鳥羽徹作品の書評/レビュー

ボーイ・ミーツ・ハート! (2) −彼女のハートは純情可憐!?−

気になる心音
評価:☆☆☆☆★
 住民の多くがPSYと呼ばれる超能力を持っている砂拠市の一光高校には、PSYくるという、PSYによる違反を取り締まる風紀委員会がある。その方法は簡単、PSYゲームという、超能力を使った勝負で勝って言うことを聞かせるのだ。
 委員長の群青とばりと転校生の日祀狭霧はPSY能力の双璧。委員長の従弟にして狭霧の幼なじみである天地征司は、PSY能力は音を集めて録めて発するという勝負には向かない能力だが、その機転と発想力で、今のところ負けなし。

 そんな彼は、能力の性質上、人間の心臓の音が大好きな変態さん。気になるハートがあれば、その理由を確かめずにはいられない。クラスメイトの葛篭澄香からのあからさまなアプローチには気づかなくても、狭霧からの焼きもちには気づかなくても、気になる心音があればすっ飛んで行く。
 今回は、とばりから依頼された非正規なPSYゲームの調査中に出会った、白宮織鶴と白宮舞姫の姉妹の心音に釘付けとなる。彼女の奏でる心音に隠された、真摯な思いとは一体何なのか?

 PSYゲームの内容としては地味だけれど、そこで繰り広げられる駆け引きがメインとなる物語。散々引っ張ったあげく、ついに明かされる目的を知れば、ちょっと脱力してしまうかもしれない。しかし、冒頭の話をコメディネタに使いつつ、本筋の解決につなげる構成は面白い。
 ちょっと力の抜けた、異能バトルコメディだ。


ボーイ・ミーツ・ハート!−彼女のフラグは難攻不落!?−

掛け合い漫才がメイン
評価:☆☆☆☆★
 住民の多くがPSYと呼ばれる超能力を持っている砂拠市の一光高校に、天地征司は通っている。彼の持つPSYは、音を集め、記録し、発信するという些細な能力。それにも拘らず、コントロールがとても難しく、幼少時は日常生活が困難なほど音を拾ってしまい、病院にも通っていた。
 その頃の彼を救ってくれたのは、同じ年の少女・日祀狭霧。彼女は彼に前向きさを教え、PSYの強さだけが全てを決めるわけではないと諭してくれた。それを決めるのは、自分の心なのだ、と。そんな狭霧は高校生となって、征司の前に現れる。しかし彼女は、かつてとは全く違う考え方の人になっていた。

 PSYゲームという、超能力を利用してあらゆるゲームをし、その勝敗により紛争を解決するという仕組みが一般化している街で繰り広げられるバトルを描く、わけではなく、そういう要素を加味しつつ、キャラクター同士の掛け合いが繰り広げられるコメディと見た方が良いかもしれない。ラブコメ要素を込めたのかもしれないが、あまりラブは感じない。個人的には。
 この手のコメディは男の子が突っ込み役で女の子がボケ役ということが多い気がする。この作品も例外ではなく、日祀狭霧は言葉攻め系のボケ、クラスメイトの葛篭澄香はラブコメ自爆系ボケ、従姉の群青とばりは怒涛のセリフボケと、各種ボケが揃っている。

 設定上、徹底的にPSYゲームを推して頭脳系の作品にするか、ラブコメディを前面に押し出していくかのどちらかに寄せた方が、おそらくは面白くなる気がする。そしてここまでの印象でいえば、前者の方が特徴が出せるかもしれない。あとはアイデアをひねり出せるかの問題かと。

オルキヌス 稲朽深弦の調停生活 (4)

目指すべき最高の調停員とは?
評価:☆☆☆☆★
 いよいよ調停員としての立場に進退窮まってきた稲朽深弦の前に、当事者である秋永壱里調停員が現れた。ところがその彼女はなぜか街には行きたがらず、そして行う調停は当事者の事情を無視したメチャクチャなものばかり。深弦はその行動に不審を抱く。
 ついに最終巻。3巻で深弦が確立した調停員としての方法論に対して、壱里調停員の方法論は目的よりも手段を優先しがちなものであったことが明らかになる。最高の調停員という評価が確定している壱里調停員の調停結果に対して、深弦が取る行動とは?
 また深弦とセシルの日常に関する短編2本も収録されている。

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オルキヌス 稲朽深弦の調停生活 (3)

オルクの作った街の光と影
評価:☆☆☆☆★
 秋永壱里調停員の不在が協会内で噂にのぼりはじめ、稲朽深弦の調停員としての立場もいよいよ危うくなってきた。当然、深弦は自分の調停員としてのポジションを確立するため、調停実績を積もうと奔走するのだが、その様子を見るセシルは、彼女の姿勢に危うさを感じる。オルクたちのために尽くすことではなく、実績を積むことが優先されてしまっているのではないかと。
 セシルの意見に感情的には反発しながらも、彼女の正しさを本質では理解してしまっている深弦は、自己嫌悪と迷いに陥るばかり。そんな状態の深弦の前に謎の少年が現れ、彼女に一つの問題を出していく。果たして深弦は正しい答えにたどり着くことが出来るのか?

 目の前のことだけに囚われすぎると、本来ならば目的を達成するための手段に過ぎないことが、まるで目的のように勘違いしてしまうこともしばしばある。それを見切って、本末転倒にならないように出来るか。口で言うのは簡単だが、なかなか難しいことだと思う。

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オルキヌス 稲朽深弦の調停生活 (2)

ロケットパンチでみんな解決
評価:☆☆☆☆★
 同じ新人調停員のセシル・ファルコナーと一緒に、オルキヌスの火山にあるドワーフの工房を見学に訪れた稲朽深弦は、またしてもイメージとのギャップに衝撃を受ける。この工房のドワーフからの依頼でサラマンダーの様子を見に行った二人は、マンドレイクが抱えるストレスを解消するため、森で起き始めている対立の解消に乗り出す。
 今回は少し大規模な調停をすることになった深弦。数少ない武器を使って、どうやって森の対立を解消するのか。周囲を利用し流れに任せた交渉が行われます。解決のポイントはロケットパンチ!

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オルキヌス 稲朽深弦の調停生活

はじめての調停
評価:☆☆☆☆★
 海の真ん中に突如現れた島オルキヌスには、神話や物語の中で語られる幻獣たち、オルクが棲んでいる。オルクからの提案で、人類はオルキヌスに調停員を駐留させ、オルクたち種族間の争いなどを仲裁して彼らと付き合っている。
 稲朽深弦は新人調停員だが、彼女を指導するはずの調停員、秋永壱里が失踪してしまったため、オルキヌスに置ける自分の地位を確立するため、壱里調停員のパートナーのオルク・オリーブの指導の下、オルクたちの調停を始めることにする。

 人類を超える力を持つけれど、生きるために必要とするものがない彼らは、基本的に自分たちの趣味に生きている。そんな自由気ままな存在同士を仲立ちしなければならないので、その仕事には適正が必要になる。深弦のそれは、おおよそ突っ込み能力だ。このため、彼女の調停は、オルクのボケに対するツッコミという形になりやすい。
 成り立ちも不明な島に住む高等遊民的生物たちと人間との交流を描くコメディです。

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