西村西作品の書評/レビュー

灰燼のカーディナル・レッド (3)

超越者の襲来
評価:☆☆☆☆★
 遺跡から発見された、勢力図を一瞬にして塗り替えかねない強力な兵器である要塞型巨大兵器デウス・エクス・マテリアの発掘を護衛するため、魔人ベリアルの左手と皇帝の遺産「Dマテリア」の心臓を持つケイレヴ・レッド少佐を擁する特殊部隊デッドマンズが派遣された。
 その現場を、超越者の一人でありダイダロス連邦大元帥であるヴェルサス・グリスベーンが襲撃する。フリエ・ホワイトロッドやイーライ・ブルーの援護を受け、アルガス・ゴールドールソン将軍の推参もあって辛くも退けるものの、ケイレヴ・レッド少佐は敗退してしまった。彼らは護衛任務を達成することができるのか。

灰燼のカーディナル・レッド (2)

英雄の帰還
評価:☆☆☆☆★
 南部の中堅魔導国家リヒターは、北部の中堅軍事国家アーミラルに併合され自治領となった。リヒターで最後まで抵抗し、代表して降伏した前国王の第六王女のフリエ・ホワイトロッドは自治領の代表となり、彼女を守った青狼騎士団元将軍のイーライ・ブルーは、終身禁固刑となった。
 戦中にイーライを捕らえた、タイラー・メルケル中将率いる特殊部隊デッドマンズの隊員で、魔人ベリアルの左手と皇帝の遺産「Dマテリア」の心臓を持つケイレヴ・レッド少佐は、獄中にあるイーライを訪ねて解放する。

 その目的は、グリマルダ帝国とタイダロス連邦の連合軍により侵攻を受けているケスティウス教のベレスキス神殿を解放することだ。神殿を防衛する部隊を指揮するのは、教皇ザンビディス三世と和解交渉に訪れていたフリエ・ホワイトロッドなのである。
 思い人を助けるために戦場へと向かう決意をしたイーライ・ブルーを待ち受けるのは、かつて最強騎士だった金牛騎士団のアルガス・ゴールドールソン将軍と互角の戦いを繰り広げたワグナス・グリマルダと、彼の妹のアグリアス・グリマルダだった。

 もう一人の主人公、イーライの活躍が描かれる。

灰燼のカーディナル・レッド

憎しみを引きずる中での融和
評価:☆☆☆☆★
 ウォールトル大陸では、北部と南部で文化が大きく異なる。科学文明が発展している北部に対し、南部では魔導文明が発展しているのだ。そしてそれぞれに属する国々は、相争う構図が出来上がっていた。しかし、北部の中堅軍事国家アーミラルが、南部の中堅魔導国家リヒターを併合したことを切っ掛けに、大陸内部の勢力図は大きな変化を見せ始める。

 アーミラルの一兵士だったケイレヴ・レッドは、戦闘中の負傷で死にかけたところを、魔人ベリアルの左手を移植され一命を取り留めた。そして戦死扱いとなった彼は、タイラー・メルケル中将率いる特殊部隊デッドマンズに組み込まれ、リヒターとの戦争で多大な功績をあげた。
 そして戦争が終わり、5年が過ぎた頃。突如、デッドマンズが解体されることになる。陸軍に復帰し、少佐となったレイレヴ・レッドは、自治権を盾に独立状態だった元リヒターから派遣されてきたナナ・クロヅカ准尉やビシャス・ブルームバーグ軍曹らと共に、南北混成部隊キメラに所属することになる。

 魔法と科学が混在する世界で、それぞれの特性を持った人々が、過去のしがらみを引きずりながらも、大切な人たちを守るために協力し、信頼関係を構築していく過程を描く。戦乱の時代なので戦闘シーンがメインとなるが、そこに色々と人間関係も絡んでくる。圧倒的に新たな世界観はないが、既存の世界観をベースに遊んでいるという意味では楽しめる。
 ただ、タイトルの付け方が雑。主人公が赤髪だからカーディナル・レッドとしたのかも知れないが、果たして作中世界に、赤い服着た枢機卿が居るんですかね?

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