高木敦史作品の書評/レビュー

僕は君に爆弾を仕掛けたい。

評価:☆☆☆★★


のど自慢殺人事件

評価:☆☆☆★★


鉢町あかねは壁がある カメラ小僧と暗室探偵

評価:☆☆☆★★


お口直しには、甘い謎を

ドカ食いミステリー
評価:☆☆☆★★
 ダイエットをしていると主張しているのに、常に食べ物を求めて食べてしまう女子高校生の西木戸環奈と、そんな彼女と憎まれ口を叩きながらも友人を続けている玉名佐知、その幼馴染の諸星遥を中心に、周囲で起きるちょっとした謎を解き明かす。

演奏しない軽音部と4枚のCD

音楽にまつわる事件
評価:☆☆☆☆★
 音楽にまつわる事件を解き明かしていく連作短編だ。

DISC1「ザイリーカ」
 文芸部の楡末來は、叔母が残してくれたCDの謎を解くため、熱川真由の紹介で軽音部の塔山雪文に相談する。彼が解き明かしたのは、叔母から末來への遺言だった。

DISC2「コンタルコス」
 文芸部の友人である志生野からある原稿を見せられた楡末來は、先輩の廿日市妙子が投稿したライトノベルの原稿とそっくりであることに気づく。盗作だ。
 その小説には「コンタルコス」へのオマージュがあることに気付いた塔山雪文は、盗作を認めさせるための質問を楡末來に教えるのだった。

DISC3「無限大の幻覚」
 熱川真由のギターが壊された。壊したのは誰か?そしてその結末は?

DISC4「ハートに火をつけて」
 楡末來に放火事件の嫌疑がかけられる。教師の広能や塔山雪文の中学時代からの友人である奥井が関わり、事件の根幹は十数年前の出来事を鮮やかに暴き出す。

BONUS TRACK「ザ・インフォメーション」
 クリスマスの一幕。

メイド様の裏マニュアル トラブル2:アイツが囚われの姫になった場合

駄メイドの真実
評価:☆☆☆☆☆
 巨大コンツェルンの次期当主にして、世界塔の管理者となった物部紋刀次だったが、その特権である「絵空図鑑」は駄メイドの次月ノ目次葉に奪われてしまった。おかげで世界のバグを潰すというミッションには、必ず次葉を連れて行かなければならない。
 それなのに、その次葉が当主の物部播紡斗の機密書類を書斎から盗んだ容疑で、紋刀次の許嫁にして元金持ちの貧乏人の住良木粋花により拘束され、物部家暗部の煙巻ケイトに緊縛されてしまう。

 この事態は神様の行ったモンタージュの悪影響とにらみ、ナビゲーターの杜若叶瀬にコンタクトを取るのだが…。

 シリーズ最終巻。残念ながら売れなかったか。今巻は無理矢理まとめた感が満載です。

メイド様の裏マニュアル トラブル1:俺より強くなった場合

いたぶられて喜ぶメイド様
評価:☆☆☆☆☆
 物部紋刀次は日本有数のコンツェルンの御曹司だ。住良木粋花という元金持ちの苦労人にして強かな許嫁を持ち、気が弱くMっ気のあるメイドの月ノ目次葉をいじめては反応を楽しみ、将来の為に努力を積み重ねている。
 そんな紋刀次が16歳になった深夜、操られた月ノ目次葉に案内されて向かったのは、屋敷内の開かずの塔の中だった。そこにはまるで下宿の四畳半の様な部屋があり、こたつにはHMDをつけた自称神様がいた。

 神様曰く、そこは世界塔と呼ばれる、世界に新たな概念を持ち込むための試験場であり、物部家当主は代々、世界塔での実験に生じるバグを取り除く仕事をしてきたというのだ。そしてその代償に、現実世界での失敗を亡かったことに出来る権利を得られるという。
 意味の分からないことに関わりたくなかった紋刀次ではあるが、神様から挑発され、結局、仕事を引き受けることになってしまう。神様から渡された《絵空図鑑》を手に、月ノ目次葉と向かった世界塔の部屋の中には、広大な異世界が広がっており、コーディネイターの杜若叶瀬が待ち構えていた。

 わかっちゃいたけれど、素直なキャラクターは一人も出てこない。誰も一癖あるキャラクターで、その一癖が互いにはまっているから、嫌み無く物語が転がっていく。ただ、主人とメイドはぴったり来るけれど、許嫁にはもう一工夫ないと浮いちゃうかな。
 異世界で神様から課されるゲームをこなすというイベントだと思わせておいて、最終的には人間と人間の頭脳戦に持って行っている。もっとも、その辺りが本領を発揮するのは、次巻以降だろうけれど。

“菜々子さん”の戯曲 (2) 小悪魔と盤上の12人

菜々子さんのいる学校
評価:☆☆☆☆☆
 新入生の宮本剛太は、文芸部部長の月ヶ瀬に嵌められそうになっているところを、偶然に出会った菜々子先輩に助けられる。成り行き上、菜々子先輩の所属する映画研究会に入ることになった宮本は、菜々子先輩の本性に気づきながらも、彼女の期待に応えようと振り回されることになる。
 そして彼らの脇を彩るのは、前作にも登場した菜々子さんの親友である片寄久美子や、映研のメンバーである、水落橋祥子、二条真一郎、天坂舞たちだ。

 前作は菜々子さんとぼくの対話がほとんどだったが、本作はアプローチをガラリと変えて、菜々子さんの通う高校が事件の舞台となる。このため、前作の主人公の一人であるぼくは手紙の中にしか登場しない。
 しかし、前作と共通するのは、全編を通じて張り巡らされる菜々子さんの思惑である。偶然と必然を織り交ぜながら、そして小さな事件をいくつも積み重ねて宮本を翻弄しながら、最終目的へ向かって道筋を作り上げていく。
 約一ヶ月間に渡って宮坂が遭遇する様々な出来事を章ごとに描きながら、一見関係無い様なそれぞれの出来事を通じて知った事実が最後につながりだす。前作よりもパズルなどミステリー要素が多めになっているが、一部の情報は読者に隠されているので、完全なミステリーというわけではない。

 前作で作り上げた菜々子さんというキャラクターを十分に利用しつつ、宮本というアクティブな探偵役を加えたことにより、馴染みやすい物語になっていると思います。事件は結構卑劣ですけど。

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“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕

互いの思惑を上回ろうとした上で築かれる不思議な信頼関係
評価:☆☆☆☆★
 非ウィルス型嗜眠性脳炎により引き起こされる全身痙攣で指一本動かせず、瞬きすらもできない身体となった坪手明の病床を、今では習志野菜々子という仮名で呼ばれる少女が訪れる。それは、三年前、彼らが小学六年生だったあの事故から、平日は欠かされる事なく続けられてきた儀式だった。
 その儀式が途切れた金曜日の翌月曜日。菜々子さんは突然、あの事故の出来事を蒸し返し始める。彼女が氏名連想誘発性心神喪失症候群と名付けられた、自分の本名を呼ばれると発作を起こす病気となった出来事が、誰かの故意で引き起こされた事件だったというのだ。
 それをきっかけに、考えることしかできない坪手明は当時の出来事を思い起こす。自分と菜々子さん、そしてもう一人のNに起こった出来事を。

 現在の二人の病室での出来事と、三年前の出来事を、交互に描写しながら、主人公の思考の軌跡をたどっていく形式の作品。そして最後に、菜々子さんの思考で真相が明かされる。主人公は現在全く意思表示ができないのだが、菜々子さんの一方的な語りと彼の思考が、まるで会話が成立しているように作り上げられている。
 そして、三年前の回想では、主人公の思考方法と、菜々子さんの性格や行動が段階的に明らかにされ、それに基づいて事件が解き明かされていく。ラプラスの悪魔という、初期条件を適切に与えることで全ての未来を自在に操る仮想の悪魔の存在のように、前提が変わるたびに主人公の頭の中で仮説がコロコロと変わっていくのが面白い。そしてそこには、事態を全て掌握しようという菜々子さんの思惑も見え隠れする。

 意図したことかどうかは分からないけれど、本当に小学生が背伸びをした表現を使ったように感じる文章のところもあったりして、ちょっと戸惑う表現のところもある気がする。だけど、ほとんど二人の登場人物だけで、互いに会話を成立させず、しかし意思疎通は出来ているように組みあがっているという、少し不思議な感じは面白いと思う。

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