津田夕也作品の書評/レビュー

《名称未設定》 Struggle2:彼女の望む世界

命を賭けて手を伸ばす
評価:☆☆☆☆☆
<デイドリーマーズ・ストラグル>という、未来人の課したゲームにプレイヤーとして参加することになった神園裕希は、女装好きの友人の天宮綴やコンピ研部長のセンパイと共に、未来人をこの世界から追い出す努力をすることにした。
 そのための方法は、<エンディングロール>というゲームクリアを目指すことだ。そしてそれを実現するためには、直近で開催されるイベント戦に勝利する必要がある。

 イベント戦とは、学園をバトルフィールドとする、プレイヤーたちのバトルロワイヤルだ。それに勝利したプレイヤーは、敗北したすべての参加者に対し、主人命令(マスター・コマンド)を下すことができる。これは勝者命令(ビクター・コマンド)とは異なり、取り返しのつかない命令も許容されるのだ。
 多くのプレイヤーが学園から姿を消す中、有力なプレイヤーは、女子しか加入を許されないトランプの会と、<最初の八人>のひとりである仲道晃だけとなった。

 シリーズ最終巻らしい。

《名称未設定》 Struggle1:パンドラの箱

神様に娯楽を提供
評価:☆☆☆☆☆
 一人暮らしをする神園裕希の部屋に、ある朝、近未来的なコスプレをした少女が現れる。彼女は<デイドリーマーズ・ストラグル>実行委員会プレイング・チュートリアルNo.42と名乗り、裕希を悠久の未来人が立ち上げた暇つぶしのゲームへ誘う。
 <デイドリーマーズ・ストラグル>は、22世紀の子供のおもちゃである、高電圧を放出して自死する<電光カナブン>を弾丸にした自動追尾銃<虫撃ち>を初期装備として渡され、どんな願いでも叶えるために必要な<投げ銭>と、敗者に対する<勝者命令>の権利を得るために戦うゲームである。武器は極めて殺傷力が高いものが多いが、戦闘中に死んでもゲームが終われば時間は巻き戻るので、死はリセットされる。

 やるともやらないとも決めない間に、友人の女装好きな天宮綴や、コンピ研部長のセンパイが参加を決めてしまったため、一緒に参加することにした裕希だったが、それは、漫研部の苗木咲楽や黒見夕霞、新任教師の上水流雷花、そして最強の一角、櫛蛇姫乃との激しい戦いの始まりだった。

 第14回えんため大賞特別賞受賞作「スラップスティック・デイドリームス」を改題。未来の道具を使って、互いに対する情報が制限された中で殺し合い、自らの目的を達するゲームを描くのだが、主人公がダウナー系なので、スプラッタ感は薄い。
 ヒーロー自身というよりは、ヒーローに見守られる友人のポジションを中心に描いている気がする。作者は海外SFが好きそう。

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