武葉コウ作品の書評/レビュー

再生のパラダイムシフト V スクランブル・フェスタ

必要とされる犠牲
評価:☆☆☆★★
 風峰ほのみを狙う鈴蘭・フランツィスカ・ハーゼンクレファーが鶺鴒へと移籍してきた。風峰橙矢や緋空つばさと同じクラスに入った鈴蘭は、あっという間にクラスで主導的な地位を手に入れ、学園祭「白羽祭」のクラスの出し物を演劇に決めてしまう。その主役として抜擢したのが、リノン・クリスベルだった。
 着実に準備が進む学園祭にあって、リノン・クリスベルは鈴蘭が出してきた脚本に表情を凍りつかせる。これは彼女の秘密を暴く脚本だった。リノンの過去と、ほのみが狙われる理由が明らかになる。

再生のパラダイムシフト IV ナイト・オブ・アイリス

存続の危機
評価:☆☆☆★★
 潜水都市「鶺鴒」と潜水都市「羽衣」は、潜水都市「雨燕」に対抗するため、黄金の花瞳の共同調査計画を立案する。その一員として派遣されたはずの特立研究機構特別派遣調査室だったが、室長の天之河・シュティン・エル・美陽の父で特立研究機構総裁の天之河・シュテイン・エル・ジノベルトから、調査からの除外と調査室解体が申し渡されてしまう。
 必死の弁明で調査員を選抜する試験への参加が認められたものの、最高業績賞を受賞しなければ調査室が解体となることは変わらない。美陽と親交のあった羽衣の武装研究員である鈴蘭・フランツィスカ・ハーゼンクレファーやエミリィ・グランバードの協力を得て試験に臨む風峰橙矢だったが、彼は残留体に感情移入して撃てなくなっていた。

再生のパラダイムシフト III ゴースト・エッジ

揺らぐ仮初の平和
評価:☆☆☆★★
 潜水都市「鶺鴒」政府の起こした犯罪を解決し、特立研究機構特別派遣調査室には仲間が増えた。室長の天之河・シュティン・エル・美陽の下で武装研究員を務める風峰橙矢は、緋空つばさとリノン・クリスベルを歓迎する。
 学校では、新聞部の御厨葉子が書いた記事のおかげで有名になり、緋空つばさはこれまでの時間を取り戻すために、積極攻勢に出てくるようになる。風峰ほのみやリノンともデートをする橙矢の前に、レーシュ・エスペラントという少年が現れる。彼はレギナ・リリウムという銘の剣をふるい、「鶺鴒」の機関部であるラピュセルを破壊して海に沈降させる。

 彼の駆動銃(ランゲージ)であるドラグーン弐式の思考昇華(パラダイムシフト)が破られ、かつ、レーシュの狙いがほのみであることに気づく橙矢はレーシュと敵対の道を歩むのだが、レーシュと共にいる少女アイネ・コールランドと接することで、その考えを改めるようになるのだった。

 とりあえず橙矢ハーレムの設立と、橙矢のライバル的存在の登場といった感じ。

再生のパラダイムシフト II ダブル・トリガー

捨てていたものの大切さ
評価:☆☆☆☆★
 潜水都市のひとつである「鶺鴒」に住む高校生の風峰橙矢は、特立研究機構特別派遣調査室室長の天之河・シュティン・エル・美陽の下で、武装研究員としてのバイトをこなしている。武装研究員の任務は、残留体を倒し涙晶を回収することだ。その過程で、残留体に関係していた少女のほのみを保護し、花屋「春の蜜柑」を経営する姉の風峰ハルの養子とすることになった。
 一緒に学校に通うようになったほのみのおかげで、これまでクラスメイトから避けられていた風峰橙矢は、日常の良さを実感できるようになってきた。しかしそれは、これまで彼に良くしてくれていた緋空つばさをどれだけ蔑にしていたかを思い知る日々でもあった。

 そんなとき、学園の生徒たちが拉致される事件が発生する。その捜査にやって来たのは、政府直轄の特例調査局に所属する少女、リノン・クリスベルだった。

再生のパラダイムシフト リ・ユニオン

海底のボーイ・ミーツ・ガール
評価:☆☆☆★★
 文明の多くが大陸と共に沈み150年。人々は潜水都市を建造して海上で生活しつつ、年一度、純白の花瞳(エルダーアイリス)など、深海底から海面にそびえ立つ塔の底へ潜り、そこに棲む残留体という生物から涙晶というエネルギー源を奪取し、安定した社会を構築していた。涙晶は外部刺激に応じた反応を返す物質であり、駆動銃(ランゲージ)を通じた思考昇華(パラダイムシフト)により、想像した物体を創造することも出来るのである。

 潜水都市のひとつである「鶺鴒」に住む高校生の風峰橙矢は、特立研究機構特別派遣調査室室長の天之河・シュティン・エル・美陽の下で、武装研究員としてのバイトをこなしている。武装研究員の任務は、残留体を倒し涙晶を回収することだ。
 ある日、ランチに出かけた橙矢は、冬なのに薄着で路上に寝ている迷子の少女を拾う。記憶喪失だという彼女にほのみという名前をつけ、友人の緋空つばさや、花屋「春の蜜柑」を経営する姉の風峰ハルに紹介する橙矢には、今の彼を決定づけることになった過去の痛みがあった。

 第24回ファンタジア大賞大賞&読者賞受賞作。設定的にはツッコミどころ満載で、五千万人も住む潜水都市って大きさや浮沈機構はどうなっているの?とか、バラスト水の環境汚染がとんでもなさそうとか、そもそも、非戦闘員を連れて資源採取のために海に潜る理由は皆無なんじゃない?とか、列挙にいとまがない。第一、主武器である駆動銃(ランゲージ)だって、毎回、異なる武器を生成するなんて、実践上、非効率過ぎるでしょう?
 文体や物語の空気感は、第23回ファンタジア大賞大賞&読者賞受賞作「ライジン×ライジン RISING×RYDEEN」ともに通っている印象を受ける。編集部がそういった作品をあえて選んだのであろう。

 ツッコミどころ満載ではあるが、唯一、主人公がヒロインの裸を見たことが、最後の解決の伏線になっていた部分だけは感心した。そんなにじっくりたっぷりねぶるように見ていたのか…。

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