竹林七草作品の書評/レビュー

猫にはなれないご職業 (2)

少女の抱える闇
評価:☆☆☆☆★
 祖母の藤里春子が陰陽師だったことを知った藤里桜子は、陰陽師になる決意をした。春子の助手だった陰陽師の猫又であるタマは、そんな桜子に不安を感じていた。彼女には、溢れるほどの呪力はあれど、妖を見る才能がまるで感じられないのだ。そんな桜子の友人である神波命は、陰陽師の修行と称してあちこち連れ回されるのだが、見鬼の才がある命には、妖しい場所は恐ろしすぎる。
 そんな修行場所の一つである廃屋の押し入れの中から現れた少女の国東沫莉からのお願いで、彼女についている鬼を祓うことになった桜子は、妖しいハウツー本に従って準備をしだす。もちろん、影ではこっそりとタマがサポートしているわけだ。そしてやって来た鬼を見て、タマは沫莉が抱える闇に気づくことになる。

 こうして沫莉が藤里家を去ってから一週間後、荒津緋乃香という、憑き物落としを家業とする巫女が現れ、藤里家に協力を要請してくる。彼女は神隠しに遭遇した子供たちを助ける依頼を受けていた。

 パンツに関する描写が多い。全般的に色気のないパンツの話ではあるのだが、女子高生が粗相しちゃったり、着物がはだけちゃったり、スカートがずり落ちちゃったりする。どんだけパンツが好きなのかと。
 今回は前回よりもタマの活躍シーンが多い気がする。日常では大概ダメな猫だけど。

猫にはなれないご職業

猫又ならばなれるのか?
評価:☆☆☆☆★
 祖母の藤里春子を亡くし、その遺産を狙う親族を追い払い、仏壇の前に座る藤里桜子は、未だ祖母の死を心から受け入れることは出来ていなかった。そんな彼女を心配そうに見つめるのは、祖母の代から彼女の家にすむタマ、猫又だ。
 藤里桜子が未だ学校に登校出来ていないのを心配してやって来たのは、春子が存命中からよく遊びに来ていた神波命だ。そんな神波命が帰った藤里家の天井裏で、猫又のタマと狢のヤクモが語り会うのは、これから桜子を襲う予定の災難についてだった。

 代々、陰陽師の家系であった藤里家は、祖母の春子も当代随一の陰陽師であり、数々の怨霊を祓い、あるいは封印して来た。そのうちでも最悪のひとつ、八尾の天狐が霊力の粋である桜子を喰らうべく、今にも封印を破りそうになっている。
 かつては春子と共に、「犬神」清十郎を使って八尾を撃退した猫又陰陽師のタマではあるが、いまやただ一匹の力でそれを討つことは難しい。加えて、桜子自身は、藤里家が陰陽師の家系であることも、祖母が陰陽師であったことも知らない。全ては春子の方針だ。そこで、春子のもう一人の孫とも言うべき神波命に協力を求めるべく、神波御琴名義で製作したBL全集をネタに脅しをかけるのだが…。


 前半はツッコミどころ満載で、春子の死後に命を狙われると分かっていた桜子にどうして自衛手段を教えておかなかったのかとか、春子の生前、災厄の源を断てば良かったのではないかとか、数々の疑問が浮かび上がり、読むのがかなり嫌になったのだが、その疑問に対する答えは後半できっちりとほどかれる。その重要な要素が犬神の清十郎というわけだ。
 しかし、“お姫様”とも言うべき桜子自身が、最後の最後まで物語の中心に来ることがなく、結局、命がヒロインの様なポジションに収まっているところにアンバランス感がある。桜子の危うさをその理由にしたいのならば、もっと危うさを強調する演出をしても良かっただろう。

 第6回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品。

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