ツガワトモタカ作品の書評/レビュー

剣と魔法の世界ですが、俺の機械兵器は今日も無敵です。

タイトル通りの内容
評価:☆☆☆★★
 老衰以外で死んでも生き返る世界で、その恩恵を受けられないエイジ・ハズウェルは、そんな世界をもたらした人物が残した工房と管理者のテンコを手に入れ、既に失われた機械文明を取り戻しつつあった。そしてその力を魔法の代わりに用いて、襲い来る敵を粉砕している。
 そんな彼らはたまたまオーガスタ王国女王クラリッサ・オーガスタと近衛騎士ララセル・ラングリラを助け、その知己を得ていた。そしてその女王からある依頼が届く。その依頼にある事件には、黄金の夜明けのロザリオ・ロンバルトと、テンコと同じ管理者のキャロル・ラビットが関わっていた。

新米社長のパーフェクトゲーム (3) 闇を託された聖女

誰もが社会の部品に過ぎない
評価:☆☆☆☆★
 リキッド輸送のための大型タンカー建造をけんもほろろに断られた意趣返しをするため、とある州の知事と全議員を総入れ替えしようと画策するアレックス・ベイリアル。そのために、チェルシー・パセットに依頼して情報収集を進める過程で、フィオナ・ブルースターの父親の死に不審なものを感じる。
 フィオナの父は大銀行の経営企画部長であり、合衆国の中でもアンタッチャブルな、宗教国家を介したマネーロンダリングに大きく関わっていた。ここを突破口にしようと決断したアレックスは、暗殺されかけていたフィオナを救出する。ところが、州知事の裏の顔を支えるマフィアは、ミレーヌ・アントワーヌの祖母を殺害した、悪名高い傭兵のレスター・コナーを雇っていた。

 始まりの五家とかいう大仰な肩書で登場したクリストファー・ウィザースプーンの噛ませ犬感。そして弟にあっさり乗り換えられてしまった大統領補佐官がかわいそう。最後、あまりにも簡単に片づけすぎだろ、という気はする。

新米社長のパーフェクトゲーム (2) 逆襲王女と神様の楽器

情に絆され内戦介入
評価:☆☆☆☆★
 情に絆され、内戦中の小国の幼き王女ハリエット・ラウドリアを助けることにしたアレックスは、合衆国と帝国、それぞれをバックにつける議会派と王政派を出し抜くため、戦力を整えると共に、宣伝戦を仕掛ける。
 その作戦は上手く行ったかと思ったものの、世論を超越する権力によって侵略は続行され、人倫を無視した天才博士イーサン・カーリンと清楚系淫乱少女エステル・リングホルムの開発した超兵器が投入されるのだった。

新米社長のパーフェクトゲーム 切り札の使い方

巨大な敵と経済戦争
評価:☆☆☆☆☆
 アクランド帝国とバニスター合衆国という二大国が政治的に勢力を誇る中、経済的に世界を支配するのはトリプルキングダムと称される、3つの巨大エネルギー会社だ。
 精霊力をエネルギー源として活用できるリキッドと呼ばれる液体の採掘権のほぼすべてを握るトリプルキングダムには、だれも逆らうことができない。なぜなら、リキッドを用いてのみ動かすことができる人型兵器レギオンフレームが、戦争の雌雄を決する戦略兵器だからだ。

 そんなトリプルキングダムの支配を崩そうともくろむ青年が一人。彼の名はアレックス・ベイリアル。かつて父親をトリプルキングダムの一角ハルバートに殺されたアレックスは、妹のイブ・ベイリアルと共に、生国であるルーメシアの王女シャロン・ルーメシアを巻き込み、西ケルストリアで発見されたリキッドの採掘権を獲得しようとする。
 かつて所属していたPMCブラックファングのミレーヌ・アントワーヌの協力も得て採掘権を得るのだが、そのことを面白く思わないハルバートは、東ケルストリアに武力支援を行い、西ケルストリアを併呑しようとする。だがその行動を、ハルバートでのかつての同僚エリン・エイリーは不安に感じるのだった。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ> (6)

あっという間の世界崩壊
評価:☆☆☆☆★
 三世寺夏彦や蓬田織姫が紅葉狩りをしつついちゃいちゃしていたところ、大千世界から明王が送り込まれてくる。その大部分は、暗黒ドームで戦っていた破戒王ヴェズエルと慈悲帝ゲシュペスが滅ぼしたものの、数十体が日本中にばらまかれてしまう。
 《レムナンツ》による神無大結界破壊活動を阻止することになった《イデアル》だったが、肝心の戦力である三世寺夏彦と蓬田織姫は、破戒王の残鉄を奪いに来たダイアンサスから保護するため、シュトライムが別々に魔造空間に閉じ込めてしまった。

 会えないイライラが募り、異空間から脱出しようとする三世寺夏彦と蓬田織姫は、二人で一つの極点位階に到達し、破戒王とその妻に勝負を挑む。そして、大千世界の最奥にいる如来に遭遇するのだった。

 シリーズ最終巻。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ> (5)

老人の妄執
評価:☆☆☆☆★
 蓬田織姫を無事に取り戻した三世寺夏彦は、いちゃいちゃ生活を送る。小さくなったシュトライムは、社長のリン・リン、副社長の下北麻美、碇ヶ関繭子やヘルガと共に、新鮮な気分で生活をしていた。
 ところが、元老院議員のクロムウェルが、元老院が出した元老院最終勧告により、慈悲帝ゲシュペスが地位を追われたことを知らせてくる。さらには、修羅庁長官代行のショコラ・ミミングスが解任され、修羅庁トップ5であるラグネオラ、クレスト、ゼドー、ロゼリーヌ、マルストリアが放たれたことも。

 一方、破戒王ヴェズエルは、妻のダイアンサスといちゃいちゃしつつ、自身の残鉄を集め、その勢力を強化していた。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ> (4)

レベルアップ
評価:☆☆☆☆★
 蓬田織姫の傀儡となっていた破戒王ヴェズエルの妻ダイアンサスを奪うため、リリエム・ホーリーベル率いる《レムナンツ》は、三世寺夏彦を一蹴し蓬田織姫を拉致していった。
 蓬田織姫を取り戻すため焦る三世寺夏彦をボコボコにして、シュトライムは彼らと戦うための力を手に入れる修業を課す。

 修業が完成間近に近づいた頃、ヴェズエル復活の予兆が感じられ始める。シュトライムと三世寺夏彦は、蓬田織姫を取り戻すためにレムナンスの本拠地に殴り込みをかけるのだった。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ> (3)

思惑の衝突
評価:☆☆☆☆★
 【玲瓏の焔】慈悲帝ゲシュペスの統治は盤石とは言えない。シュトライムが設立した魔術師組織《イデアル》に所属する三世寺夏彦と蓬田織姫には、ゲシュペスの統治を覆す秘密が隠されているとにらんだ元老院の一派に使嗾された修羅庁は、二人を拉致もしくは殺害することでその秘密を暴こうとする。
 一方、破戒王ヴェズエルの復活を目論む《レムナンツ》のリリエム・ホーリーベルは、蓬田織姫の傀儡に封印されているヴェズエルの妻を奪うべく、蓬田織姫を拉致しようとしていた。

 初めてのデートにドキドキする三世寺夏彦と蓬田織姫、それを見守る碇ヶ関繭子やヘルガのもとに、二つの勢力からの刺客が迫る。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ> (2)

吸血鬼の秘密
評価:☆☆☆☆★
 魔界と融合し、魔族の最強種【玲瓏の焔】の慈悲帝ゲシュペス統治下に置かれた日本は、魔族と魔術師のみが暮らす国となった。この際、一度は幼馴染の蓬田織姫と別れたものの、【玲瓏の焔】のシュトライムの指導を受けて斑鳩流本家魂燃式魔闘術を身に付けた三世寺夏彦は、ようやく日本へと帰還を果たした。そして、ゲシュペスの援助する私設治安維持組織《イデアル》に属していた蓬田織姫と再会し、かつてのクラスメイトの碇ヶ関繭子や、社長のリン・リン、副社長の下北麻美と知り合うことになった。
 だが一方で破戒王ヴェズエル復活を目論む《レムナンツ》のリリエム・ホーリーベルとも対立することになり、【破戒王の残鉄】を巡る激しい戦いが繰り広げられた。その戦いもひとまず収まったところに、《イデアル》のもう一人の仲間であるヘルガが復帰する。

 一目で夏彦のことを気に入ってしまったヘルガは、織姫の牽制も無視して積極アプローチを繰り広げる。しかし、そんな平和な時間は永くは続かなかった。《レムナンツ》のエルメネヒルドが、かつてヘルガを狙っていた吸血鬼殺しのグラシアを復帰させ、ヘルガに隠された秘密を暴いていく。

火界王剣の神滅者<ディスビルシャナ>

魔族と共生を余儀なくされた世界
評価:☆☆☆★★
 魔族の最強種【玲瓏の焔】の破戒王ヴェズエルと慈悲帝ゲシュペスの死闘により引き起こされた大魔災で、魔界と人間界の境に穴があき、日本は魔族の支配する国となった。約一割の魔術師となった人間を残し、それ以外の人間は強制退去することになった。
 その結果、三世寺夏彦は幼なじみの蓬田織姫と引き離された。魔術師として目覚めて日本に残る幼なじみに再会するため、【玲瓏の焔】のシュトライムの弟子となった三世寺夏彦は、斑鳩流本家魂燃式魔闘術を三年で修め、日本への帰還を果たす。

 シュトライムが創設した《イデアル》に所属する蓬田織姫と再会した三世寺夏彦は、同じく《イデアル》に所属するかつてのクラスメイトの碇ヶ関繭子や、社長のリン・リン、副社長の下北麻美と出会うのだった。
 シュトライムに師事する際に条件として出された、【破戒王の残鉄】回収を果たすため、同様にそれを成し、破戒王を復活させようという《レムナンツ》のリリエム・ホーリーベルと衝突していくことになる。

白銀竜王のクレイドル (6)

悪役こそ光り輝く
評価:☆☆☆☆★
 マルビナ・ヒロマーエ侯爵が領主を務めるガルツハーンを隣国リンフィールドの巫女フェリシアの脅威から守ったと思ったイルミ・ミルウィックとキャロライナ・ギルスベイン、サクヤ・サクラだったが、ついにティアマト・ハイロードに反旗を翻す準備を整えたアリス・フィン・ノンマルスは、世界中にマリィらのニンフェットを派遣し、人々を虐殺し始める。
 そんなマリィを止めるため、そしてキャロライナを取り戻すため、ひとりアリスに挑むイルミだったが、それはさらなる強大な敵との戦いの序曲に過ぎなかった。

 シリーズ最終巻。ノリノリで欲望に忠実に目的に邁進するアリスが勝者という気もしない終わり方のようにも思える。もちろん、イルミたちにもそれなりに落とし所が与えられるわけで、そういう意味ではみんなハッピーなのだろうけど。少なくとも、立ったひとりになってしまう人は誰も出なかったといえる。
 総括すると、悪役キャラの方が魅力的に動いたシリーズだった。

白銀竜王のクレイドル (5)

時間の流れは幻滅を招く
評価:☆☆☆☆★
 ザクィトエ・アナンシと反鏡乱舞という二つのアーティファクトを手に入れたイルミ・ミルウィックは、キャロライナ・ギルスベインやサクヤ・サクラと共に、マルビナ・ヒロマーエ侯爵が領主を務めるガルツハーンへ帰還していた。その帰り道、彼らは隣国リンフィールドの巫女セラフィーナを拾う。
 リンフィールドは大国の思惑により資源を乱獲された小国であり、先代の巫女であるフェリシアはその政争の犠牲となって暗殺された。かつて巫女の護衛をしていた魔術師見習いであったクリスフォード・アスロックは、その後、アリス・フィン・ノンマルスに拾われ、価値観を変えられたのである。

 そしてアリスに忠誠を誓ったクリスフォードの前に、11年前に死んだはずのフェリシアが現れ、リンフィールドでクーデターを起こしたと告げる。彼女の目的は、祖国を食い物にした大国に復讐することだ。
 しかしもはや過去の忠誠から切り離されているクリスフォードには、フェリシアに従う義理はない。だがフェリシアは、アリスの攻撃すらも受け付けない、超常の力を身に着けていたのだ。

 主人公はイルミのはずなのだけれど、そちらはラブコメメインで進行し、ファンタジーパートの主人公はクリスフォードが務める構成となっている。敵側なのに、主人公サイドを食っちゃう成長を見せているなあ。
 見せ場は全部クリスフォードにとられてしまったが、次巻ではその座をアシュトが取り戻す展開となりそうだ。

白銀竜王のクレイドル (4)

故国で目の当たりにする恨み
評価:☆☆☆★★
 アーティファクトを集めるため、東方へと旅に出た、イルミ・ミルウィックとキャロライナ・ギルスベイン、淡桜の元王女サクヤ・サクラの3人は、逢魔の街でマグロ丼を堪能しているうちに、トラブルに巻き込まれてしまう。一時、別行動をしたサクラが、九尾の狐に襲われ、その後、秋鳳に拉致されてしまったのだ。
 秋鳳国王ウツシヨ・サキモリと言えば、アーティファクトの持ち主。サクラを助け、アーティファクトを手に入れるため、新兵採用試験に挑むイルミとキャロライナは、親衛隊長のカエデ・カグラに出会う。

 一方、同じくアーティファクトを集めるアリス・フィン・ノンマルスは、今回はクリスフォード・アスロックやマリィ、そして最強のニンフェットにして狂人のエリーゼに、秋鳳のアーティファクト奪取を任せていた。
 どんだけ肩入れされてもダメダメなクリスフォードの哀れさを楽しみましょう。

白銀竜王のクレイドル (3)

黒幕ちゃんの戯れ
評価:☆☆☆☆★
 黒幕ちゃんを自称するアリス・フィン・ノンマルスの素性を調べるため、あらゆる本が集まる図書館村へやって来たイルミ・ミルウィックとキャロライナ・ギルスベイン、サクヤ・サクラの3人。書籍の多さに若干テンションが上がり気味のイルミと、そんな彼を囲み微妙な空気を作り出すキャロライナとサクヤだったが、何とかノンマルスの名が登場する、二千年前のティアマトの伝説に関する本がある図書館へとたどり着くことが出来た。
 ところがそこは、何の思惑があるのか、アリスが御膳立てした図書館。置いてある情報は真実だが、彼らは知らないうちに敵の虎口に飛び込むこととなってしまった。

 そんな状況にあるとも知らず、イルミを巡って微妙なさや当てをするキャロライナとサクヤ。そんな場合なのか?

 アリスとティアマトに関する出会いの伝説が明らかにされ、彼女がなぜティアマトに固執するのかが語られる。そして、アリスとの再戦に向け浮遊魔術の修業をするイルミに、彼の周りで騒がしくする少女二人。また、死んだはずのジョスカン・ミルウィックも、舞台裏で騒がしく暴れている。
 アリスとイルミの敵対関係がはっきりし、そしてのんびり屋さんのイルミも真剣にアリスと戦う覚悟を決めたことで、物語は実力で勝るアリスをいかに出し抜くかの勝負に転向していく。

白銀竜王のクレイドル (2)

事態を操る黒幕ちゃん
評価:☆☆☆☆★
 師匠アンデルセンにまつわる陰謀の真相を知り、自分と共にその人体実験の犠牲となった兄・ジョスカンとの決着をつけた魔術師イルミ・ミルウィックは、ドラゴンズ・ハイロードである少女、キャロライナ・ギルズベイルとウエスト・ドラゴンの子供と共に、ガルツハーンで騒がしくも平和な暮らしを始めていた。
 そんな彼のもとに、領主マルビナ・ヒロマーエ侯爵から依頼が来る。城館に住むフレイム・ドラゴンの病気を治すため、フロスト・ドラゴンが支配するジラガミ山に薬となるエリクシルを採って来て欲しいという。

 だがそれは、竜医を名乗るクリスフォード・アスロックと、彼の背後にいる自称・黒幕ちゃん、枢機卿アリス・フィン・ノンマルスが仕組んだことだった。そうとも知らず、ジラガミ山に向かったイルミとキャロライナは、途中で遭難していた女性ニーナを拾い、麓の村まで到着していた。
 かつてジョスカンと組んでいた亡国の王女サクヤや、ジョスカンが虐殺した島の生き残りの少女マリィ、そして神隠しにあったニーナの姉ローラを巻き込み、ジラガミ山で戦いの渦が巻き起こる。

 今回は後半のバトルが起きるまで、たっぷりとイルミとキャロライン、サクヤやニーナなど、女性キャラたちとのやりとりがたっぷりと描かれている。1巻の若干陰鬱な展開とは一線を画した、ライトな構成だ。
 しかしその裏側では、神話の時代から続いているような陰謀が繰り広げられる。アリスがマリィに仕込む悪辣な改造、アリスの裏側に君臨するティアマトという存在の正体、イルミの腕に仕込まれたハイロードの肉に隠された秘密など、ダークな要素も満載されている。また、ストッキングに一家言ある人は、色々と興味深いかも知れない。

 全体として、1巻よりはかなり読みやすくなっているというのが個人的な印象だ。あとは、若干硬いキャラクターの動きがもう少し滑らかになれば、もっと良くなる気がする。

白銀竜王のクレイドル

のっぺり平坦な感じ
評価:☆☆☆★★
 魔術師イルミ・ミルウィックは、ドラゴンの観察にやってきた森で、ウエスト・ドラゴンに戦いを挑み殺されそうになっている少女を助けた。その少女、キャロライナ・ギルズベイルは、助けられたことにお礼も言わず、悪態をつくばかりだったが、彼女のために死ぬことになったドラゴンが、実は子育ての真っ最中だったことを知り、しゅんと落ち込んでしまう。
 残された雛ドラゴンを育てると言い張るキャロライナに付き合い、イルミの家に下宿させることにするのだが、彼と彼女には実はある因縁があったのだ。それには、師匠殺しの兄ジョスカンも関わっていた。

 説明調の文体に違和感を感じた。あと、キャロライナの可愛さを強調したいなら、ガルツハーンでの日常をもっと描いた方が良かったように感じた。
 ネタとしてはダークなのだが、そのダークさに実感を抱かせる構成を望みたい。ただ、女の子を描く時の着眼点は結構好みかも。

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