花花まろん作品の書評/レビュー

声優のたまごが、俺の彼女だったようです。 (2) 〜カラダだけの関係!? 浮気の中身は大事です〜

さりげない瞬間に見せる主張
評価:☆☆☆★★
 中学三年生の藤崎拓真は、ネガティブ・デス・ドリル(NDD)と名付けられた、他人を巻き込むマイナス思考の持ち主である百瀬まいと知り合いになり、声優(の卵)である彼女が、アイドル・ユニット「えんじぇる・ぷろじぇくと」の妹分ユニット「しすたー・えんじぇる」オーディションに出場する協力をし、そのために、彼氏彼女の関係を演じることになった。しかし、まいのことが本当に好きになってしまった拓真は、本当の彼氏彼女になりたいと思うのだが、まいの気持ちは見えない。
 そんなとき、姉にしてBL作家の千夏から、「カラダだけの関係〜愛と欲望の日々〜」の主役を演じるように言われてしまい戸惑う。それは、まいをフォローするために乗り込んだオーディションの後始末の結果、彼自身も声優の卵となっていたからだった。

 その相手役は、今をときめく受け役王子のクールビューティ・ミナト。クール・スイートボイスと言う声で腐女子を魅了する彼女の正体は、いつもジャージ姿のクラスメイト・有沢みなとだった。
 そして、いまの役柄がいつまでも続かないと不安を感じているミナトは、役作りのために浮気相手を演じるように拓真にお願いし、ボーイッシュな彼女の意外なかわいらしさを見たことで、それを引き受けてしまう。しかしそんな状況を、まいや、ハイパー・ギャラクシー・ハレーション(HGH)の持ち主にして人気声優の少女・雲英埼玲奈が見逃すはずもなかった!

 声優の卵という理由付けを与えたハーレム系ラブコメであり、今回のダブルヒロインがどちらもハイスペックなのに異様に自己評価が低いというと言う特徴はあれど、ラブコメ的な展開としては特に目新しいところはない。高飛車お嬢様も、今回はあまりからましてもらえず…。

 そう思って途中まで読み進めていたのだけれど、半ばあたりのワンシーンに、ずきゅーんとしてしまった。浮気相手(仮)をつとめるみなとが、声優としてのイメージとは真逆のかわいらしい側面を見せたとき、拓真がそれを褒める時に与えた、ペンギンの髪飾り。それを、学園祭の出し物である姫カフェの姫ではなく裏方を務めているときに、こっそりと後ろ髪に指しているのを拓真が目撃するシーンがそれだ。
 演技の浮気のはずなのに、まるで浮気相手が彼氏の彼女に自分の存在を主張したいような、でも彼のために隠し通したいような、そういう感情を秘めた態度を見せる。このような描写は、恋愛ものでは珍しくないかもしれないが、少年向けのラブコメではあまり使われない手法だと思う。

 「織田信奈の野望」もあるし、GA文庫的には十分ありな演出だと思う。あとは、純粋に学園ラブコメとしてどこに特徴を出すかが課題なのかな。


声優のたまごが、俺の彼女だったようです。〜ぱんつの中身は大事です!〜

経験値、上げます!
評価:☆☆☆★★
 中学三年生の藤崎拓真が通学路で出会った美少女は、学校でいつもマスクをしている根暗な少女・百瀬まいだった。クラスメイトとなって初めて知ったことではあるが、彼女は緊張して追い詰められるとネガティブのスパイラルに入り、他人を巻き込む不思議現象を起こす。その現象、ネガティブ・デス・ドリル(NDD)は暗黒の渦を作り出し、他人までネガティブ思考に追い込んでしまうのだ。しかしなぜかそれは藤崎拓真には影響しない。
 そんな彼が姉でBL作家の夏子と共に出かけたアフレコ会場にいたのは、百瀬まい。そして代役で藤崎拓真は彼女の相手役になってしまう。その縁で、彼女の経験値を上げるために彼氏役を演じることになり、そして人気声優にして同じ学校の雲英埼玲奈と、彼女が発するキラキラ光線、スーパー・ギャラクシー・ハレーション(SGH)と関わることになる。でもやっぱりこれも藤崎拓真には通用しない。

 学園ラブコメの亜種で、学生なんだけれど声優(の卵)であるため、ラブコメ現場が学園内にとどまらないのが特徴といえる。本当は美少女だけれどそれを隠していてネガティブ、ライバルの有能な少女だけど高慢ツンデレ、というのは、よくある設定かも知れない。そこに中二病的なファンタジー要素も付け加わっているのだが、今のところ有効に機能しているとは言えないだろう。しかし、ライトでテンポ良い展開は優れている。
 新人声優の代表的な?仕事として有名なエロ作品のアフレコ練習などでエロさを付加したラブコメに仕上げてあり、今後もこの路線で攻めるのだろう。だがそうだとすると、第3回GA文庫大賞期待賞の"期待"とは、女性作家が魅せるエロスという期待なのかもしれない。

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