手島史詞作品の書評/レビュー

剣刻の銀乙女 (7)

最後の戦い
評価:☆☆☆☆★
 元門番のヒース・ベルグラーノは、《騎士姫》ルチル・アフナールと魔王エステル・ノルン・シュテルンから、世界の門番となって北の大地に共に来るように誘われる。
 一方、エステルによって国境付近に配置された魔王級皇禍フランメーア・トラバントは、騎士カルロス・ヒネーテの襲撃を受けていた。

 シリーズ最終巻。

剣刻の銀乙女 (6)

千年前の出来事
評価:☆☆☆☆★
 魔王の地位を継いで戻ってきたエステル・ノルン・シュテルンは、シルヴィア・アシャ・ソルインペーロの持ってきた手記と併せて、千年前の出来事を語りだす。それが剣刻の始まり。
 竜の一族のサクヤ・ファフニールは、強者を求めて外の世界へとやってきた。初めて訪れた村で出会ったトーマス・プルガトリオと共に、魔神を倒すために旅をしている聖女イリア・エル・プレギエーラと聖騎士マーリン・ニミュエ・ラゴら十二騎士と出会う。

 千年前の英雄たちが千年後に求めた世界とは?

飛べない蝶と空の鯱 (6) ~蒼の彼方より、最果てへ~ (3)

落下する世界
評価:☆☆☆★★
 落下を開始したティエラの上で、現代最強の霧鍵士であるヒルデガルド・フォン・ヴィンケンと<七つの鍵>の総帥であるシュネーとの最終決戦が始まる。
 一方、ハイリッヒから預かった封書の届け先を失ったウィルとジェシカは、あるソルダートの女性と遭遇していた。

 世界を守るために少女を犠牲にしなければならないのか。選択の時がやってくる。

剣刻の銀乙女 (5)

誘いの隙
評価:☆☆☆☆★
 国王オルグージョ・アフナール・エストレリャ六世が崩御し、《騎士姫》ルチル・アフナールはエストレリャ学園生徒会特務小隊を離れ、王城に入ることになった。エステル・ノルン・シュテルンは魔王を継ぐために既に離れており、プレギエーラ神聖国第八皇女シルヴィア・アシャ・ソルインペーロも国境間際へと旅立った。《円卓の剣刻》を狙う者にとっては、絶好のチャンスだ。
 ヒース・ベルグラーノとエリナリエ・グリートは、マナ・ベルグラーノらのバックアップの下で、《円卓の剣刻》を狙う者を誘い出すために街を出歩くことにする。そこで彼らに接触してきたのは、傭兵の二人組、ベニートとドゥルセだった。

飛べない蝶と空の鯱 (5) ~蒼の彼方より、最果てへ~ (2)

浮遊世界創造の謎
評価:☆☆☆★★
 ティエラ革命軍にイスカを奪われ、レンはイスカを追いかけて行ってしまい、ジェシカ・シルバーベルは重傷を負ったウィリアム・スターリングを命がけで治療していた。
 ティエラ革命軍のもとに軟禁されるイスカとレンは、ティエラの王の役割と、イスカが拉致された理由を知る。それは、浮遊世界創造にも大きく関係していた。

かくて滅びた幻想楽園 II

追うべき王の姿
評価:☆☆☆☆★
 人間が神獣に臣従する世界の中にあって、神獣と心中してでも滅ぼして人間の世界を作ろうとする地下組織<ウーロニクス>の異端な百人隊長である戦部リューは、過去に出会ったクレアーレ=アウルムと再会し、黄金郷を開くことに成功した。その結果、メガロスを倒すことには成功したものの、彼に臣従していた人間からは石もて追われることになり、自らの国盗りの何が間違っていたのか、悩むことになる。
 ひとまず、クレアーレと同じ<旅人>の仲間であった隣国のリヴァイアサンことメアリクス=ウェルテクスを頼りに旅に出た戦部リューだったが、同行する百人隊長の不知火イオリも悩んでいた。リューが向かおうとする先が、未だ彼女には見えていないからだ。そんな状況の中、二人を本部に連れ戻すため、追捕部隊である焔人(オルド)の百人隊長、東風吹ツムギが現れる。

 シリーズ最終巻。

剣刻の銀乙女 (4)

最後の誇り
評価:☆☆☆☆☆
 《騎士姫》ルチル・アフナール率いるエストレリャ学園生徒会特務小隊は、槍使いのヒース・ベルグラーノ、魔王級皇禍で道化師を目指すエステル・ノルン・シュテルン、同じくエリナリエ・グリート、プレギエーラ神聖国第八皇女シルヴィア・アシャ・ソルインペーロという《円卓の剣刻》の持ち主と、ヒースの妹マナ・ベルグラーノという、強力な布陣を備えることとなった。
 エステルの魔力を取り戻すヒントを得るため、叔父の国王オルグージョ・アフナール・エストレリャ六世に拝謁しようと向かったルチルたちだったが、最強の騎士カルロス・ヒネーテにより却下されてしまう。それどころか、ルチルを侮辱されたと感じたヒースは、ヒネーテ卿に槍を向けてしまうのだった。

 とりあえず矛を収めて学園に戻ったルチルに、遠征の命令が下る。だがそこで待ち受けていたのは、皇禍であるフランメーア・トラバントと、それを利用して罠を張る、かつてのルチルの護衛であったヒルベルト・ガルニカの姿だった。

飛べない蝶と空の鯱 ~蒼の彼方より、最果てへ~ (1)

空のない大地
評価:☆☆☆★★
 ヒルデガルド・フォン・ヴィンケンが姿を消した。執事のフォルネウス・ファン・マルドゥークから依頼を受け、彼女を追いかけて北の大地ティエラを目指した武装郵便屋「蝶と鯱」を営む渡り鳥のウィリアム・スターリングとジェシカ・シルバーベル、レンだったが、ティエラの空には霧がなく、霧鍵式や霧鍵機関が使えなかった。
 ヒルダの手がかりを求めてシュタット・ノインの街を歩き回っていたウィルとジェシカは、治安維持の機械兵ソルダートに殺されそうになっていた少女イスカを助ける。

 ヒルダを追いかけることで、ウィルとジェシカは、<七つの鍵>の陰謀により深く関わっていく事になるのだった。

剣刻の銀乙女 (3)

妹弟子の登場
評価:☆☆☆☆★
 《騎士姫》ルチル・アフナール率いるエストレリャ学園生徒会特務小隊は、プレギエーラ神聖国との国境付近に現れた刻魔を倒すため出動することになった。
 《円卓の剣刻》を手にした槍使いのヒース・ベルグラーノと妹のマナ・ベルグラーノ、魔王級皇禍で道化師を目指すエステル・ノルン・シュテルンとエリナリエ・グリートと共に向かった先で、従刻魔に襲われていたプレギエーラ神聖国視察官シルヴィア・アシャ・ソルインペーロを助ける。

 散々な騒動の末に部隊をまとめ、刻魔を倒すための体制を整えたヒースたちだったが、不安材料はいくつもあった。エリオット・グリードに奪われた魔力がエステルに未だ戻っていないこと。シルヴィアがクラウンに付け狙われていること。シルヴィアがエステルに干渉する謎の力を持っていること。
 そしていよいよ刻魔に対応しようとして時、クラウンから絶望的な真実が告げられる。それを乗り越えてエステルたちは笑顔をもたらすことが出来るのか?

かくて滅びた幻想楽園

ディストピアの希望
評価:☆☆☆☆★
 創造主ミトラースの下、神獣たちが規則を作り、人間はそれに盲目的に従うのが世界の姿だ。そんな世界の在り方に疑問を抱き、叛旗を翻すのが幻装使いの作る組織<ウーロニクス>だ。
 その<ウーロニクス>の中でも、幻装使いではなく百人隊長となった戦部リューは、幼い頃に見た黄金郷と赤い魔女を求め、幼なじみの不知火イオリとコンビを組み、盗賊を名乗って黄金郷の手がかりを探し求めている。

 黄金郷の手がかりがあるという商人の街メルカートルの砦へ赴き、守護する神兵を倒して侵入した先で、牢獄に幽閉されている少女クレアーレ=アウルムと出会う。彼女に赤い魔女の面影を見たリューは、クレアーレを盗んで脱出する。
 しかしその逃走中、異変を察知してメルカートルにやってきた神獣メガロスと遭遇したことで、メガロスとの全面戦争に突入していく。

剣刻の銀乙女 (2)

心の傷
評価:☆☆☆☆★
 ただの門番だったヒース・ベルグラーノは、魔神の眷属である罪禍の上位存在の魔王級皇禍で道化師を目指すエステル・ノルン・シュテルンと出会い、《騎士姫》ルチル・アフナールによって、妹のマナ・ベルグラーノと共に、エストレリャ学園に編入することになった。
 十二集めれば《賢者の刻印》となりあらゆる願いが叶うという《円卓の剣刻》のひとつを宿すことになったヒースは、《円卓の剣刻》にまつわる混乱を巻き起こしたクラウンに操られた兄弟子のギャレット・ドゥラス・ペナスを倒し、犯されかけていたルチルを救い出したものの、その心の傷は未だ二人を密かに苛んでいた。

 しかし、《円卓の剣刻》の混乱は未だ収まっていない。ひとまず学園に匿われることになったエステルだが、彼女を一人で街に出すわけにはいかず、生徒会直属で護衛小隊を組織することになった。副会長のカタリーナの反対を押し切り、ヒースら既知のメンバーと、エリオット・グリードという新たな仲間を加えることになる。

飛べない蝶と空の鯱 たゆたう島の郵便箱 (3)

過去と現在を結ぶ人々
評価:☆☆☆☆★
 武装郵便屋「蝶と鯱」を営むウィリアム・スターリングとジェシカ・シルバーベルの許にやって来た新たな依頼は、かつて二人が共に出会ったことがある元渡り鳥ビルギッド・ギリアンに封書を届けるというものだった。
 一方、レンは、その依頼主ヘイムアルが事務所に置いていった封書をウィルたちに無断で持ち出し、ヒルデガルド・フォン・ヴィンケンと執事のフォルネウス・ファン・マルドゥークと共に読んでしまう。それは、かつてウィルとジェシカ、ビルギッドが出会った時の記憶だった。

 過去の出来事を背景として語りつつ、現在の状況が生まれた理由を解説する構成となっている。

剣刻の銀乙女

魔王と勇者が呉越同舟
評価:☆☆☆☆★
 千年前、一人の賢者と十二人の騎士が《円卓の剣刻》を用いて魔神を封印し、世界に平和が訪れた。しかし今になって、その《円卓の剣刻》がよみがえる。それを成したのは王に仕えた新たなクラウンだ。そのクラウンは《円卓の剣刻》を十二集めれば《賢者の刻印》となりあらゆる願いが叶う。そしてその《剣刻》は、持ち主を殺せば誰でも奪うことが出来ると告げ消えてしまう。
 結果、騎士団長のひとりが殺害されて《剣刻》の一つは王に移り、《剣刻》を狙って腕に覚えのある者は持ち主を襲い始めることになった。

 そんな時期の晩に、ガト・プルガトリオの弟子で騎士の一人であるギャレット・ドゥラス・ペナスの同門である門番のヒース・ベルグラーノは、竜に咥えられた少女エステル・ノルン・シュテルンを助けようと思い、彼女の沐浴シーンを目撃してしまう。
 エステルから厳重に口止めをされ解放されたヒースは、翌日の仕事中に騒動に巻き込まれ、《剣刻》を手に宿すことになってしまった。そしてそれを成したクラウンは、彼が持ち主であると腕自慢の者たちに伝えた結果、彼は命を狙われることになってしまう。

 事態打開を図るため、合流したエステルと共に、《騎士姫》ルチル・アフナールに接触を図ろうとするのだが、魔神の眷属である罪禍の上位存在の魔王級皇禍が侵入したという報に警戒を強めるルチルたちとは敵対することになってしまう。さらには、《占刻使い(オーメントーカー)》を目指す妹のマナ・ベルグラーノまで事態に巻き込まれ、弱小槍使いのヒースは、覚悟を求められることになるのだった。

 一言で言えば、魔王と勇者が呉越同舟的なファンタジーだ。ちょっとそこにエロ要素が加わっている感じ。

飛べない蝶と空の鯱 たゆたう島の郵便箱 (2)

空を飛べば厄介に当たる
評価:☆☆☆☆★
 《渡り鳥》と呼称される武装郵便屋「蝶と鯱」を営むウィリアム・スターリングとジェシカ・シルバーベルは、霧妖ひしめく蒼界を翼舟で飛び回り《封書》を届けるのが仕事だ。彼らの夢は、蒼界の向こうに広がる前人未到の雲界の先にあるものをみること。それは普通の人間からは笑わればかにされるたぐいの夢だった。
 見果てぬ夢を目指しつつ、零細事務所を運営しているウィルのもとに、《渡り鳥協会》から召喚状が届く。それは、彼らがバディを組んで飛んでおらず、協会のルールに反しているためだった。もし審問会で不適格と判断されれば、彼らは翼舟を手放さねばならない。

 進退きわまったウィルは、《夜姫》と呼ばれる霧鍵士ヒルデガルド・フォン・ヴィンケンにバディ就任を依頼するものの、あとからそれを知ったジェシカに盛大にへそを曲げられてしまう。そんな中、フェイ・リェイチュアンという依頼人が現れ、レンカ・クヨーという人物に《封書》を届けてほしいという。だがその宛先にいたのは、トランクの中に押し込められていた裸の少女レンだった。

 知り合いのケイト・ブリュンヒルデが査察官となり、ウィルたちの配達に密着することになる中、ウィルとジェシカは《エインヘリヤル》に引き続き、「七つの鍵」のひとつである《レーヴァンティン》と、オリジナル《フェンリル》の事件に巻き込まれることになるのだった。


 出歩けば事件に遭遇する名探偵のごとく、再び「七つの鍵」関連の依頼が「蝶と鯱」に持ち込まれる。もちろんそれは偶然ではないことは、本作の終盤で明らかにされるわけだが、依頼を受けた時のウィルはそんなことを考える余裕もなかった。下手すれば空を飛ぶという手段を奪われかねない状況で、なりふり構わず人に助けを求める訳だが、なぜか肝心の仲間であるジェシカには助けを求めない。
 微妙な空気の中向かった仕事先では女の子を拾うことになり、記憶がないという彼女の身元調べまですることになるわけだ。余計なものをしょい込んだと思われがちなのだが、持ち込まれる厄介事は一つにつながっていて、かつ、それが自体を上手い方に向かわせたのは結果論と言うべきか否か。

飛べない蝶と空の鯱 たゆたう島の郵便箱

空の底に秘密がある
評価:☆☆☆★★
 蒼海と雲海の境目に浮かぶ島で人々は暮らしている。雲海には霧妖と呼ばれる怪物が暮らしているため、その下に何があるのかを知る人間はいない。ウィリアム・スターリングは幼い頃、翠色の髪をした少女と出会い、いつか武装郵便屋《渡り鳥》となって、雲海の底を見るという約束をした。そしてその直後、その少女の乗った大型飛行船は、雲海の底に墜落してしまう。
 それから何年かが経ち、武装郵便屋「蝶と鯱」を開業したウィルは、一度墜落してから一人では飛べなくなった少女ジェシカ・シルバーベルを後席に乗せ、翼舟で《封書》を届ける仕事を始めていた。《封書》とは人々の想いを封印した手紙であり、それを届ける《渡り鳥》のみが、島から島へと飛ぶことが出来る。そう、いまでもウィルは、翠髪の少女との約束を忘れてはいないのだ。

 そんなある日、霧鍵士《夜姫》ヒルデガルド・フォン・ヴィンケンから、《封書》をランディス・ベルナールに届けてほしいという依頼を受ける。彼女絡みの依頼はもれなくトラブルがついて回るので避けたいのだが、経営的に依頼を断ることが出来ない。
 そして悪い予感は当たり、依頼を受けた直後から謎の集団に襲撃されるようになり、警官を名乗るジャン・ポールマンにも付きまとわれることになってしまう。

 手紙を届ける職業の部分は「テガミバチ」に、島の外に世界の秘密があるところは「氷結鏡界のエデン」に似ている。興味としては、ジェシカがいつデレるかということと、ウィルが欲望に負けていつ手を出すかということくらいか。

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