多宇部貞人作品の書評/レビュー

魔探偵×ホームズ

シャーロキアンに怒られそう
評価:☆☆★★★
 10年前の世界の危機において魔導を封印した魔探偵(ウォーロック)と呼ばれる探偵のシャーロック・ホームズは、武器に変化する多変型魔装人器(メイガス)となった相棒のジョン・ワトソンと共に、ロンドンの平和を守っていた。
 そんな時、兄のマイクロフト・ホームズから、魔導復活を目論むモリアーティ教授が、グルーナー男爵に何事かを示唆して事件を起こそうとしていることを知らされる。調査のため出かけたホームズは、魔石を狙う怪盗アイリーン・アドラーと再会を果たすのだった。

断罪のレガリア II 星の偶像

悪魔への願い
評価:☆☆☆☆★
 黒装退魔師であるシオン・タケハヤ・ベルナルド(竹葉谷紫苑)は、古都城八尋が一翼を担う極東教会直属の退魔機関「熾天使の六翼」の命で、魔王級悪魔が絡むと思われる事件の調査を命じられる。
 一方、古都城八慧は自分と似た境遇のアイドルJUNEこと穂波旬と友達になり、何でも願いが叶うというサイトに、亡くなった母親に会いたいと書き込みをしてしまう。

 一見何の関係もない出来事が、世界規模でつながり、詳細不明の悪魔アモンから、魔王級悪魔を生み出す。

封神裁判

逆転裁判?
評価:☆☆★★★
 かつては強力な神力を持ちながら、とある事件を起こしたためにほとんどの神力を封じられてしまい、それでも自分の理想を実現するため、最強弁護神のミロク所長がいる弥勒法律事務所に入り弁護神と伏義は、未だ自分一人で事件を担当したことがなかった。
 所長が地獄へ出張中のある日、事務所を高天原の菊理姫が訪れる。彼女は、義姉であるイザナミを殺して容疑者として捕まった友人のイフリートを弁護して欲しいというのだ。

 一途な彼女の願いを受けて、一人で弁護を受けてしまった伏義は、弁護神見習いである菊理姫と共に、事件を捜査する。姉である司法長官の女禍から資料を横流ししてもらい、アヌビス刑事神を色香で誑かして現場を見分するのだが、対する敵は常勝無敗のフォルセティ検事神、そして絶大な権力を持つ事業家ゼウスだった。
 はたして彼は真実を詳らかにすることができるのか?

断罪のレガリア ―ソロモンの継承者―

復讐の道筋
評価:☆☆☆★★
 アレイスター・クローリーを名乗る魔神による大召喚の儀式により、世界は異郷化が進んでいた。しかし、モニカ・ネオ率いる黒装退魔師団が情報操作をしているおかげで、未だ一般の人々はその事実を知らない。
 シオン・タケハヤ・ベルナルド(竹葉谷紫苑)は、アレイスター・クローリーの儀式により両親を失い、極東教会の退魔師の古都城八尋に引き取られ、彼の娘の古都城八慧と姉弟のように暮した。そしてソロモンの指輪を所持し、ソロモンの72柱の悪魔との契約を進めつつ、黒装退魔師として魔神と戦う日々を送っていた。

 そんな戦場の一つで、魔神を狙う天津架々世と戦うことになり、戦場に紛れ込んできたクラスメイトの花吹雪咲夜を救うことになる。

 序盤から戦場を複雑にしすぎじゃないかな?

シロクロネクロ White Necromancer & Black Necromancer (4)

受け継ぐ思い
評価:☆☆☆☆★
 全日本シロネクロ協会は、得真三次らクロネクロの殲滅を決定した。協会員である高峰雪路やソフィア・恵里香・アクセルロッドも参戦することになり、不二由真もそれに随行することを決意する。
 ところが奇襲作戦は裏切りの発生により失敗、高峰雪路とソフィア・恵里香・アクセルロッドは敵の手に囚われてしまう。一方、不二由真はとらわれなかったものの、辺獄の何者かの干渉から、記憶を失ってしまった。

 協会の牢獄に監禁されることになった不二由真だが、そこをクロネクロのプラトーンと岸谷万里王が襲撃。不二由真を笑い猫という笑わず喋らない少女の情報屋の許へと連れて行くのだった。

 シリーズ最終巻。僕たちの戦いはまだまだ続くエンドだが、とりあえずひとやま超えたことになった。

シロクロネクロ White Necromancer & Black Necromancer (3)

ビーチと言えば水着だね!
評価:☆☆☆☆★
 シロネクロの高峰雪路と出会ったことでゾンビになってしまった不二由真だが、特に後悔はない。何故なら、雪路とソフィア・恵里香・アクセルロッドという、二人の美少女と知り合いになれただけでなく、一つ屋根の下で暮らせるようになったからだ。しかし雪路は、絶対に由真を人間に戻すと言い、その研究に余念がない。それは、この修学旅行先でも変わらなかった。
 比良坂高校の修学旅行先は、めんそ〜れ沖縄!沖縄と言えばビーチ、そして水着のわけで、由真のテンションが上がらないはずはない。雪路にソフィア、そして由真に好意を寄せる普通の女子高生である大塚桜と友人の関谷和弥という5人で行動している間も真面目さを崩さない雪路を水着に着替えさせ、瓶底めがねも外させて、沖縄でのビーチデビューを果たさせる。そのあまりの人気ぶりに、望んでやったことのはずなのに、どこか釈然としないものを感じる由真。

 そんなパラダイス沖縄で、クロネクロのプラトーンとそのゾンビであり、妹の岸谷瑠衣を生き返らせようとするクロネクロでもある岸谷万里王と遭遇し、一気に萎えてしまう。彼らの目的も、雪路と同じく、得真三次と言うクロネクロに利用された高僧ネクロマンサー波多守の遺産だった。
 しかし由真にはアドバンテージが二つ。一つは佳奈と言う少女の幽霊と出会ったこと。そしてもう一つは、シロネクロの師匠であるマトリのサポートを得られることだ。

 沖縄の離島で繰り広げられる、最愛の者を生き返らせるという夢想に取り憑かれてしまった悲しい親子の物語と、それに自分たちの生き方をダブらせる少年少女たちの決断が描かれる。

 相変わらずエロ妄想を暴走させて、お約束の行動をしまくる由真だが、少年ヒーローらしい面とらしくない面を持っている。らしくない面は、現状ではヒロインたちの方に圧倒的な実力があって、結果として彼女たちに守られてしまうこと。らしい面は、自分の弱さを自覚し、自分自身を強くしようという向上心と、例え弱くてもヒロインたちを守るために体を張る決意が出来ると言うことだろう。
 そういう真面目さが作品に通底しているにもかかわらず、表面的にはエロコメ・ラブコメ展開を追求する。そのあたりのバランス感覚は、現在のところギリギリ取れているとは思うが、どこか踏み外しそうな危うさも感じさせるところに、まだ向上の余地があるとは思う。

シロクロネクロ White Necromancer & Black Necromancer (2)

奇跡にもきちんと理由がある
評価:☆☆☆☆★
 完全自立型のゾンビとしてこの世に舞い戻ってきた不二由真だったが、この世への未練であるエロいことに満足してしまうと消え去ってしまう。それなのに彼は、彼を復活させたネクロマンサーの高峰雪路や、彼女を慕うソフィア・恵里香・アクセルロッドと一緒に暮さなければならない。天国なのに地獄の状況だ。

 自分を厳しく律し、目立つことを絶対にしない雪路だったが、由真と知り合い、少しは生きることを楽しむようになってきた。そんなとき、彼女のもとにシロネクロ協会から、査問会への召喚状が届く。

 前回の事件の後始末に関わる出来事と、由真の中にある遺産を巡る暗闘、そしてシロネクロとクロネクロ、それぞれを統括する組織が登場し、問題の範囲は彼らの周囲にとどまらず、ネクロマンサー全体の問題へと発展していく。

 最後の引き方や次巻への導入部分は上手いと思うのだけれど、今回の事件の中核となる部分がちょっと弱い気がした。今回のテーマって前巻で既に処理されていた問題じゃなかったっけ?という感じがする。
 そんなわけで、今回は引っ張り過ぎな感じがして、個人的にはあまり楽しめなかった。ただ次は沖縄へ出かけるらしいので、そちらでは新たなイベントがあるかもしれません。

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シロクロネクロ White Necromancer & Black Necromancer

明るく元気でちょっぴり暗い
評価:☆☆☆☆★
 高校生の不二由真は、廃園になった遊園地でゾンビに殺されてしまう。特に彼を狙ったわけではなく、巻き添えを食っただけだ。彼が巻き込まれたのは、クロネクロと呼ばれる悪いネクロマンサーが狙う、ネクロノミコンをねらう戦いだ。
 そして不二由真は、そのネクロノミコンを持っているという善いネクロマンサー、シロネクロの高峰雪路によって、ゾンビとして蘇らせられる。

 学校では目立たない格好をしているので気付かなかったけれど、実はクラスメイトだった高峰雪路によれば、完全な人間として復活する方法もあるらしい。
 それまでの間、彼女の家に居候することになるのだが、実は不二由真をゾンビとして蘇らせた根源は、彼の女の子とエッチしたいという欲望。だからその欲望が満たされれば成仏してしまうのだ。
 そんなわけで、女の子の家にいながら禁欲生活を強いられる不二由真なのだが、クロネクロのネクロノミコンを狙う企みはどんどんエスカレートして来る。

 非常に軽い感じの主人公が、一回死んでいるにもかかわらず能天気に、ヒロインにしつこくアプローチをしていく。一見すると迷惑行為みたいなんだけれど、最後まで読むとヒロイン側からは別の見方があったことに気づかされる。
 そして、死者を蘇らせるという技法が設定にある以上、死んだ人に対する想いというのが大きな要素として入って来ることは免れない。そしてその要素が加わることで、前半の軽さに対して、後半に変化が生じる。この落差が良い感じ。この落差は「変態王子と笑わない猫。」に通じる部分もある。また、エロ禁止設定は「オワ・ランデ!」「だから僕は、Hができない。」にも共通している。

 本来の電撃文庫のターゲットであろう、中高生男子に照準を据えた印象のある大賞受賞作だったと思う。

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