二階堂紘嗣作品の書評/レビュー

失楽ノア

下働きから学生へ
評価:☆☆☆★★
 石化病に悩む妹を救うため、王立アリエスト学園の食堂の下働き兼警備員として上京してきたノア・D・ベイカーは、先輩のターニャ・ピアーズと出会う。そして、学園内序列第九位のユーナ・メイプルベリーの着換えをのぞいてしまうのだった。また、警備の仕事中、アカリ・カキツバタともう一つの人格アリカに出会うのだった。
 そして、救護の女性イデアにそそのかされたノアは、ユーナの代わりに試合に出場することになってしまう。

俺が主人公じゃなかった頃の話をする part4

未来の分岐点
評価:☆☆☆★★
 《凶戒原則/ネメシスコア》という無自覚な魔力炉を持つ三柴直道の周囲に、一条ありす、スズラン細雪麻乃、姫宮人魚というヒロインが集まっているのは、並行世界の混線が原因だった。未来からやってきた三柴直道の娘ユエにそう聞かされた三柴直道は、ヒロインたちの言葉を嘘にしないため、混線の起点となった半年前に時間移動することを決意する。未来を分け、それぞれのヒロインが正しい三柴直道に出会うためだ。
 その決意に納得できないヒロインたちは、コスプレをして三柴直道を誘惑し、翻意させようとするのだった。

俺が主人公じゃなかった頃の話をする part3

ちょっと失敗
評価:☆☆☆★★
 全ての真相を語ると証言した、未来から来た三柴直道の娘を名乗るユエが姿を消してしまい、代わりに三柴直道には選択肢が見えるようになってしまっていた。その選択肢とは、細雪麻乃、姫宮人魚、一条ありす、スズランのいずれと日常を過ごすかということ。
 ゲームブック風の構成で、それぞれのヒロインとの日常が繰り広げられる。そしてその果てに明かされる、半年前の出来事とは…?

 一度、最後まで進むルートを読むと、それで良いかなと思えてしまう意味では、他のエピソードに意味が無くなってしまうので、失敗と言える。

俺が主人公じゃなかった頃の話をする part2

またも加わるヒロイン
評価:☆☆☆★★
 半年前の記憶がないだけで普通の高校生のはずの三柴直道は、「冥葬会/ルナリア」の魔術師である幼なじみの一条ありすからは《凶戒原則/ネメシスコア》という強大な魔力炉持つ存在と言われ、「不死者同盟/イマジナリーナンバーズ」に所属する妹のスズランからは世界が《虚無への供物》という彼の見ている夢だと言われ、同級生で雪乙女/マツロワヌモノの細雪麻乃からは《運命の赤い鎖/アカイエニシ》が結ばれていると言われ、世界の重要人物であるかのように扱われている。
 そんな四人の同居生活に、またもヒロインが加わってくる。鱗姫(プリンセス・リヴァイアサン)で悪女志願ファム・ファタールの正統後継者である姫宮人魚からは王子様の生まれ変わりと言われ、冥送会の魔術人形であるユエや妄想蒐集家ナイトメアホリックからは命を狙われるようになってしまうのだ。半年前の真実をめぐり、様々な勢力が介入してくるのだった。

偽悪の王 (3) Trash, Trick and Jet-Black Traitors

宿願の果てに
評価:☆☆☆★★
 グライムス学院聖徒会のレイン・レッドハートとリリア・マリアス・バラードを、グレートブリタニアの女王ルナマリー・スチュアート・ヴァレンタリア・フロウ・ウィノナ・ジョーンズの使者である家庭教師のギルバート・ダーリントンが訪ねてくる。二人を女王のお茶会に招待したいという。
 女王は未だ14歳の年端もいかぬ少女。レインはいずれ戦いを挑むべき相手として、リリアは実家の復権を願う相手としてその招待を受けるのだが、その場をテロリストが襲撃してくる。

 レインの機転で事なきを得たのだったが、ルナマリーが王宮を抜け出し学院まで遊びに来たことから、大事件が発生してしまう。戦挙管理委員長メル・ホワイトがルナマリーを誘拐した上、その罪がレインに着せられてしまう。
 警察に手配され、学院内では封規委員長オスカー・ベネトンと聖徒会長イヴリン・ブラッドベリがレインの身柄をめぐって対立する中、事件の真実はどこにあるのか。

偽悪の王 #2

レインを知る人々
評価:☆☆☆☆★
 グレートブリトニアの異形都市ダイロンにあるグライムス学院は、魔法と科学の集大成である技術を学ぶ学校だ。その聖徒会長であるイヴリン・ブラッドベリが、いつにも増した乱行を開始する。学院中を爆破し始めたのだ。どんな願いも叶える《聖者の歯車/ロードギア》が今すぐ必要だという。
 封規委員長オスカー・ベネトンらが必死でイヴリンを捕獲しようとするものの、全く姿を捕らえることが出来ない。書記のレイン・レッドハートは、戦挙管理委員長のメル・ホワイトに頼み、何故彼女が焦っているのかを調べてもらう。

 その結果、イヴリンの双子の妹であるアヴリルが、ウィルフレッド・エヴァン・フィッシュボーン伯爵と望まない結婚をすることが判明した。レインは、学院から出られないイヴリルに代わり、リリア・マリアス・バラードやスピカと共に、アヴリル救出のために出かけることにする。

俺が主人公じゃなかった頃の話をする

他人から見ると重要人物
評価:☆☆☆☆★
 三柴直道は半年前に事故にあい、その時の記憶が曖昧なこと以外は、平凡な高校生だ。しかし、ラブレターに呼び出されて図書室に行ったところ、変な少女に危害を加えられそうになってしまう。そこに幼馴染の一条ありすが現れる。彼女いわく、ありすは「冥葬会/ルナリア」の魔術師であり、直道の中にある《凶戒原則/ネメシスコア》という強大な魔力炉を保護するのが役目らしい。
 ところが今度は、直道にいつの間にかスズランという妹ができてしまう。彼女は「不死者同盟/イマジナリーナンバーズ」のメンバーであり、現実世界が《虚無への供物》という、直道の見ている夢の世界だと信じている少女だった。さらには、直道と《運命の赤い鎖/アカイエニシ》でつながった許嫁だという少女、細雪麻乃が現れる。彼女は、雪乙女/マツロワヌモノだった。

 一人の平凡な高校生男子が、非凡な美少女三人から、それぞれ異なる解釈で、少年が世界にとってとてつもない重要人物であると告げ、その取り合いをするお話だ。

偽悪の王 Blade, Blaze and Sweet Ballade

異なる願いの妥協点
評価:☆☆☆☆★
 グレートブリトニアの異形都市ダイロンは、科学と魔術が共存する街だ。そこにあるグライムス学院は、魔導師サー・イル・グライムスが設立した学園であり、聖徒会長を任期満了で退任すると、どんな願いでも叶えてくれる魔道具を与えられるという。
 それを求めて入学したリリア・マリアス・バラードは、学院史上二人目のクークス、実技は100点だが筆記は0点だった少女だ。学院のルールを知らず、戦挙管理委員長メル・ホワイトの許可も求めず、聖徒会長を襲撃したリリアは、聖徒会長であるイヴリン・ブラッドベリと間違えて、書記のレイン・レッドハートを襲ってしまう。彼は筆記100点実技0点の、逆バージョンのクークスだった。

 とある事情で学生寮への入寮を拒否されたリリアを見かねたレインは、彼女を準役員として聖徒会に入れ、聖徒会役員用の寮に彼女を住まわせる。しかしその結果、リリアに秘密を知られ、封規委員長オスカー・ベネトンに目をつけられる結果となるのだった。

 次巻を前提とした展開であり、タイトルの意味すら定かではない。編集部の期待がうかがえる。

あまとう! (3) 七瀬甘るりは不在につき

遠くに届ける思い
評価:☆☆☆☆☆
 軽音部に入部し、自分だけのギターを手に入れた葉山一樹は、高熱を出して修学旅行を欠席することになってしまったり、若干、締まらないながらも、七瀬甘るり、嬉野南雲、鳳仙花由亜らと充実した日々を送っていた。
 そのことを姉の葉山真綾から聞きつけた妹の葉山千早は、なぜか手作りのメイド服を着て、一樹の許にやってくる。はじめは兄に女性が近づくのを嫌がる千早だったが、甘るりの歌を聴いてからは彼女たちを信頼し、兄そっちのけでメル友となるのだった。

 このまま文化祭のライブも成功すると思われたある日、カラオケ大会の動画がネット上で評判を呼び、甘るりがサンライズ・レコードにスカウトされてしまう。戸惑う甘るりの背中を押した一樹は、残された仲間と夏合宿をしたりして、文化祭に向けて練習に励むのだった。
 甘るりと連絡が取れないまま彼女はメジャーデビューを果たし、文化祭のライブ当日がやってくる。

 どうしてはじめからこのテンションで出来ないかな〜と思ってみたりする。届かない思いを歌に乗せるとか、定番だけど外さないパターンだろう。
 南雲や由亜も手堅くフォローしつつ、甘るりもしっかり誘惑するとか、一樹のジゴロっぷりはパないです。

あまとう! (2) 試験によくでる七瀬甘るり

残念な展開
評価:☆☆☆★★
 葉山一樹は七瀬甘るりに脅されて軽音部に入部したものの、嬉野南雲や鳳仙花由亜も含めて、比較的楽しい放課後を過ごしていた。しかし、騒音問題を引き起こしたとがで、生徒会長の美鈴菫子に、処分を決定する部長会までの活動停止と、奉仕活動への従事を命じられる。
 従順に従う葉山一樹だったが、七瀬甘るりに対抗意識を示す美鈴菫子は、葉山一樹を奪い取るために、あの手この手の誘惑を仕掛けてくる。その才の手違いで、甘るりと手錠でつながれてしまった一樹は、しばしの間、甘るりと二人っきりの時間を過ごすことになるのだった。そしてそれを伝え聞いた嬉野南雲や鳳仙花由亜は、奇妙な反応を示し出す。

 もはやロックは物語の中心ではなくなった。一体これはどこを目指すというのか。単に学園ラブコメがやりたいならば、ロックなどという余分な設定に期待を持たせなければよかったのに。残念である。

あまとう! 七瀬甘るりに不合格祈願

猟奇的なロッカー
評価:☆☆☆☆★
 ある事情により転校をし、姉の葉山真綾の許からヨコスカ高校に通うことになった葉山一樹は、放課後、自販機の上から降って来たパンツに気を取られている隙に、第二視聴覚室に監禁された。
 監禁したのはクラスメイトの七瀬甘るりと、ホッケーマスクを被った嬉野南雲で、一樹にGreen Day「Basket Case」を聴かせると、軽音部に勧誘してきた。音痴だからと断る一樹だったが、パンツを手にしている写真をネタに脅迫され、とりあえず仮入部するということになった。

 ところが、同じ学校に通う従妹の鳳仙花由亜から、七瀬甘るりには近づかない方が良いと、スタンガンで女子トイレに拉致され忠告される。担任で顧問の小波美奈子に連れられ、七瀬甘るりと嬉野南雲の活動に関心する一樹ではあったが、どんな部活動にも関わる気はなかった。

 普段音楽を聴かない割になぜか音楽ものは個人的に好きなのだが、この手の作品は音楽の魅力を文章で伝えることができているか否かで、面白さが決まってしまう。音楽をツールにして日常系を描くならばそれほどでもないだろうが、音楽に動機を求めようとした途端、そうならざるを得ないのだ。
 ではその視点で見たときに、この作品は音楽の魅力を十分に伝えることができているか?さすがに、Queen「We Will Rock You」くらいは知っているけれど、それ以外の曲は知らないので、文中の表現だけからではそれぞれの特徴と違い、魅力が十分に伝わってこない気がする。すると結局、ヒロインたちの美少女っぷりや猟奇っぷりに頼ることになり、他の学園ラブコメとの差別化が図れない。

 音楽の魅力を文章化する場合には、作曲した人間の魅力で勝負すると手っ取り早く特徴が表現できたりもするので、その辺りにフォーカスするのも良いかも知れない。

ホーム
inserted by FC2 system inserted by FC2 system