仲町六絵作品の書評/レビュー

おとなりの晴明さん 第四集 〜陰陽師は月の女神と出逢う〜

評価:☆☆☆☆★

京都西陣なごみ植物店 (3)「明智光秀が潜んだ竹藪」の謎

評価:☆☆☆☆★

おとなりの晴明さん 第三集 〜陰陽師は夏の星を祝う〜

評価:☆☆☆☆★

おとなりの晴明さん 第二集 〜陰陽師は左京区にいる〜

評価:☆☆☆☆★

京都西陣なごみ植物店 (2)

評価:☆☆☆☆★

アンティーク弁天堂の内緒話

評価:☆☆☆☆★


おとなりの晴明さん 〜陰陽師は左京区にいる〜

評価:☆☆☆☆★


奈良町ひとり陰陽師

評価:☆☆☆☆★


京都西陣なごみ植物店

評価:☆☆☆☆★


あやかしとおばんざい (2) ~ふたごの京都妖怪ごはん日記~

評価:☆☆☆☆★


あやかしとおばんざい ~ふたごの京都妖怪ごはん日記~

評価:☆☆☆☆★


からくさ図書館来客簿 第六集 ~冥官・小野篁と雪解けの歌~

評価:☆☆☆☆★


からくさ図書館来客簿 第五集 ~冥官・小野篁と剣鳴る秋~

評価:☆☆☆☆★


からくさ図書館来客簿 第四集 ~冥官・小野篁と夏のからくり~

千四百年の悔恨
評価:☆☆☆☆★
 冥官第三位の安倍晴明から呼び出しを受けた小野篁は、川床で日本酒を嗜みながら、不穏な空気から京の夏の祭礼を守れ、という命を下される。また、時子に対しては、先輩冥官の茜、太田道灌の下へ研修に行かせるように指示されるのだった。

「からくり山鉾」
仏像の補修会社に勤める女性とある遊女、山鉾のからくりの復活が扱われる。また、茜の本名が仄めかされる。

「猫と睡蓮」
急死した若き古書店主と飼い猫の話。

「湖北に眠る」
太田道灌の所へ研修に行った時子出会う旅行代理店の若者と、茜の本名が明かされる話。

南都あやかし帖 〜君よ知るや、ファールスの地〜

楠葉西忍の日常
評価:☆☆☆☆☆
 足利四代将軍義持の勘気を受けて追放され行方不明となった天竺ヒジリの一子、天竺ムスルは、その資産を持って興福寺大乗院の院主である経覚に保護を求め、金貸しをして生計を立てていた。
 そんな彼のもとに送られてきたのは、竜田の地を支配する立野戌亥の妾腹の子である葉月だ。彼女は借金の担保として、仕え女として送られてきたのだ。

 そんな彼女が街できく主の評判は、謀反人の子、妖術使いなど、あまりよくないことばかり。しかし、ファールス(ペルシア)の血を引き、ギリーク(ギリシャ)の妖術を使い、タラッサという人語を介するオウムと暮らす彼に、彼女は興味を持って行く。そしてこの家に持ち込まれる様々な不思議に関わっていくことになるのだった。

からくさ図書館来客簿 第三集 〜冥官・小野篁と短夜の昔語り〜

時を超える何か
評価:☆☆☆☆☆
 安倍晴明から道なしを強制的に送る安祥儀を持つ資格を得た時子だが、小野篁には持たずに冥官をやりたいという。これを主旋律として、3つのエピソードが絡む。

「馬琴の謎かけ」
 時代小説作家志望の青年と曲亭馬琴。

「金魚と琥珀」
 金魚屋の元店主と和菓子職人の青年。

「わたの原」
 小野篁が生前隠岐に流されていた時代の海女の少女と、隠岐の図書館司書の女性。

からくさ図書館来客簿 第二集 ~冥官・小野篁と陽春の道なしたち~

生きていたという力
評価:☆☆☆☆☆
 道なしという、天道に行く資格を持つ死者を導く役目を持つ閻魔庁の役人である冥官となった賀茂社第二代斎院の時子内親王と、彼女を見守る小野篁の姿を描くシリーズ。今回は第三位の冥官である安倍晴明が登場し、時子の二つ目の冥官としての能力を開花させるように命じる。

第5話「リボンと人力車」
大学を卒業し車夫となった男性は、他の人には見えない女学生が声をかけてきて以降、膝に不安を感じるようになる。職場の先輩から、かつて同じような少女を見た人が身体を壊して会社を辞めたと聞き途方に暮れるのだった。

第6話「小猿の宝物」
会社でいじめを受け、嗅覚が聞かなくなって実家のお香屋へ戻った女性に憑りついた道なしは、織田信長の小姓であり、本能寺から生還した一人でもあった本多藍丸だった。

第7話「瑞垣」
芸妓が恨めし気に見る花卉には、その美しさを妨げる傷がついていた。自分がどこの何物かも思い出せないという道なしを優しく送るため、冥官たちは手を尽くす。

第8話「鳥めずる若君」
下賀茂神社において、かつて時子に言葉を授けた一言主神と鳥部の道なしとの会話を耳にした鳥類研究者は、鳥部から気に入られ、ある願いをされてしまうのだが…。

からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~

死後の生、現世の生
評価:☆☆☆☆☆
 北白川にある私立からくさ図書館の館長を務めるのは、まだ若い男性だ。時子と呼ばれる女子高生くらいの女性と共に、二時間300円で席を提供し、一杯の茶を饗する。未だ常連客も少ない、ひっそりとした図書館には、悩みを抱えた人々が訪れる。彼らに館長である小野篁が声をかけた時、この図書館は本当の姿を現すのだ。
 彼らの悩みの元となっているのは、道なしという、本来ならば六道のひとつ天道に行く資格を持つ死者たち。ところが現世に未練を残す彼らは、天道へ行くことが出来ず彷徨っている。そんな彼らを天道へと導くのが、閻魔大王の官吏たる冥官だ。第十八位の冥官である小野篁と、冥官見習いとなったばかりの時子は、道なしにつかれた人間たちと交流し、その悩みを本で知ることで、現世を生きる人間と、亡くなった人間を救っていく。

 連作短編4話から構成されており、様々な理由で未練を持つ亡者たちを解き放ちつつ、小野篁と時子の過去も描いていく。第2話も良いけれど、第3話などはじんわりきてしまう。

 小野篁と時子は歴史上の人物であり、小野篁は嵯峨帝の御代に、六道珍皇寺の井戸を通り冥界と行き来していたという伝説を持つ。一方、時子は仁明帝の皇女であり、内親王として賀茂社の第二代斎院となりながら、二年足らずでその任を解かれ、祖父の滋野貞主のもとで不遇の生涯を送らされ、早世した人物だという。
 冥官の上司には、弘法大師や安倍晴明もいるらしい。

夜明けを知らずに―天誅組余話

魁の魅力と対価
評価:☆☆☆☆☆
 八咫烏の子孫ともいわれる十津川郷の庄屋である野崎主計の許を、梅田雲浜とその娘の市乃が訪ねてくる。主計の年の離れた弟である野崎雅楽は、初めて見る郷の外の少女である市乃の危機を助けることになった。
 それから半年、大老である井伊直弼の安政の大獄により獄死した梅田雲浜の遺言により、十津川郷に預けられた市乃は、井伊直弼への憎悪と復讐に塗り固められていた。そんな彼女に郷の暮らしを手ほどきし、少しずつ笑顔が取り戻されてきた頃、梅田雲浜の弟子であった吉村寅太郎が、野崎主計の許を訪れる。孝明天皇の大和行幸に先立ち、前侍従の中山忠光を主将として、五条代官所を襲撃しようというのだ。

 詔勅と師の復讐という両面から、吉村の天誅組に加わる決意をした主計と、ようやく復讐が果たせることに希望を見いだした市乃に付き添い、雅楽は五条代官所を攻め落とす。しかし直後、京で八月十八日の政変が起こり、薩摩藩と会津藩に追い落とされた長州藩の後ろ盾を失い、天誅組は逆賊となってしまった。
 惰弱な中山忠光を支える吉村寅太郎の強烈な魅力に惹き付けられ、瓦解しつつも死路を歩み始める天誅組に対し、兄と市乃を連れて十津川郷へと帰りたい雅楽は、彼らと共に戦場を歩むことになる。

 史実を元に、思想的には外部にいた少年の視点から、天誅組の起こりと末路をひもといていく。そこに、身内を殺されたという個別的な恨みが寄り集まり、歴史という大河を紡いでいく構造を明らかにしていくのだ。きっかけは小さくとも、それに勢いがつけばとどめられるものではないのは、昨今のメディアを見ても分からなくはないし、過去の歴史の扇動者たちの存在からもうなずけるだろう。
 魁となるものは突端であるため、周囲全てから叩かれる。その間に同時多発的に飛び出せば、その攻撃の手は分散され、そして当たり前のことになっていく。新しいビジネスが起きるときでもこの手のことはよくあることだろう。その犠牲になった天誅組が何を思い、何を残したのか。最後に残るのは、人と人の確かなつながりだけなのかも知れない。

霧こそ闇の

時代を超えてなお変わらぬもの
評価:☆☆☆☆☆
 天文二年、西暦一五三三年。筒井順興の下に典医として仕える義伯に、ひとりの妻があった。義伯の医術と胆力は稀なものではあったが、その妻・狭霧が持つ見鬼の才は、さらに稀なものだった。普通ならば癒すことができない病であっても、それが物の怪に端を発しているものならば、狭霧はその物の怪を退けることが出来る。そして弱った身体は義伯が癒すことで、筒井順興の深い信頼を得ていた。
 しかしその平穏な生活も、順興の末子・力丸が病死したことで一変してしまう。力丸が義伯に祟り、彼は酒におぼれてしまうのだ。そして、彼らの一子・鷲王も死病に罹ってしまう。だが、狭霧には力丸の力が強すぎて祓えない。そんなとき、ひとりの行者が彼女の前に現れ、ある事実を告げる。

 戦国乱世のはじまり頃にあって、人間と人間の力を超えたものが、人間の歴史に及ぼしていった影響をひも解く物語。女は平穏を求めながら自らの持つ力が超常ゆえに男に隠そうとし、男はそれを知りながら女を自らの下に留め置き平穏に暮らそうとする。しかしそんな想いも、彼らの力を超えたところで起きる動乱と、それを起こす人間たちの思惑により、押し流されてしまう。
 寄り添う夫婦が互いを思うがゆえに離れ離れになり、そしてまたひとつになるという物語を、しっとりと歌い上げている。

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