月見草平作品の書評/レビュー

いもうとがかり (3)

木星人のはじまり
評価:☆☆☆★★
 父親の影響でガチガチの現実主義者だった天乃翔太は、クラスメイトの一片愛に告白しようとして、間違えて彼女の妹である自称・木星人の一片恋に告白してしまい、いもうとがかりとなった。そして、もう一人の自称・木星人である文月ゆうと出会い、幼なじみで占い好きな刑部玉穂との関係を通じて、心の余裕を知るようになっていく。
 そんなある日、一片恋が、やってくる木星人のマザーシップを歓迎するため、国を挙げての歓迎イベントを開かなければならないと言い出した。だが、国を巻き込むなんて出来るわけもなく、刑部玉穂の従姉で、市役所広報課に勤務する刑部美木の力を借りて、町おこしの体でイベントを開催することにする。

 シリーズ最終巻。締め切りをブッチした影響か、イラストの人が変わっていました。

輪廻のラグランジェ (3)

鴨川で解く宇宙の問題
評価:☆☆☆☆★
 レ・ガリテ王フィン・エ・ルド・シ・ディセルマインの妹ランことフィン・エ・ルド・スイ・ラフィンティと、デ・メトリオ王デ・メトリオ・ル・ヴィラジュリオの義妹ムギナミが宇宙に去り、取り残された鴨川女子高校ジャージ部の京乃まどかは、自分の進路についても何も考えられない腑抜けになっていた。
 そんな高校三年生の夏、再び「ウォクス・リンファ」と共にまどかの前に現れたランは、まどかにオービット「ウォクス・アウラ」に乗ってほしいと告げる。そして連れて行かれたファロスに向かってきたのは、「ウォクス・イグニス」に乗るムギナミだった。それを迎え撃つランとの戦闘を見たまどかは、二人の喧嘩を止めるために、なんとかリンファを動かそうとする。

 デ・メトリオ・ル・ユリカノの願いをかなえるために地球にやって来たはずのダノン・シ・アレイ、ソフィロ・カリア・ロス・イゾ、ラクス・レストリネ・ハ・キリウスは、なぜかBWHの支店を任されていたりして、鴨川にとけこんでいるところがなんとも。
 ノゥムンドゥス会長のアステリア・リーザマリード・アッシュフォールは何やら隠し事をしたまま、ポリへドロン千年問題に介入しようとしたりして、段々ときな臭くなったりもする。

 アニメ「輪廻のラグランジェ season2」のノベライズ版で、第1話から第7話のストーリーを取り扱っている。

輪廻のラグランジェ (2)

もやもやする気持ち
評価:☆☆☆☆★
 オービット「ウォクス・アウラ」に乗ることになった鴨川女子高校ジャージ部の京乃まどかは、「ウォクス・リンファ」に乗るレ・ガリテの王女ランことフィン・エ・ルド・スイ・ラフィンティ、「ウォクス・イグニス」に乗るムギナミと共に、デ・メトリオ・ル・ヴィラジュリオと戦っている最中に、アウラを暴走させてしまう。
 そのことを知ったノゥムンドゥス会長のアステリア・リーザマリード・アッシュフォールは、ファロス司令の田所正蔵に、アウラの出撃禁止とまどかの搭乗禁止を命じた。

 やることがなくなったまどかは、鴨川女子高校文化祭「おらが祭」を成功させるため、ジャージ部の活動に専念する。その過程で、ランやムギナミが自分以外の生徒たちと仲良くしているのを知り、気持ちにもやもやしたものを抱えるのだった。

輪廻のラグランジェ (1)

女子高生が宇宙戦争!
評価:☆☆☆★★
 鴨川女子高校に通う京乃まどかは、ジャージ部の部長だ。ジャージ部とはジヤージ部魂を持つ同士の集まりのこと。しかし部員はいない。主な活動は、他の部の助っ人だ。今日も今日とて、鴨川の海で人助けをしたまどかの前に、彼女が浜辺に忘れた制服を持って、ランことフィン・エ・ルド・スイ・ラフィンティが現れる。レ・ガリテから指示を受けてやってきた宇宙人だという彼女は、まどかにロボットに乗って欲しいという。
 そのロボットである伝説のオービット「ウォクス・アウラ」に乗り込ませられたまどかは、デ・メトリオの宇宙人であるダノン・シ・アレイの操るテネリタス、ソフィロ・カリア・ロス・イゾの操るウォルンタス、ラクス・レストリネ・ハ・キリウスの操るリベルタスと相次いで戦うことになる。

 流れのままにノゥムンドゥス日本の下で宇宙戦争をさせられることになったまどかだったが、従姉である東京海事大学海洋考古学研究所研究員の中泉ようこや、鴨女の体育教師・岩淵まちこの尽力で、これまで通り、叔父の中泉浩が経営するカフェBWHから学校に通いながら、宇宙戦争をやることになる。
 ところが、BWHには謎の巨乳美少女ムギナミや、それに触発されたランが居候することになり、まどかの前では仲良くしつつも、敵対勢力同士、微妙な空気を漂わせることに。そして、ムギナミと縁が深いヴィラジュリオや、ランのお目付け役のバランス・T・モイドが介入することで、事態は混迷していくことになる。

 アニメ「輪廻のラグランジェ」のノベライズ版で、第1話から第6話のストーリーを取り扱っている。ただし、紙幅の関係か、省略されているエピソードやキャラクターも多く、個人的には好きな、まどかが叔父を浩呼ばわりして躾ける場面などがなくなっていることは残念だ。そんなせいもあり、キャラクター造形が甘い部分もある気がする。
 アニメの方が情報量が多いけれど、暇があれば読んでみても良いかもという程度か。キャラの名前は詳しい。

いもうとがかり (2)

新たな木星人現る
評価:☆☆☆☆★
 クラスメイトの一片愛に一大決心をして告白しようとした天乃翔太は、誤って彼女の妹の一片恋に告白をしてしまった。しかもその一片恋は自称・木星人であり、他の人とは根本的に言動が異なる。異星人理解のためという名目で、恋は翔太の告白にOKを出したのだが、色々あった末、翔太は愛と共に、いもうとがかりとして、恋が普通の生活を送るためのお世話をすることになった。もちろん、愛とも一緒にいられるというのは大きな理由だ。
 今度は、恋のクラスに転入してきた文月ゆうも木星人を自称しているらしく、同じ木星人同士で交流を深めようと言うことで、翔太はゆうを誘いに行くことになる。ところがゆうは、言動こそ木星人に合わせているが、端々からにじみ出る思いは別のところにある模様。そして彼女は、みんなでキャンプに行こうと言い出すのだった。

 愛と恋の間で宙ぶらりんになっている翔太の前に現れた新たな女の子。彼女はなぜかはじめから翔太に近づこうとしている印象を受ける。過去に何かあったのだろうか?そしてそのことが、木星人としての恋に新たな変化を起こすような予感がする。

いもうとがかり

奇妙な好意
評価:☆☆☆☆☆
 ミステリーサークルのある地方都市に住む高校生・天乃翔太は、ファンタジーとかオカルトなどは大嫌い。彼が信じるのは統計的確率に基づく科学であり、占い好きのクラスメイト刑部玉穂が占いをしたいと近づいてくれば、蕁麻疹が出来るほど。将来の夢は公務員!
 そんな彼が一大決心をして告白をすることにした相手は、一片愛。彼が試算した成功確率は0.000001%だが、何もしなければ0%だから問題ない。それほど綿密に計画したのに、告白する相手を間違えてしまいました。その相手は愛の妹の一片恋。しかも何故か彼女はOKだという。ただし、自分は木星人だけれど良いか、という付帯条件が付いていたけれど。

 愛からは、妹係2号と認定されてしまい、いまさら間違いでしたとは言えない状況。もし言ってしまえば愛との関係も終わる。仕方なく、自称木星人のお相手を務めることになるのだが、はじめは拒否反応を示していた翔太も、恋の相手をしているうちに段々と慣れて来て、妹の瞳からは死んだ魚の目ではなくなったと言われるほどの変化を見せるようになる。
 しかし、そうやって仲良くなればなるほど、最初のボタンの掛け違いを翔太自身が許せなくなり…。

 木星人を名乗る少女と、鋼鉄の現実主義者と呼ばれる少年の、勘違いから始まるラブコメだ。一風変わった設定ながら、ラブコメらしく起きることは起きるし、むしろ積極的なくらい。
 そもそも恋が人間関係に慣れていなく、一度気を許した人間とは距離感がおかしくなるから、翔太への積極姿勢は理解できなくもないが、そもそも、やはり恋自身が、愛以外の人間と仲良くしたいという思いが強く、それなのにクラスメイト達からは避けられる現状があり、そこに自分から恋に接触して来た翔太は、まるで救い主の様に見えたのだろう。
 それに対して、別人に告白したという事実を引きずり続ける翔太は誠実とは言えるだろう。始めは嫌々ながらも、そもそも恋のスペックは高いので、徐々に彼女自身も気になる存在になっていく。だが、だからこそ、彼自身の性格的にけじめをつけずにはいられなくなるのだ。

 全ての誤解は解け、少しゆがんだ形ではあるが、3人の関係は始まった。これから周囲の人間を巻き込みつつ、どういう風な変化を見せるのかが楽しみだ。

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