中村恵里加作品の書評/レビュー

ひがえりグラディエーター

萌えたり血まみれになったり
評価:☆☆☆☆☆
 高校生の天海蔵人には妹・彩依がいる。ただし、6年前に失踪してしまい、それ以来は会っていない。失踪宣告が出されるまであと一年だ。
 その彩依の誕生日前日。妹の友達の小藤倫子と会い、妹へのプレゼントの相談をした帰り道、蔵人は奇妙な少女アールと出会う。その少女に虫を体内に入れられ、連れて行かれた先は異世界だった。

 アールの説明によると、彼女たちの世界では、蔵人たちの世界から一般人を連れてきて、剣闘士もどきのことをさせることが流行しているらしい。
 セクトという、蔵人の中に入れた虫の機能により、切ったり砕かれたりしてもきちんと直る。ルールもしっかりしているので死んだりすることはない。ただ、戦うことを拒否することはできない。ただの一般人が、ある日、ナイフや銃を持たされ、対戦相手を切ったり撃ったりしなければならないのだ。

 一日3時間、異世界に連れて行かれて戦闘訓練をする蔵人は、彼自身の不思議なパーソナリティの影響もあるのか、状況に馴染んでいる様であり、馴染み切らない部分もある。そんな彼の前に現れた、同じ立場の人間は意外な人物だった。そしてその人物から、妹に関する情報を聞くことになる。

 現代と異世界を行ったり来たりしつつ、常識外の状況になじんだり拒否したり、萌えたり血まみれになったりする物語だ。

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ぐらシャチ

警戒しながら読まないと辛い
評価:☆☆☆★★
 高校入学前の春休み。秋津島榛奈は近くの浜辺にオカリナの練習をしに行き、ウクレレを持った少年、黒田剛典に出会う。さわやかな外見ながら、それに似合わないマイナーな楽器を持った彼に共感を抱いた彼女は、同じ高校に進学すると知り、高校での再会を楽しみにしていた。
 それから2週間ほどたったある日、オカリナの練習に来た榛奈は、高波にのまれてしまう。あわやの所で彼女を助けたのは、額に青い宝石をつけた、英語をしゃべるシャチだった。次の日は日本語をしゃべるようになっていたシャチに請われて、グラボラスという名前をつけた榛奈だったが、それが混乱と恐怖の始まりだった。

 さわやかにはじまりながら、バッサリと切る様に落とす展開。共通体験をほとんど持たない生物同士のコンタクトであるから、猜疑と不信は当然の様にあるはずなんだけれど、主人公である榛奈が警戒心の低い人格なので、それに合わせて読んでいると、かなりクるものがある。
 途中までじっくりと話を積み上げておいて、最後はパタパタと折りたたんでしまった感があるので、終わり方はさわやかに見えるんだけれど、取りこぼしてそのままの問題は結構大きいんじゃないかと思う。

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