無嶋樹了作品の書評/レビュー

神話戦域のグラフィクス III 百番目の終焉者

神話の再演の裏側
評価:☆☆☆★★
 ルディフォウン学園で開催されていた【神話の再演】が突如、中止となる。神格序列第百位のライナー・ライアーズは、これまでの昼行燈の仮面を外し、神格序列上位の生徒を襲って、【神話の再演】を独自に続けようとする。
 レイジ・アドヴェントの神遺物<レガシィ>となったカナンの秘密が明らかになり、新たな戦いの幕が開く。シリーズ完結編。

神話戦域のグラフィクス II 十三番目の銀妖精

意思を持って神話を再演する
評価:☆☆☆☆★
 三大国家であるトゥルーズ王国、カディグナーグ皇国、サウガウド連合に中立な神殿都市にあるルディフォウン学園では、神遺物<レガシィ>を使い神の奇跡を再現する神遺使い<レガリア>同士が戦い、【全一の極】という頂点を決める【神話の再演】が開催されている。神格序列第九十九位ながら、意思を持つ神遺物<レガシィ>であるカナンを手に入れたレイジ・アドヴェントは、【灼熱姫】と称されるフレア・トゥルーズとのオープニングイベントをこなし、一気に注目の的となっていた。
 そんな彼との【神話の再演】を望み、連合軍事機構軍属の第十三位レネ・クリスタニアが、レイジとカナンの家にやってきて、住みついてしまう。無表情な彼女の表情の中に感情を見いだせるくらいに慣れたころ、国元で調整を受けていた第二十七位ミオ・クリスタニアが帰還する。彼女に下された任務は、カナンの奪取だった。

 第百位ライナー・ライアーズが妖しさ満点の行動で、第二位バレッタ・ソリッドステイトや第一位ディオ・カディグナーグとの絡みを見せる。そして本流の方は、命令に従うのみで自分の意志を持つことがなかったレネが、レイジやカナンと関わる過程で意思を示すようになり、レイジとの親密度を上げていく。
 いくつかの流れがあるが、構成が整理されているので読みやすい。ファンタジーパートとラブコメパートの分業ができるようになってきたので、あとはそれぞれのクオリティを上げていくだけだろう。レネの語尾はひどすぎるし。

神話戦域のグラフィクス 九十九番目の破壊者

空から少女が降って来た
評価:☆☆☆☆★
 神遺物<レガシィ>を使い神の奇跡を再現する神遺使い<レガリア>を養成するルディフォウン学園に通うレイジ・アドヴェントは、複数の男たちに襲われていた少女カナンを助ける。記憶がないという彼女を自宅に住まわせることにしたレイジは、【神話の再演】というイベントに参加する百人の神遺使い<レガリア>の第九十九位、そして【破壊者】と呼ばれる、唯一、神遺物<レガシィ>を発動できない神遺使い<レガリア>だった。
 そんなレイジが、なぜか【神話の再演】のオープニングイベントの対戦者に選ばれ、【灼熱姫】フレア・トゥルーズと戦うことになる。しかし、トゥルーズ王国の貴族であるジルオールは平民のレイジが栄えあるイベントのトップを飾ることを許せず、闇討ちを仕掛けるのだが…。

 落ちこぼれだと思われていた人物が実は強くて大逆転!という感じのラブコメ風ファンタジーだ。どうも登場人物たちのそれぞれが、どこかで見たようなキャラクターの焼き直しにしか思えず、かつ、ファンタジー部分をメインにしたいと思いつつ、ラブコメも必要だよねという感じで構成しているので、妙にギクシャクした印象を受ける。
 いきなりたくさんのキャラクターを出した割には、それぞれが生きてくる展開とはなっていないので、ちょっと焦りすぎなのかも。初めは少数の人物を魅力的に動かせる展開にしつつ、徐々に深みを増していく方が無難ではなかろうか。

ハガネノツルギ (3) Close Encounter with the ALL ENEMY

あなたのとなりにいるために
評価:☆☆☆★★
 夏休みも後半戦。毎日、九季塚鋼音に会えるだけで満足の矢上玖朗には、二人でどこかに遊びに行くなどという思考は思い浮かびもしない。しかしそれだけではつまらないと考える花月鏡火や奏月真撫などの盛り上げ担当要員は、みんなで海に行くことを提案する。それが実現すれば、彼らにとっても良い思い出になるはずだった。そう、実現すれば…。

 同じ頃、異世界の勇者だった草那岐略無は、初めての敗北に直面していた。圧倒的な実力差による敗北は、彼の依って立つものを全てぶち壊し、二度と立ち直れないほどの精神状態に叩き込んでしまう。その敵の名は、エデン。
 そして、ゼノジオを伴って玖朗たちの前に現れたエデンは、彼らを一蹴し、鋼音を連れ去ってしまう。守りたい人を守れず、自分を守るためにその人が敵に連れ去られるという屈辱を、玖朗は受ける。

 二人の戦う少年たちは再び立ち上がり、本当に自分にとって大切なものを取り戻すことができるのか?奇跡の存在を巡る最後の戦いが始まる。

 …しかし、バトルシーンがダラダラ長いのが何ともなあ。これでシリーズ完結の模様。

   bk1
   
   amazon
   

ハガネノツルギ (2) Close Encounter with the Dragon Killer

空から落ちて来る少女
評価:☆☆☆☆★
 世界の全てを知ることができる力を間違って入力され、オーバーフローして死にかけた矢上玖郎は、同じ高校の先輩、九季塚鋼音により命を助けられる。その副作用として、鋼音の持っていた力を受け継いだ玖郎は、彼女に恩を返すために、彼女の目的達成を手伝うことになる。
 そんな事件から一ヵ月後、鋼音と分かれて帰宅する玖郎の前に、突然、ミスリル・エヴィジョンという少女が落ちて来て、彼の名前をつぶやいて気を失ってしまう。そんな彼女を連れて自宅へ帰るのだが、そこを、彼女を取り戻すために魔術結社が襲ってくる。
 ミスリルの正体とは何なのか?そして、玖郎は彼女を救うことができるのか?

   bk1
   
   amazon
   

ハガネノツルギ Close Encounter with the Ragnarek

普通の少年と異世界少女の出会い
評価:☆☆☆★★
 10年前に両親を事故で失ってから何事にもやる気がなくなってしまった少年の矢上玖朗が、異世界の血統を継ぎ世界を救う使命を持つ少女の九季塚鋼音に命を救われ、彼女が身を置くバトル世界に巻き込まれていくというストーリー。
 どこにでもいるような普通の人間が運命に導かれて非日常の世界に入り込み、強大な敵と出会い敗れ、幼なじみの励ましを受けて再起し、ヒロインを守るため覚悟を決めて再び戦いに挑むという形式は、王道中の王道として人気を集めてもおかしくはないはずだ。

 でも、個人的にどこか物語に入り込めない気がした。
 文章展開がぎこちなく感じるから?など色々と理由を考えたのだが、自分として一番すっきりしたのは、世界観が統一されていないと感じたからではないかと思う。
 登場人物たちが持つ武器や技などには名前がルビで振られている。それが、英語だったりルーマニア語だったり、古代バビロニア神話由来だったり北欧神話由来だったり、何がベースにあるのか理解できなかったのだ。

 好意的な解釈としては、色々な世界観に基づく異世界の勢力同士がぶつかり合っているから、と見ることもできるかも知れないが、明確にそう解釈できる構造は示されていないように思えたし、ギリギリそうかなあと思えないこともないが、彼らの振るう力の起源は一つらしいことを思えばやはり違う気がする。

 次の展開があることが仄めかされて終わっているので、そちらで色々スッキリと解決が示されることを期待したいと思う。

   bk1
   
   amazon
   
ホーム
inserted by FC2 system