想ファンタジーを共有する細香を敬遠したい所だったが、そうもいかない事情があった。細香は地球を保護する組織の宇宙人によって、妄想を現実化する能力を与えられてしまっていたのだ。
 不慮の事故により与えられたその力の暴走を防ぐため、管理者としての役割を担うことになった健吾は、封印した自分の黒歴史を呼び起こし、二人に共通する物語の枠組みでチカラをコントロールすることを試みる。そんな時、宇宙から地球の中学生をさらい売りさばこうとする宇宙人が訪れる。

 過去の黒歴史から決別し常識人を自認する健吾に対し、封印した過去を共有し当時の彼に憧れを抱いている細香。随所にパロディ的要素がちりばめられ、妄想全開で宇宙人犯罪に対処しなければならないところは突っ込みどころ満載だ。
 前作「会長の切り札」と同じ地域を舞台とした、妄想が世界を守るSF風学園ヒーローものといった作品になっている。

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ご主人様は山猫姫 (4) 辺境若輩英雄編

戦争の最中にも日常はある
評価:☆☆☆☆★
 晴凛率いる侘瑠徒の一党に良い様にされてきた帝国軍の反撃が始まる。これまでは官僚組織から独立していた帝国軍に影響力を及ぼすため、帝国官僚のトップである苑山燕鳳は、皇伏龍の同門である沢樹延銘を全軍指揮官として送り込む。
 周囲の人間の心情を全く慮ることのない歪んだ性格はともかく、有能であることは間違いない沢樹の適切な処置により、挙兵以来初めての敗北を味わう皇伏龍だが、そのまま敗走すれば侘瑠徒の民は皆殺しにされてしまう。大軍に寡兵が立ち向かうための、ちまちま嫌がらせ作戦が始まる。

 戦乱の只中にあっても普段の生活を忘れない侘瑠徒の人々の姿と、腐敗したシステムの現状を理解しながらも、自らの職分で為すべきことをするしかない帝国の人々の姿がある。生き残るための唯一の選択をした人々と、消極的同意と妥協の産物によるしかない人々の争う様は、止めよう・変えようと思ってもなすすべも無い大組織の恐ろしさを感じさせてくれるだろう。
 こういう組織論的なお話とは別に、戦争の中でも商魂たくましい人々の姿や、晴凛とミーネ姫のいつも通りのやりとりなど、日常シーンも健在です。

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銀河乞食軍団 黎明篇 (3) 激戦!蒼橋跳躍点

軍隊はひとつの生物、自死する細胞たち
評価:☆☆☆☆★
 母星系を空にする全戦力の投入により、連邦宇宙軍派遣艦隊を撤退に追い込むことに成功した<紅天>星系政府だが、戦略的優位性を築いたにもかかわらず、なぜか無用な攻撃を仕掛けてくる。政治力学の常識から考えれば、一地方星系政府が完全に東銀河連邦政府を敵に回す様な愚を犯すはずはないのだが…。そこに政治の欺瞞を見たキッチナー中将は、圧倒的多数を誇る敵に対する攻撃作戦の決行を決意する。その戦いの結末は?

 軍隊が軍隊として機能する所以は、上意下達が徹底されているからだと思う。もし中級指揮官が司令官の指示に疑念を持ち従わないとすれば、一気に戦線は崩壊してしまうことだろう。このシステムが維持されている根底には、違反すれば罰則があるという以上に、自分たちの上司は自分たちよりも深い考えに基づいて行動しており、その判断は自分以上に正しいはずという信頼関係があると思われる。
 それではなぜキッチナー中将は、自分の職責を逸脱しかねない判断を下したのか。もちろん現場の判断は尊重されてしかるべきではあろうが、逸脱は責められるべきことであろうし、自らが依って立つ権威を否定することにつながりかねない。それでもあえてその行動をとったのは、命令を下す政府が自分よりも正しい判断をしているという確信・信頼関係がなかったということなのだろう。

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飛べ! ぼくらの海賊船

軽トラの荷台はまた乗りたい
評価:☆☆☆☆★
 普段は中高生以上をターゲットとした作品を書いている著者の、小学生をターゲットとした作品。東京から九州の山奥に夏休みの間だけ転地療養に来たリョースケ、またいとこの藍とススムがめぐり合う、「たからもの」にまつわる物語。
 山奥に一人で隠棲する屈強なおじいさん、子供たちの秘密基地、そしてそこに隠された遺産。四百年の時間を経てあんなものが自分の目の前に現れたとしたら、どんな人でもドキドキワクワクすることだろう。

 主人公のリョースケくんは、ちょっと弱気なところもあるけれど、分別を弁えたとても良い子。人の心を慮って自分の行動を見直したり、出来ないことは出来ないと格好つけずに言える。まるで、道徳の教科書に出てくる主人公みたい。一方、またいとこの藍は、そんなリョースケの許嫁で、非常に活発で行動力のある子なんだけれど、料理上手で妙にリョースケを意識している。
 これは、そんな彼らの、ひと夏の冒険と成長の物語です。

 冒頭で、軽トラックの荷台に乗るシーンがあるんだけれど、子供の頃はあそこに乗るのが楽しみだったなあ。いまやったら怒られるだろうけれど。

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会長の切り札 (4) 逆転プランの用意あり!

80点で得る幸せ
評価:☆☆☆☆☆
 樫森高校v.s.桜川女子高の人間モノポリー対決の後半戦が開始される。自治体と高校の統廃合問題にもついに決着がつく。ゲームに勝敗はきっちりつくけれど、本当の意味での敗者は生まない終わり方になったんじゃないかな?

 この落とし所は地方自治体のレベルではほとんど満点なんだろうけれど、もう少し大きいレベルでみると単に分布にムラが出来ただけの結果とも言える。流入出が均衡していればお互いに影響は出ないけれど、ある地域への流入量が増えれば流出元では不足が生じるわけで、負債の肩代わりをしてもらっているだけに過ぎない。
 戦後、右肩上がりの経済成長をしてこれたのは、世界人口が右肩上がりであったことと日本製品が価格と品質の両面で優位性があったからだろう。そしてその結果として、子供の数も右肩上がりの成長をし、学校数も増加していった。
 ボクが学校に通っていた頃には、すでに児童・生徒数は減少を始めていたけれど、どんどん校舎は新築されていたし、それが追い付かずにプレハブ校舎で授業をする、なんてこともあった。だから、こんな頃の、キャパシティいっぱいいっぱいだった時代のハコモノが、少子時代に維持できないのは、ある意味当たり前のことなのだ。だから今回は落ち着くことろに落ち着いたけれども、そこは絶対安定の場所ではないので、常にその場所を維持し続ける努力は必要となる。

 右肩上がりの成長が出来るのは、奪っても奪っても尽きないリソースがどこかにあるから。それは、奪う側が相対的に少数だったから出来たことでもある。もしも奪う側が増えてきたら?その時は、無限にあるように思えたリソースが、実は限られたものだったと知る時だ。
 現在、日本という国は確実に奪う側にいる。どれだけ貧困層が増えたといっても、泥水を啜って生きなければならない環境ではない。きれいな水が簡単に手に入るのは、絶対的に恵まれた側であるというのが実情であろう。
 発展途上国と呼ばれる国々は、かつての日本の様に、安く、満足のいく品質を備えた製品を輸出し、徐々に奪う側の立場に立っていくだろう。そうなれば、相対的に日本のポジションは落ちていく。国内で昔を懐かしんでいるうちに、周辺のレベルが上がっていくのだ。
 そうやって大きな塊となった奪う側が、みんな同じ様に幸せになる方法はないのだろうか?その確かな方法は分からないけれど、かつてと同じように右肩上がりを目指すならば、奪いあうパイ自体を大きくするか、奪う量が少数でも同じだけの幸福度を得られる様にするしか、論理的に解はないだろう。

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ご主人様は山猫姫 (3) 辺境新米英雄編

ボトムアップの戦記もの
評価:☆☆☆☆☆
 二正面作戦回避のため、シムールを味方に取り込みに大族長会議に乗り込んだ泉野晴凛だったが、ミーネ姫の秘策のせいで彼の嫁を決めるための料理決戦が勃発してしまう。普段は料理なんてしなさそうな二人が、晴凛のために一生懸命に創作料理を研究するのだが、その描写がかなり細かい。作者による料理のルーツ話も作品中に織り込まれ、架空戦記なのに歴史小説みたいな構成になっている部分もある。
 一方、帝国側では、前線に物資を調達するための現金輸送任務に、晴凛の兄である光凛が抜擢され一苦労する。帝国サイドでは官僚組織の腐敗っぷりが問題で、平時の官僚機構は有事に対応する柔軟性が無く、軍隊の足を引っ張ると言いたいらしい。
 振り上げてはみたものの、落とし所のない拳の始末に困るシムールと、前線を遠くに見て危機感の薄い帝国の、無名の師の行方を、国家同士というよりは、国家を構成する人々の動きや考え方の側面から描くことに軸足を置いている様だ。別の言い方をすると、紀伝体の架空戦記ものなのかも知れない。

 ただ、巻頭の挿絵と内容に若干の齟齬があるのはいただけないけれど。

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銀河乞食軍団 黎明篇 (2) 葡萄山司令部、陥落!?(原案:野田昌宏)

それぞれの思惑が絡み合う戦場
評価:☆☆☆☆★
 蒼橋義勇軍と紅天星系軍の初回攻防戦と、その結果生じた事故による被害を収拾する作業が今回のメイン。ただ、その混乱に乗じる形で、紅天星系軍の工作が進行する。蒼橋vs.紅天という基本的な構図の中に、紅天内部での政治対立、あるいは現場レベルでの蒼橋と紅天の作業協力などが加わり、単純なドンパチよりも地味だけれど必要な作業が描かれているという感じがする。
 次巻はどうやら派手なドンパチになりそうな情勢になってきた。今回はサポートに回ることが多かった東銀河連邦宇宙軍も厳しい立場に立たされ、事態は良くない方向に動きそう。

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銀河乞食軍団 黎明篇 (1) 〈蒼橋〉義勇軍、出撃!(原案:野田昌宏)

宇宙空間を舞台とした独立運動
評価:☆☆☆☆★
 20年くらい前に発表された「銀河乞食軍団」シリーズを原本として、その前日談を描いた作品。同時に原本もリニューアルして発売されている様だから、それに彩りを添える新作を、という背景があったのかも知れない。
 もともとのシリーズを読んだことがないので判然とはしないが、キャラの独特な話し方やSF考証的な説明など、これまでの作者の作品ではあまり見られなかった要素があるので、本来の世界観を壊さないように気を使ったのだろうと想像される。
 一方で、作者らしさも健在で、軍隊の組織論みたいな部分や、現場の人間の心構え的な発言などを見つけるにつけ、いつも通りだなあと感じさせてくれる。

 一言で言うと辺境の星系間紛争なのだが、対立する政体として、紛争の舞台となる蒼橋、そこの宗主国的な立場の紅天、そして国連的な立場の連邦政府が存在する。
 そもそも紅天が資本投下した鉱物資源の採掘先である蒼橋では、当時の不平等な契約が現在まで続いていて、貿易による利益のほとんどが紅天に吸い上げられる構造になっている。それに反発した蒼橋は採掘業者による義勇軍を結成し、採掘業者のストライキを契機として紅天と戦闘状態に入る。しかし、まともに戦うことは戦力的に無理なので、調停者として連邦を呼び寄せるのだが…というストーリー。
 蒼橋は何故いま紛争を起こすのか、紅天はなぜ蒼橋を解放出来ないのかなど、政治的思惑がからんだ話や、戦闘艦に関する技術的な話、軍人や職人の考え方など、様々な要素が盛り込まれている。SF考証的な話が途中に盛り込まれるのだけれど、説明がうまく伝わってこない部分もある。巻末に補足図が入るのだけれど、その場所に入れた方が分かりやすかったんじゃないのかな?

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会長の切り札 (3) 軍師ゲームの裏を読め!

障害を事前に排除してくれる大人がいるのはありがたい
評価:☆☆☆☆★
 他人に厳しくしながらも、ついつい自分には甘い評価を下してしまうのが弱さというもの。でもこの作品の影の主人公である所光明は、逆に、他人からの評価の方が高いという珍しい人材であり、前巻までは、幼なじみにして生徒会長である早乙女朋絵のお願いを受けて、自分たちの高校を統廃合の波から守るため、統廃合候補の高校2校をゲームで下してきた。
 本巻では、残る2校のどちらが廃校になるかを決めるゲームを企画する役割で、光明も参加することになる。この役割上、これまでの様に光明が活躍する姿を直接的に描くというよりも、第三者から見た光明の評価象が描かれる形になっている。もし本人が読んだとしたら、その評価の高さに照れることは間違いない。

 ゼロサムゲームではなく、日本的なプラスサムゲームの良さを強調して始まりながら、実際に開催されたのは実物モノポリーという、ゼロサムゲームの典型の様な競技である。果たしてここからどの様にみんなが幸せになれるような結論にたどり着くのか、競技の後半戦とあわせて、続編を楽しみに待ちたい。

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ご主人様は山猫姫 (2)

人のふんどしで相撲をとる
評価:☆☆☆★★
 前巻の事態悪化のスピードに比べれば、今回はのんびりしたもの。実質、三日ほどしか時間が経過していない。戦場儀礼の紹介と、如何に帝国のシステムが形骸化しているかを紹介しているくらい。こうなると、当初期待していたほどにはならない気がしてきた。
 そもそも、君側の奸を討つ、という思想自体が好きになれない。臣下の罪はそれをのさばらせた皇帝の罪だし、官僚の腐敗は制度設計のミスだろう。なぜなら、それが人より良い生活を享受するための義務であるし、本質的にファンクションである官僚に善悪を求めること自体が間違っているからだ。
 大体、最大のリスクをとっているシャン族の扱いがひどいのが気になるんだよな〜。

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ご主人様は山猫姫 辺境見習い英雄編

山猫姫と紅い塩
評価:☆☆☆☆☆
 舞台設定でいうと、唐の時代くらいの社会基盤を持った世界。海に開けた延喜帝国と遊牧民族で構成されるシムールは、内陸の国境線をめぐり百年に亘って対立していた。しかし、月原弦斉という帝国の高級官吏が中央の政争に敗れ辺境に赴任してくると、シムールの一支族シャン族と和議を結ぶことに成功してしまう。彼の功績を嫉む中央政府は、支族の族長の娘を後宮に差し出すことを条件に和議を認めるとの決定をするが、月原はその条件も受諾させることに成功。しかし問題はその娘が「山猫」と称されるほどのクソガキであることにあった。
 その頃、中央の名門一族の出である泉野晴凛は、兄弟と違って落ちこぼれ扱いされることに悩んでいた。科挙には二度続けて落第、文官になるつもりだったので武芸の稽古もしておらず武官にはなれない。そんな彼に、千載一遇のチャンスとも呼べる、辺境での家庭教師の仕事が舞い込んできた。
 山猫姫とのファースト・コンタクトにも成功し、家庭教師の仕事にも慣れた頃、月原弦斉が中央の意向で解任され、新総督が赴任してくることになる。中央の意向で来る役人が月原の努力を無に帰すのは目に見えている。シャン族との友好関係を継続させるため、晴凛の家庭教師の職を守ろうと、新総督の人事権の及ばぬ官吏に推挙されたのは良かったのだが、新総督は彼を無役無録にして、山猫姫と共に野に放り出してしまう。
 その結果、帝国の官吏でありながら、シャン族の下で暮らすことになった晴凛だが、新総督の手により急変していく事態は一人の手には止められず、再び戦乱の火蓋が切って落とされることに。その時、晴凛がとる行動とは…。

 戦争を単なる兵力と兵力がぶつかる戦場としてとらえるのではなく、塩という戦略物資の供給源の確保という広い視点からとらえようとしている作品に見えます。でもそういう題材をそれだけでまじめに書くと面白みがなくなってしまうから、マイ・フェア・レディ的な要素など、キャラクター的に読者を引き付ける要素を付け加えて、エンターテインメント性を重視した作品にしようとしているみたい。
 意図通りに完成すると、作者の代表作になる予感がします。

会長の切り札 (2) 忍者ガールで罠をはれ!

カードゲームみたいな陣取り合戦
評価:☆☆☆☆☆
 前巻では男子校とのちゃんばら対決でしたが、今回は対戦相手が女子高ということもあり、体力勝負ではなく頭脳戦が中心。モデルは「水雷艦長」というゲーム。戦艦、駆逐、水雷という、じゃんけんのグー、チョキ、パーの様な三属性に選手を分け、フィールドで出会った敵にカードをかざすと非接触で判定し、陣地を確保するか大将を撃沈するかした側が勝利するという試合形式。各属性の比率は自由に設定でき、一部属性は復活可能などのレギュレーションがあるため、試合前に相手の作戦を読み切ってこちらの戦術を組み立てられるかが勝負のカギ。このため、紙幅の大半は情報戦の描写に割り当てられています。
 復活ありというのは結構良いですね。よく、ゲームにある復活という概念が命を軽んじるので良くない、という批判がありますが、この概念はかなりエンターテインメント性を高めています。

 前巻の引きから考えて、もっと過激なハニートラップが繰り出されるかも、と危惧していたのですが、そんなことはなし。いつも通り、ほのぼの健全なやり取りが交わされています。ちょっといつもと違うのは、女子陣営がかなり積極的に行動しているところかな?
 次巻は樫森vs桜川の対決になるはずなので、楢山がどのように介入するかがポイントかも。

 冒頭にちょっとした障害が何個か置いてあります。これは軽やかに飛び越すか、無視して突っ切るのが正解。下手に引っかかると、転んでしまいますのでご注意を。

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リセット・ワールド(3) 僕らが創るべき未来

熊谷攻防戦、終結。そして物語も…
評価:☆☆☆☆★
 熊谷―前橋コミュニティ連合v.s.西東京共和国の第二戦を前に、慎吾は翔子の操縦するグライダーで松本を目指す。ファウンデーションに援護を依頼するために。しかし、エンジントラブルにより目的地まで辿り着けず、上田に不時着する。
 一方、西東京共和国の多目は、徴兵した義勇軍の訓練を続けると共に、熊谷―前橋の補給線を断つべく、着々と準備を進めていた。そして、東信濃との間に鉄道が整備され、慎吾が熊谷に帰還するころ、ついに両軍は雌雄を決することとなる。
 米軍装備を手に、物量を背景として熊谷に侵攻する共和国部隊と、今日の次に来る明日を守るために防衛に臨む熊谷部隊。はたして関東を制するのはどちらの正義か。

 決戦は終結するのですが、それで終わりになるわけもなく、その意味で最後は若干尻切れトンボのようになってしまった印象もあります。しかし、そこは読者が補っても良いですし、もしかすると、同じ世界の物語がいつか描かれる日もあるかもしれません。

 ところで、共和国側の戦術に、化学兵器による攻撃方法がないのはなぜなのだろう。米軍や自衛隊の物資を徴発したならば、当然、対化学戦装備はあっただろうし、化学兵器の中には、そこらにある薬品を混ぜるだけで発生するようなものもあるのに。コミュニティ的には戦後処理が難しくなるのでありえない戦術だけど、共和国側ならば相手に恐怖を植え付けられるので、アリだと思うのだが。
 まあ、どこかで僕が見落としたのか、専門的に何か実現できない理由があるのかもしれません。

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会長の切り札 一芸クラブに勝機あり!

ラノベ風の啓蒙書
評価:☆☆☆☆★
 予算不足から浮上したオラが街の高校統廃合問題と、町村合併による財政破綻回避という国策が、何故か複雑に絡み合ってしまい、挙句の果てに、高校生同士の対決によって廃校にする高校を決めることが住民投票で決定してしまう。そんな中、エリート男子校とエリート女子高のハザマで、中庸な共学校が如何に知略をつくして生き残っていくかという熱血ラブコメ。周りに流されず、自分をきちんと持って生きていくのがどんなに格好よいかということを説く、いかにも作者っぽい作品に仕上がっております。次巻も発売されるようなので、そちらも楽しみです。

 個人的には好きだから発売されると購入しますけど、ラノベのジャンル的に、あんまり受けないのではないのかな?ちょいちょい説教臭いし、あとがきとかでは妙にひがみっぽいことを言ったりするし。中高生をターゲットにするよりは、もうちょっと年齢層を高めにして、社会人をターゲットにして作品を書いたほうが、ヒットしやすいのではないかと思ったりもします。

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小さな国の救世主 (3) いまどき英雄の巻

だって本当にそうなんだもん
評価:☆☆☆☆★
 トップに立つ人間には、実力以上に必要なものがあると思う。それは、運を引き寄せる力。実務能力は、優秀な人間を集めれば十分カバーできる。でも、運を引き寄せる力だけはそうはいかない。いくら最善を尽くしても、最後の歯車がきちんとかみ合わなければ全体は動き出しはしない。
 達也の能力自体は、それほど飛びぬけたものではないと思う。自分にできることをやり、ただその想いをぶつけるだけ。でもその想いが、サラサを、サゴンを、ネリムやバンユーを動かし、ついには一つの国の方向性を変えてしまう。こんなに上手くいくわけがない、と言ってしまえばそれまでだけれど、そうは思わずに、自分の現実に基づいて行動するから、その揺るがなさに他の実力者がついてきて現実になってしまう。
 これはハッピーエンドに見えるけれど、そうではない。セリカスタンの外では、市場原理という錦の御旗の下にさまざまな思惑がうごめいており、その干渉はこれからも続くはずだ。それをいかに乗り切るか、という大問題はまったく解決していない。物語はまだ続くみたいだけれど、どんな風に展開されていくのだろう。

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小さな国の救世主 (2)

運を呼び込むのも実力
評価:☆☆☆☆☆
 他人なんか誰も信じられない、とあなたは言うかもしれません。でも、そんなあなたでも、満員電車に乗ることに死の恐怖を感じることはないでしょう。だって、隣の人がいきなりナイフで刺してくるなどという状況を想定することはないでしょうから。一定以上のレベルで他人を信じることができる世界。それが平和な世界というもの。しかし、この物語の世界では、それは常識ではありません。
 他民族国家で勃発した内戦。それぞれの陣営にはそれぞれの思惑とバックについている国の思惑があり、利権があります。実際、今でもあるだろうし、冷戦時代には良く見られた構造。不注意な行動と不運から、この内戦に巻き込まれた龍也は、たまたま小部族の軍師となり、様々な人の力を借りて戦車部隊から勝利をもぎ取ってしまいます。そして、今回は爆撃機が相手。
 いつでも平和な世界に戻るチャンスはあったのに、それを捨てて死地に飛び込む。その選択はおろかともいえるし、助けられた側からは何よりも貴重なものでしょう。普通の人がしない選択をした人が歴史を作っていくのでしょうね。…大抵の場合は自分が死んで終わってしまう気もしますが。

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アウトニア王国拾遺録 (3) でたまか 終劇追幕篇

思いがけぬアンコール
評価:☆☆☆☆★
 あとがきに経緯が述べられていますが、本当の最終巻である短編集です。でたまかのストーリーを飾った面々の、対ザナックス戦終結後(一部は前)の出来事が描かれています。
 それぞれの戦後がどうなっているか、必ずしも明確に描かれているわけではありません。世界が平和になれば、かつての英雄達も日常の中に埋没していき、その他大勢の中の一人になってしまう…
 ただ、何となくそれぞれが平和に生きているような雰囲気は伝わってきます。それが平和というものなのでしょう。

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