竹内佑作品の書評/レビュー

キルぐみ (3)

時間の外の秘密
評価:☆☆☆☆★
 病院での戦いは、催眠能力のようなものを持つ仁科の仲間を増やさず、自分たちの仲間を増やすための戦いとなってきた。音子がきっかけでクラスメイト達が大量に戦場に入ってきてしまい、歩と赤糸は彼らを保護するために奮闘する。
 一方、竜胆凜は、病院に入院中の幼馴染の竜胆明日香を見捨てられず、最悪の選択をしようとしていた。キグルミの秘密とヒロインたちの関係が明らかになす。シリーズ完結編。

キルぐみ (2)

新しい仲間
評価:☆☆☆☆★
 纏うとパワードスーツのような異能を発揮するキグルミを着て戦う不思議な現象に巻き込まれた大垣内歩は、逆木原赤糸という味方を得たものの、友人だった郷田勇気や江洲巴とは敵対することになってしまった。
 こうしてキグルミのサイクや赤糸と共に、人死にを出さないために奮闘する歩だったが、そこに新たな同級生が転送されてくる。彼女の名前は三月音子。先日、姉の友人である三月十四から動向を探ることを頼まれていた少女だった。

 彼女が戦いに巻き込まれないよう、キグルミを着ないように説得する歩だったが、そこに襲撃があり、サイクは音子と共に、歩は音子のキグルミのラビイと共に、分断されてしまった。最強戦力である赤糸不在の場を、彼らは乗り切ることができるのか。

キルぐみ

どちらの言うことを選ぶべき?
評価:☆☆☆☆★
 我慢強すぎて怪我を悪化させてしまい陸上を諦めることになった高校生の大垣内歩は、郷田勇気や江洲巴くらいとしか話さない、灰色の高校生活を送っていた。怪我をした時の陸上部のマネージャーだった竜胆凜にも冷たく当たられている。
 そんなとき、ちょっとおかしな出来事が起きる。一つは委員長の逆木原赤糸から携帯電話の連絡先を聞かれたこと。郷田勇気から、もし気づいたら知らない間に廃病院にいて目の前に着ぐるみがあっても着てはならないと忠告されたこと。そして、逆木原赤糸からの電話に出た途端、気づくと廃病院にいて、ベッドの上にあった一つ目の着ぐるみに声をかけられたことだった。

 郷田勇気からの忠告に従い、しきりに自分を着るよう言う着ぐるみの言葉を無視していたところ、着ぐるみを着て鎌を持った逆木原赤糸に襲われる事態になってしまう。一体ここでは何が起きているというのか?

最弱の支配者、とか。

終盤はターミネーターで大体あってる
評価:☆☆☆☆★
 松原ユキトは平凡で中庸な人生を歩む決意をした高校生だったのだが、空から落っこちて来た少女、桑畑三十と出会ったことで、その願望は危ういものへとなってしまう。彼女は、30年後の未来から来たと語り、そこではユキトが総統として世界を支配しているという。そして彼女は総統の第七行使、直属の部下なのだ。
 当然、中二病のイタいヤツとして接するユキトなのだが、担任の美術教師である新出匡子や、保健室登校をしている権藤季乃までもが、30年後から来た総統の部下だと言いだし、もう何が何やらわからない。

 しかし、そんな戯言は信じず、記憶喪失になってしまっている権藤季乃と、彼女を助けて教室に戻そうとする渡邊明日美らと一緒にご飯を食べたり、友達としてふるまったりしているうちに、彼は信じたくないものを信じなければならない状況に追い込まれる。
 そんな状況は無視して信じたいものだけを信じ続けるか、現実を直視して行動を起こすか。そんな選択を迫られたときに、彼の内側から去来するのは、5年前に捨てたはずの、ヒーローを目指していた自分の姿だった。

 今回の物語の展開上、ユキトが30年後の支配者で、桑畑たちが30年後から来た未来人である必然性を全く感じなかった。事件の解決には、教室の中の人間関係だけで十分こと足りてしまうのだから。いまのままでは、空から少女が下りてくる理由はあるけれど、代わりにユキトが支配者である理由が無くなってしまっている。
 そして、ちょっとコメディっぽいタッチになっているにも拘らず、意外にラストに救いがないところにギャップがある。これが面白いギャップかつまらないギャップかは、次巻以降への活かし方で評価が変わってくる気がする。

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