豊田巧作品の書評/レビュー

僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない (2)

身近な場所にも意外な駅が
評価:☆☆☆★★
 横浜志貴高校2年の栗原俊は、駅弁をめぐる旅の途中で同級生にして鉄子の北見美優と宮田くれあに偶然出会い、二人と行動を共にした先で出会った白糠由佳も横浜志貴高校に転校してきたため、友人で体育会系の高千穂大輔と共につるむようになった。次の旅先は、栗原俊がテレビで見た、海の見える神奈川県内の駅だ。
 宮田くれあに別荘を提供してもらい、泊りがけで目的地周辺の鉄道に乗りまくることにした5人だったが、その目的地として北見美優が連れて行ったのは、鶴見線のあの駅だった。

 今回は京浜東北線、鶴見線、江ノ島電鉄と、神奈川県内に集中した、高校生的な旅先の設定。個人的には比較的身近な路線なので、うんうん、という感じだった。
 ゆえに、どちらかというと、自分が行ったこともない路線を旅先に選んでもらった方が、個人的にはうれしい。ただ、高校生という制約が意外に厳しいのかもね。

僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない

かなり強引な鉄道との出会い
評価:☆☆☆☆★
 旅先で美味しいものを食べるのが趣味の高校生・栗原俊が今回の旅先に選んだのは、横川〜軽井沢〜長野周辺だ。東京駅から長野新幹線で軽井沢へと向かう駿だったが、東海道新幹線と長野新幹線のホームを間違うほど、鉄道には一切興味がない。
 しかし、食堂だと思って入った旧軽井沢駅舎記念館で、鉄子の北見美優と宮田くれあに出会い、鉄だと誤解されたことで、彼女たちに引っ張られるまま、鉄道の史跡を巡る旅に出ることになってしまう。

 全く興味がないのに、線路に関するうんちくや、列車に関するうんちく、鉄道の歴史などを怒涛の様に聞かされ、駿の意向を確認することもなく振り回す美優に戸惑いと憤りを感じることもしばしばだったが、それが続くにつれて楽しさを感じるようになってしまう。
 何も考えず本能だけで生きている様でありながら気づかいも出来る美優と、終始控えめながら時刻表をめくる指は神のような正確さを持つくれあに付き合い、そして、旅先で出会った白糠由佳の初恋にまつわる時刻表トリックの様な離れ業を体験することで、駿の価値観も少しだけ変わっていく。

 イラストは「ゆりてつ」の作者。鉄道に関するうんちくがあらゆる角度から飛び出すので、知っている人はニヤリと出来るし、知らない人は勉強になると思う。
 一方で、ストーリーは鉄道を中心に展開されるので、鉄道に全く興味がない人は、物語的に楽しめないかもしれない。

ホーム
inserted by FC2 system