手代木正太郎作品の書評/レビュー

魔法医師の診療記録

信仰と科学
評価:☆☆☆☆★
 魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)のクリミア・ポーヴァルレと看護師(アンフィルミエ)であるヴィクター・フランクは、ヴィクターの病を治す力を持つ霊石(ガマエ)を探しつつ、目に見えないドゥンと呼ばれる存在に起因する妖病(ダミナス・ミナトゥム)に苦しむ人々を救うため、旅をしていた。
 しかし魔法医師は、世界の主流である教会の考え方から言えば異端であり、迫害される立場でもある。そんな中、教会の改革派の旗印であるサミュエル・アスカリドが吸血鬼に噛まれたので治療して欲しいという依頼が届けられる。

 サミュエルを目障りに思うキュルヴァル教区長、異端審問のために中央から派遣される鉄槌(マルテル)の摩訶不思議な特殊技能と、フレデリーク・ナイチンゲールを開祖とする看護流柔術(アンフィバーリツ)との対決などが見どころ。

楽園追放 mission.0

有限のメモリの奪い合い
評価:☆☆☆☆★
 中央保安局システム保安要員4等官となったアンジェラ・バルザックは、地上上がりの中央保安局システム保安要員3等官であるメット・マルティネスの部下として配属する。
 彼女たちが対処することになったのは、電脳世界・ディーヴァで住民のメモリを奪い増殖する悪性プログラムの事件だった。この操作を進めることで明らかになる人口抑制のための秘密組織トイフェルの正体とは?

王子降臨 (2) 王子再臨

美の侵略者
評価:☆☆☆☆★
 戦国時代にあって堅固な守りのために他国から攻められない水分国を治める鷹久に仕える阿東念流宗家の阿東弥五郎は、美の化身であるアンドロメダ流の使い手の王子と遭遇する。
 姫を探しているという王子は、鷹久を美で籠絡し、姫を探すために国力の動員を願う。一方、それを利用して自らの地位を高めようとする筆頭家老の黒瓜修理によって城を追い出された阿東弥五郎を拾ったのは、聖女ランガナーヤキ・スバーリとその弟子である禅鬼と天禅だった。ランガは弥五郎に王子を倒すだけの器があると告げる。

 魔女によって分かたれた悪い王子の登場!王子は美で人々を浸食し、彼らを狂気に駆り立てる。一体なぜ、王子は悪い王子になってしまったのか。そしてその結末は?

王子降臨

美を力に変える剣術
評価:☆☆☆☆☆
 時は戦国。荒廃した山村に近い草原に、一人の王子が舞い降りた。それを見つけた孤児の鳶丸は、破戒僧・寂邨がすむ寺へと王子を連れて行く。金髪碧眼の、見る者を全て恋に落とさずにはいられない輝きを備えた王子に、鳶丸は性別を超えた感情を抱いてしまう。

 アンドロメダ流剣術で悪漢を瞬殺しながらも争いを好まず、光の国からやって来たという王子の捜し物は、魔女によって国を追われた姫の身柄だ。しかし、通りがかりの山村を救うために尽力し、暈魔蛾彩率いる少女だらけの盗賊団を説得し、本来の目的達成は遅々として進まない。
 そんなとき、姫が、この国に圧政を敷く真壁弾正のもとにいるという情報が入ってくる。だが、弾正のもとには、綺羅星一羽という怪しい剣の使い手や二体の鬼がいるという。果たして王子は姫を取り戻すことが出来るのか?

 織田信長がいる戦国時代に舞い降りた王子の正道と、王子に魅せられた少年の生き様を描く時代活劇。みんな王子の魅力にやられて、戦わずして勝っちゃう。それなのになぜか死人の多いのが不思議。
 第7回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品だ。

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