長月渋一作品の書評/レビュー
アウトロー×レイヴン
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S.I.A. ―生徒会秘密情報部―
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中学時代の後半を引きこもりで過ごした麻波守貴は、全てのしがらみから逃れられるよう、南関東州第2位の進学校である私立春日野学院を受験した。合格発表の日、めでたく自分の受験番号を見つけたものの、すぐさま屈強な肉体を持つ生徒会所属の蒼井秀介に連れられ、生徒会長の遊氏茉絢の前に引き出される。
彼が彼女の前に連れて来られた理由は、彼が行った特殊なカンニングを糾弾し、それをネタに彼に言うことを聞かせるためだった。その目的は、南関東州第1位の進学校である私立丸州学園高等部に学生諜報員(ステージェント)として潜入し、かの高校が急躍進した理由を探ることだ。
私立丸州学園は、7年ほど前から急激に実力を伸ばした高校で、現在、学園の周囲には高い壁が張り巡らされ、これまで何度となく送り込んだ学生諜報員(ステージェント)も、寝返るか、記憶を無くして放り出されるかの二つの結末しかもたらさなかったらしい。
選択肢もなく潜入することになった麻波守貴は最底辺のクラスに滑り込み、ルームメイトの未来浩一郎に誘われて出向いたパーティーで、上位クラスの生徒たちにいじめを受けていたところを、阿木良瑞穂という少女に助けられる。
ところが翌日になると、阿木良瑞穂という少女の存在は学園から消え去り、生徒たちの記憶からもキレイさっぱり消え去っていた。阿木良瑞穂の行方を求めて学園内を調べ回る麻波守貴の前に、風紀委員長の和鳴亜子と生徒会長の有栖智明、そして理事長の桐生院寛治がそれぞれ現れ、彼らの本性を現していく。
幼い頃の経験がきっかけで、ただひとつだけ特殊能力を持っているものの、中学時代のいじめなどがきっかけで引きこもった少年が、無理矢理状況に振り回されて危険な場所に送り込まれることで、理不尽さに立ち向かう気概を持つようになる話だ。
そもそも入学前に別の学校に諜報員として送られるという設定なので、指揮者たちが事前の訓練期間くらいしか活躍の場がなく、ちょっと影が薄め。畢竟、敵の方が活躍する場面が多くなるわけだが、最後には彼らも退場することになるわけで、次巻はまた色々と作り直しになる気がしなくもない。
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