橋本和也作品の書評/レビュー

世界平和は一家団欒のあとに (10) リトルワールド

最後まで手を伸ばす
評価:☆☆☆☆★
 宇宙にまで物語が及んだこともあったけれど、最後に戻ってくるのは身近なところ。星弓軋人と柚島香奈子のお話です。柚島にまつわるある秘密のせいで、最強メンバー達を欠いた星弓家の人々が次々と災難に見舞われ、香奈子は遠くへ去っていこうとします。
 そこで軋人に訪れる最後のチャンス。また昔と同じ様に、自分の側から大切な人がいなくなるのを黙ってみているしかないのか?あるいは違う結果を導くことができるのか?

 スマートではないけれど、無駄に思える足掻きを繰り返してでも、二度と後悔しないように最後まで手を伸ばす軋人の姿は格好よいものだと思う。

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世界平和は一家団欒のあとに (9) 宇宙蛍

光の大きさが重要なわけじゃない
評価:☆☆☆☆☆
 活動領域が主に地球外のために、これまでほとんど活躍の様子が描かれることのなかった星弓七美が今回の主役。
 "超越"と称し、圧倒的な力と自分を殺してまでの立ち回りで、地球を護ってきた彼女だが、惑星探査先で拾った少女を保護するため、これまでの自分に課してきた線を少し飛び出してしまう。その結果、地球に侵略のピンチが訪れるのだが…星弓姉弟の選択は?

 星弓家の中では我儘ヤンチャぶりが目立つ七美だが、地球の外では地球を護るために我儘を封印して上手に立ち回るという賢明さも併せ持つ。幼い頃から圧倒的な力を持ち、弱いものを傷つけるかもしれないという恐れの中で生活してきた彼女は、"弱いものに触れない"という選択をすることで、自分と誰かを護ってきた。
 そんな彼女が初めて触れた護るべき存在なのに、それを護ることが地球に害をなすという状況を作られてしまい、自らに課した使命とのせめぎあいで苦しむ七美。そんな彼女に対し、家族である彩美と軋人は、地球と身内、どちらを優先する答えを出すのか?
 まさにこのシリーズにふさわしいお話だったと思います。

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世界平和は一家団欒のあとに (8) 恋する休日

歴史は繰り返される
評価:☆☆☆☆☆
 誰でも世界中に行ける様になったり、自宅で何でもクリック一発で手に入れられる様になったり、人間に課せられた制約はだいぶ緩くなったけれど、人間はいつか死ぬし、1日は24時間であることに変わりはない。
 前者は宗教や哲学のテーマに、後者はビジネス書のネタになったりして、ずいぶんと誰かの懐を潤わせたことだろう。まあしかし、堅苦しい話題として扱われるばかりではなく、非常に身近な話題として、いずれは誰もが考えることではある。今回は、自らの人生を省みる年齢になってしまった年長者の心配から事件が始まる。

 軋人と香奈子の関係を一気に進展させようと画策する美智乃は、二人をだましてデートに誘いだすことに成功する。しかし、その待ち合わせ場所には、美智乃の祖父である大三郎と配下の煉次がいて、なぜか大騒動に発展、軋人と香奈子は警察のお目玉をくらう事になる。
 せっかくのデートもご破算かと思いきや、大三郎が送りつけていた古いカセットテープの助けもあり、軋人が香奈子の部屋にお泊まりをする展開に。しかし、二人をトラブルが放っておくわけもなく…という感じ。

 美智乃と同種の能力者だった祖母の織花を護れなかったという後悔が煉次を突き動かすのだが、どうして年長者の心配ってあんなにウザく感じるのだろう。理性では理解できても、感情では納得できない。
 これは何故かと考えてみると、自分がそれほど賢くないからなのだろう。かつて年長者が失敗したように、同じようなステップを順次クリアしていかないと、同じ境地には到達できない気がする。それを歴史から学ばないといってしまえばそれまでだが、人様に迷惑をかけない範囲ならば、自分たちのやりたいように、好きなペースで物事を進めていきたいと思うのも確かだ。

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世界平和は一家団欒のあとに (7) ラナウェイキャット

世界の危機と秘密基地
評価:☆☆☆☆★
 当然のように今日も世界の危機が寄ってくる星弓家。今回の危機は宇宙規模のどでかいものなのだけれど、お相手をするのは七美ではなく刻人。真面目だけれど融通がきかず、パワーはあるけどスピードがない彼にはちょいと役者不足ではあるまいかというなかれ。彼の男気あふれる、でもちょっと無謀かもしれない行動には感じ入るところがある。
 すべての行動には理由がある、というわけではないかもしれないが、過去の出来事が現在の行動の動機になっているのもよくあること。過去の後悔や屈辱。そういったマイナスの感情を引き金に、後ろ向きに行動してしまうこともあるけれど、前向きに生かした方が少しはましな結果を引き寄せるのかも知れない。少なくとも、行動しなかったという後悔をすることはなくなるだろう。

 というわけで、巻が進むごとに、星弓家のカップリング比率が高まって行っております。

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世界平和は一家団欒のあとに (6) 星弓さんちの非日常

ほのぼの成分配合少なめ?
評価:☆☆☆☆★
 短編のため、すぐに事件を起こして解決せざるを得ず、長編にあるような家族間のほのぼのとしたやり取りなどは、どうしても少なくなってしまいます。このため、テンポ良く話は展開するし、色々なキャラクターが主役を張る話があってお得な気はするのですが、むしろ削られた部分にこの作品の特徴があるような気もするので、複雑な気分です。長編だと思っていたのに短編だったからギャップについていけていないだけかもしれません。
 軋人視点で展開されるお話が3本と、彩美中心で展開されるお話が1本。あとはおまけが1本。アクションシーンが中心というよりも、そこに至るまでの展開中心というのは、いつもどおりだと思います。

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