原田宇陀児作品の書評/レビュー

風に乗りて歩むもの

老探偵の活躍
評価:☆☆☆★★
 知っている人ならばタイトルを見ただけで分かることかも知れないが、クトゥルフ神話のイタカを下敷きとして、孤高の私立探偵兼タクシードライヴァと、命を狙われている少女の逃避行を描いている。(ちなみにボクは、ラヴクラフトの書いたものしか読んだことがないから分からなかった。)

 開園前の世界的テーマパークで遊ぶ、大富豪の娘たち三名は、ローラーコースターに乗ることにする。しっかりと安全装置をつけてスタートしたものの、ゴールした時に乗っていたのは二名のみ。このテーマパークのオーナーの娘であるサマンサが消えていた。
 通報を受けて駆けつけた主任警部マック・アローニは、いたずらと誘拐事件の両面から捜査を進めるが、一緒に遊びに来ていた少女の一人、グラニットが襲撃される可能性を考慮して、元相棒でタクシードライヴァのボギィに目的地までの護衛を依頼する。
 果たして襲撃を受けるグラニットとボギィの二人。襲い来るコンボイや、銃を持った襲撃者たちをかわしながら、無事に目的地まで到着することができるのか?そして、サマンサが消えた謎の答えとは?

 主人公の一人であるボギィがクトゥルフ神話を知らないので、それを知らなければ楽しめないということはない。しかし、秘密がある方がハードボイルドで恰好良い、という姿勢のもとに書かれている気がするので、不要に思える秘密がいっぱいあり、どこがメインなのか読んでいて良く分からなくなる時もある。加えて、周知のことなのかどうか分からないが、作中人物たちが前提としている事項がとある人物の素性に大きくかかわっているにも拘らず、最後まで説明されていない。
 しかし、こういう要素を作品の謎として受け入れてしまって、その雰囲気を楽しめる人には面白いと思う。

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