伊達康作品の書評/レビュー

結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの? (3)

最初と最後が怒涛の展開
評価:☆☆☆☆★
 ナトゥアを支配していた竜公ゴルニシチを討伐したメル、サビト、アトリは、次なる竜公バークナーを撃破し、その支配地に残されていたフラオディール王国の残党の住む集落へとやってきた。そこで亡国の王子ルフェルドと、ドジっ娘メイドのピリスに出会う。
 竜公亡きあと、統率なく襲い来る亜人たちを撃破したメルシオーネは、ルフェルドから母親の素性について知らされる。そして人間至上主義を受け継ぐルフェルドから邪険にされるピリスが竜公子(ドラグリーズ)であることを知るのだった。

 最初と最後が怒涛の展開。その分、真ん中はまったり。

結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの? (2)

幼馴染との約束
評価:☆☆☆☆★
 次なる竜公を目指し、ナトゥアの街に辿り着いたメルとサビトは、別々に街へと潜入する。
 この地域の支配者である竜公ゴルニシチは、何故かナトゥアの街を襲うことはなく、街の軍備は最低限のものしか維持されていなかった。その結果、メルは役場の食堂のメイドとして働くことになり、先輩のシノという女性と出会う。彼女はサビトの幼馴染である呼子のアトリが変装した姿だった。

結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの?

能天気ニンジャ
評価:☆☆☆☆★
 竜人族の竜公(アポステル)率いる亜人たちによって絶滅寸前に追いやられた人類は、転々とする集落で生き延びていた。そんなある集落において、剣聖女として扱われるメルシオーネの前に、大陸の外、ヒノモトからやってきたというシノビを名乗る少年サビトが現れる。
 サビトを引きとめ、村を守る手伝いをしてもらうメルシオーネだったが、彼女には大きな秘密があった。それは、彼女が竜人族と人類のハーフである竜落人(ドラグリーズ)ということであり…。

 次巻があれば、サビトと頭領の座を争うアトリ(少女)も話にからんできそうではある。

瑠璃色にボケた日常 (4)

ボケない彼女
評価:☆☆☆★★
 瑠璃が霊虐と言う子供がかかる霊障に罹り、普通の女子高校生になってしまった。あまりの代わり様に、周囲はどう扱ったらよいかわからない。
 そんな時、美濃部春喜という与霊師が街に姿を現す。霊を人に憑けて金を稼ぐという仕事をしている彼は、成仏したはずの小田切の霊を持ち、瑠璃からさらに霊を飼う方法を知るため、街にやってきたのだ。

 シリーズ最終巻。

瑠璃色にボケた日常 (3)

自分の力
評価:☆☆☆☆★
 交通事故で野球に挫折し不貞腐れていた紺野孝巳は、六黒という六体の荒御霊を束ねて使役する怨霊師の《凶姫》有働瑠璃や、禽踊と牙穿という霊獣を守護霊として持つ霊導師の《鵺御前》鴫原翠と出会い、お笑いと、《喝破》《言霊球》という霊能力に目覚めた。そして、生邪魔を使う少女の三塚柘榴とその兄である呪殺師の三塚昴大と出会い、街を襲った騒動に関わることになった。
 色々ありながらも「おわらい研究会」の仲間も増え、クリスマスにはちょっとしたイベントを行うような友人を持つことが出来た紺野孝巳は、年末の鴫原家の儀式にお呼ばれをする。それは、彼女の守護霊である禽踊と牙穿という霊獣との契約更新の儀式だった。

 寿司が食べられるという程度の軽い気持ちで出かけたものの、屋敷では、鳰森月長ら分家から反発されている総帥としての姿を見せられることになる。そして、そのとき事件は起こった。

瑠璃色にボケた日常 (2)

エロボケの少女
評価:☆☆☆☆★
 交通事故で野球に挫折し不貞腐れていた紺野孝巳は、六黒という六体の荒御霊を束ねて使役する怨霊師の《凶姫》有働瑠璃や、禽踊と牙穿という霊獣を守護霊として持つ霊導師の《鵺御前》鴫原翠と出会い、お笑いと、《喝破》《言霊球》という霊能力に目覚めた。
 そんな彼の許に、関西から生邪魔を使う少女の三塚柘榴が訪ねてくる。彼女に連れられて向かった廃銀行で、彼は頭取さんという怪奇現象を起こしている呪殺師の三塚昴大と出会うのだった。

 前巻のヒロインはかなりそっちのけで、新たなヒロイン兼ぼけ3として活躍する三塚柘榴に振り回される主人公を描いている。軽いノリの登場人物たちとは裏腹に、怨念めいた設定の話になっている。

瑠璃色にボケた日常

球を捨てて霊につかれる
評価:☆☆☆☆★
 中学時代は全国屈指のピッチャーだった紺野孝巳は、交通事故で肩を粉砕骨折し、野球の道を完全に断たれた。不貞腐れてギリギリで青鶴高校に進学した紺野孝巳の夢枕に、彼のせいで中学時代は一度もマウンドに上がれなかった小田切和人が立った。
 高校入学後に、部活動中の熱中症でこの世を去った彼は、きっと自分を恨んでいるに違いない。そう思った紺野孝巳は「おはらい研究会」に相談に赴いた。ところがそこにいた有働瑠璃は「おわらい研究会」だと言い、紺野孝巳にツッコミを強要してくる。

 期待はずれだと思ったのも束の間、有働瑠璃は小田切和人の幽霊を呼び出すと、紺野孝巳の認識を再定義し、成仏させることに成功してしまった。彼女は、その身に数多くの怨霊を宿す霊感少女だったのだ。
 除霊のお礼として無理やり入部させられた紺野孝巳は、日々、お笑いの練習に付き合わされつつ、彼女の霊感に感化されたらしく、山根由香子という少女の幽霊を目撃するようになった。そして同じように少女が見える鴫原翠から、彼女とクラスメイトの瀬戸川圭太には近づかないように釘を刺されてしまう。

 それでも鴫原翠が少女の幽霊を成仏させることなく放っておくのを見て、孝巳は瀬戸川圭太に接触を図ってしまう。そして彼から、山根由香子は自分の彼女であり、不良の武本京也に奪われた揚句、妊娠して自殺したと聞かされるのだった。

 コメディと言うけれど、幽霊関係がテーマとなっていることから、死んでしまった人間が数多く登場する。しかもその死に方があまり良いものではないわけで、気分が良いわけもない。ところがぎっちょん、有働瑠璃はそんな幽霊たちを軽視し、とにかくボケを飛ばしまくるのだ。
 そんな彼女のやり方に反発する鴫原翠は、禽踊と牙穿という霊獣を守護霊として持つ霊導師で、有働瑠璃とは浅からぬ縁がある。そして彼女は彼女で山根由香子を救おうとするのだが、その意図を明確にしないせいで、短気な紺野孝巳とぶつかることになるのだ。

 重い話は今巻で決着がついたように思えるので、次巻以降があれば普通のコメディになるのだろう。設定やキャラクターは面白い気がするのだが、構成が整理しきられておらず、硬軟を上手く見せることができていなかった気がする。

 第8回MF文庫J新人賞佳作受賞作品。

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